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ファイアーエムブレム
新・暗黒竜と光の剣
メーカー:任天堂
開発:インテリジェントシステムズ、任天堂企画開発本部
機種:ニンテンドーDS
発売年月日:2008年8月7日
価格:4800円
ジャンル:シミュレーションRPG


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DS版カートリッジ

執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
6 7 6 5 5 6 7 55
プレイ時間…350〜400時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
陛下!最高ですぞ!(良ひとこ)
《全体として・操作性部分》
・シリーズの初期作で少々バランス面で荒削りだったファミコン版の初代ファイアーエムブレム(以下、FEと略)を近年のFEのシステムでリメイク。難易度のバランスが良くなり、遊びやすくなった(不満点もあるが)。

・必要な数値等の確認はしやすく、インターフェイス部分はシリーズの他作品同様、完成度が高い。従来型のボタン操作でもOKで、タッチペン使用を強要されないのは良い。タッチペン操作も悪くはないので、ニンテンドーDSでゲームを始めた人にはコレはコレで向いてるかも。

《ゲームバランス・システム部分》
・難易度が幅広く用意されており、ノーマルモードはファミコン版よりもふたまわり程易しく、ハードモードは雑魚すら固く、鬼のように難しい。シリーズ未経験者でも上級者でも楽しめる(と思う)。味方ユニットが極端に少なくなると名無しのお助けユニットが追加されるようになり、積む心配が少なくなったのは◎。

・僧侶のリフや海賊のダロス、シューターの面々など、スーパーファミコン版『紋章の謎』ではカットされたキャラクターやマップが復活したのは素直に嬉しいと思える。ボスの顔グラフィックも使い回しが無くなったのも地味ながら改善点と言えそう。スーパーファミコン版でクラスチェンジの無かった戦士に上級職が用意されたのは◎。ロードや盗賊は上級職が無いが、代わりにレベル30まで育成できるようになり、バランスが良くなった。

・ある程度自由にクラスチェンジさせられる兵種変更は仲間になるユニットの職種に偏りがある(ソシアルナイトがやたらと多いなど)本作ならではのシステムか。職種の人数の偏りを解決する策としては少々強引な気もするが、試みとしてはなかなか面白いと思う。兵種を変更することでパラメータの成長率も変化するようなので、ユニット育成の自由度も一層アップ。

・『聖戦の系譜』等の騎馬の“再移動”、『聖戦』・『トラキア776』以降の“スキル”や“救出”、『蒼炎の軌跡』で導入された“体当たり”などの要素が本作ではカットされており、作りとしては非常にベーシックでシンプル。ファイアーエムブレムの入門用として適した内容と言える。

《演出部分》
・ストーリーは王道的だが出来はいい。主人公マルスがアリティア王国を脱出するシーンが描かれる序章が追加されたのは良い。

《その他》
・任天堂のバグの修理受付の対応は丁寧で相変わらず模範的ではあった。他のメーカーも見習ってほしい。まぁそれ以前に、まずはフツーに遊んで湧くようなバグぐらい無くすことに注力していただきたいワケだが。
敵襲!そんなんじゃ死にますぞ!(イカンとこ)
《品質部分・全体の作りの部分》
チェイニーでアニメONにして「変身」するとフリーズする、本来配置されているはずの味方ユニットが消滅する等の致命的なバグがある(発生時→任天堂にて無料修理対応)。特別ヘンテコな遊び方をしてないのに出るバグだけに、これは大幅な減点材料ですな。この作品はそもそも「戦闘アニメONで遊ぶことを想定してデバッグされてない」と言うことになる。一応、元ソフト開発&チェック屋の端くれとして言わせてもらえば「あり得ない」、「チェック体制が甘過ぎ」、「何故特別な遊び方ではなく、基本的な流れを想定してチェックした人間が一人もいないのか?」。どう考えてもそこをチェックから外すのは無い。ちゃんとデバッグしていただきたい。特別な遊び方じゃなくても起こるバグだけに、これは非常に印象が悪い

・ボリューム面は若干不満アリ。スーパーファミコンの時点で既にできてたのに、まさかの分割販売。続編である『紋章の謎』を同時収録してないのがかなり残念。ストーリーは今作の範囲では完結しないので、もう千円高くてもよかったので是非とも入れていてほしかった。スーパーファミコン『紋章の謎』でできたくらいだから、DSでROMの容量が足りないってことは絶対ないと思うんだけどなぁ。外伝の分岐条件がアレ(下記)なので、そっちに注力しないで素直に第二部まで収録してほしかった。

《ゲームバランス・システム部分》
かなり不満なのは新たに追加された外伝の分岐条件が「自軍ユニットの大量ロスト」であること。新マップを楽しむためにユニットをわざと失わせる必要があるのはあんまりかと。ユニットを大切に育てるというFEシリーズの醍醐味が否定されたようでなんとも悲しくなる。開発者の「死んでもリセットするな」という考えをムリヤリ押しつけられているようで個人的には受け入れ難い。

・兵種変更は職のカテゴリ毎の人数制限が厳しいこと、成長率が偏ってしまうこと(力と魔力、守備と魔防が同時に上がりやすくはならないため、結局のところ物理系と魔法系でハッキリと分かれてしまう)などから、思ったほど自由度は高くないのが残念。結局大半のユニットは初期職のままの方が強いんで、わざわざ新システムとして導入しても存在感は今ひとつ。もうちょっと大胆にいじれるバランスなら面白かったんだけどな。あと、せっかく力と魔力のパラメータを分けているので、魔法と剣を同時に使えるマージナイトなどの兵種を追加してもよかったと思う。

・パラメータ上限値が20以上になったことでユニットの強弱の格差が一層広がってしまっている。また、ただでさえ強かったペガサス三姉妹が更に強くなる一方、最初から上級職のユニットは20まで届く能力がほぼ無いだけに戦力としてはかなりゴミ化。ここは明らかに調整が雑。

・秘密の店のアイテムの数が数量限定なのがが残念。弱いキャラを無理矢理ドーピングして使うのも楽しいものだが、それができなくなってしまったのは不満。オンライン対策なのだろうが、オンラインではドーピング分が無効になるなどの処置があれば対応できるはず。オン要素の為に従来の遊びが制限されてしまうのは、どこか本末転倒な気がする。自由に強化させて欲しかった。

《グラフィック・サウンド》
・戦闘アニメはゲームボーイアドバンス版の方が数段完成度が高かった気が…。ちょっと動きが地味過ぎる。兵種変更導入の弊害なのか、個人毎のカラー・グラフィックが一切無くなってしまったのが残念。動き自体は滑らかではあるが、それが良さに繋がっていない。GBA版三作のデフォルメの仕方の方が数段巧いやり方だったと思う。
感想ですじゃ。
 元祖ファイアーエムブレムを遊び易くリメイクしてあって、懐かしさもあり楽しめていますな。これまでのシリーズ作品にはなかった兵種変更なんかも思ったより馴染んでいて遊びやすい。過激なアレンジが多いなど気になる点もなくはないが、まぁ表面上は丁寧に作り直されている部類だろうか。

 ただ、普通に遊んでて致命的なバグが発生する作りなのはちょっと納得できない。技術が進むにつれ、開発の規模も大きくなるだろうからバグ取りも大変ではあるとは思うし、同情もできなくはないが、任天堂&インテリジェントシステムズさんともあろうものが、普通に遊んでもほぼ確実に発生するバグをスルーしてしまったのか?大人数のデバッグ専門部隊を擁しながらこの結末。余りにお粗末な検査体制としか言いようがない杜撰さではあった。

 バランス面でも少々疑問に思える変更点があり、大量に仲間を失わないと新規のキャラが加入しないなど、これまでのシリーズの醍醐味が否定される作りなのも納得出来ないし、兵種の人数の縛りが多かったり成長率の関係で殆ど活かせない兵種変更システムも大々的に新要素と銘打っていた割には微妙なシステムではあった。
 ファイアーエムブレムが売上面で低迷していた時期の作品だけに(+ディレクターを務めた開発者の退社なども相まって)、ちょっと迷走感があったなーという印象ではある。

掲載日:2008年8月11日
更新日:2023年11月28日


執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
5 7 6 6 5 6 6 50
プレイ時間…50時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
よろしいかな。
・UIがかなり良くなった。敵の行動をスキップできるのはせっかちな人にはとても良かったと思うし、個人的には全敵の行動範囲がいつでも全て分かるようになったのがとても良かった。逆にこれまでのシリーズでは何故なかったのかと思ってしまうほどである。

・SFC版『紋章の謎』で削除された初代の仕様が復活してくれた。武器やステージやクラスの復活も嬉しいが、特にリフやダロスといったファミコン版でしか顔見せしていなかったキャラの復活が嬉しい。それでいてどのクラスであってもクラスチェンジが可能になったので、クラスチェンジが不可能で不遇だったキャラが非常に救われた。

・ストーリーも基本的には同じだが、新しく追加されたプロローグや新キャラ追加の章のストーリーも元々の世界観を壊さないような出来映えになっており、良かった。

・前作の暁では救出やスキル等で複雑なプレイを必要としたが、本作ではそれらを取っ払って初代に近いシンプルな仕様に戻ってくれた。

・難易度を選べるようになったり、途中でセーブをした場所からやり直せるようになったりと初心者に対する配慮も大きくなった。従来の遊び方をしたいのなら使わなければいい話であり、初心者に対して敷居を下げたこの仕様はとても良かったと思う。
いかんようである。
・新しく追加された章をプレイするためには自軍のユニットを減らさなければならないという実に謎の仕様。普通にプレイする分には基本的に誰も殺さないはずであり、ノーリセットでプレイした時よりも大量に殺さねばならないのは本当に意味が分からない。熟練のエムブレマーだと弱キャラの武器を取り上げて敵陣にオトリとして突っ込ませるという鬼畜なプレイをする羽目になり、面白くない。何より困るのは高難易度ではレベル上げの関係もあり、その大量殺戮をしないプレイ(いわゆる歴代シリーズと同じプレイ)をした方が難しくなるというのはどうなのか。

・難易度を上げると、敵の増援が登場した瞬間に行動するようになる。封印までこの仕様だったが、難しいというよりかは予測できず理不尽なだけだったと思うのに、何故に復活させたのか合点がいかない。

・チェイニーをアニメONで変身させるとフリーズしやすいという凶悪なバグの存在。普通にプレイしていてもとても起こり易いバグであり、これを製品に残したまま出してしまったのはかなり痛い。

・敵ターンをスキップすると仲間が殺されて時世の句を読み上げているシーンもスキップされてしまい、気づかずにセーブすると仲間が死んだまま進んでしまう事がある。

・戦闘アニメがシリーズ中でもかなりつまらなく、躍動感がない動きばかりで面白くない。シューターに関してはどの武器を使っても一つしかアニメが用意されていないのも面白くない。シューターのアニメとか初代だと世界観に合わないビーム射ったり火炎放射みたいなのだったりで好きだったんだけど(笑)

・顔グラが全体的に暗く、目が死んでいるキャラが多い。表情の変化も乏しく、どうも本作はキャラのグラフィック関連の出来はあまり良くないように思う。

・マルスがアリティア脱出をするプロローグは難易度ノーマルでしかプレイできない。全ての難易度で実装しても問題なかったと思うのだが。

・なんだか敵にヤリ使いが多く、敵が堅くなり、計算方法が変わって全体的に命中率が上がったせいで蒼炎の時と同じくソードマスターが弱くなってしまった。敵にヤリ使いが多いせいで斧が使えるクラスが強くなってしまったりと、悪い意味で蒼炎と似たバランスになってしまった。

・本作から追加された兵種変更システムだが、高難易度では使いこなさねばならないので『嫌なら使うな』が通用しなくなってきている。キャライメージといったものもほぼ無視で変更できるので、場合によってはキャライメージが崩れるかもしれない。
感想でござった。
 UIが良くなり、普通に初代のリメイクとして作り上げるだけではなく色々と新しい試みをしてみようとしたのだろうが、正直言ってマイナスに働いている仕様が多いように思う。初代の雰囲気をわりと再現できているのは良いのだが、リメイクにしては初代よりも粗がかなり目立ち、さらにダメになっている要素もかなり見られる。

 致命的なバグの存在もあり、ハッキリ言うと歴代ファイアーエムブレムシリーズの中でもあまり質はよろしくない。後々の作品では兵種変更システムがさらに変化して良くなったり、本作のUIを元にさらに良くなったりと本作での反省を活かせているので、存在意義は無い訳じゃあないと思われる。

 でも初代のストーリーをやりたいのなら本作よりもSFCに収録されているやつの方が個人的には面白いかと思われる。

掲載日:2016年8月8日


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