縮緬遊戯堂 > レビューランド > ニンテンドーDS > 不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ

不思議のダンジョン
4
神の眼と悪魔のヘソ

メーカー:スパイク
開発:チュンソフト
機種:ニンテンドーDS
発売日:2010年2月25日
ジャンル:RPG(ローグライク)


執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
9 7 9 9 8 10 7 87
プレイ時間…100時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
良ひかもシレン
・追加…と申すか変更要素である『夜』の導入によってこれまでのシリーズで培ってきた常識が通用しなくなり、スリルが増した。具体的には、昼(通常時)とは違う種類のモンスターが登場し、そのモンスターは普通の武器や巻物等のダメージをほぼ無効化する特性を持つ。イベントや使い込みで覚える技を駆使しないと倒すのが困難。視界が部屋の中でも悪い、敵同士で攻撃し合い生き残った強力な敵がダンジョンを徘徊する等々。ただ難しくなるだけでなく、いいアイテムを落とすことが多い&技さえ使えれば乗り切る事も容易など、一方的に難しくしただけでないのがいい。

・変更と言えば、食料までも変えられた。今までは定番の食料:おにぎりだったけど、今回は「バナナ」。「伝統のコレまで変えてしまうのか?」…とも最初は思った要素だが、なかなか考えられている。取った時点では熟してないバナナも時間が経つと完熟して回復する満腹度も増える。時間が経ち過ぎると逆に腐ったりして、食べ時・しまい時を見極める感覚がまた新鮮だったりする。食べた後の皮も敵を滑らせるのに使えるのもシレンらしい。腐った物にしても焼かれる事でHPまで回復する焼きバナナとして食べられるなど、マイナスアイテムにも用途があるのがいい。

・武器や盾自体が戦闘を経る毎に少しずつ強まって特殊能力も増すようになり、弱い武器でも使い込む毎に味が出るようになった。これまで通り「基礎補正の高い印の多い武器ベースにコツコツ育てる」のもアリ、「最初は貧弱な武器を辛抱強く鍛えて行く」のもアリで、武器育成の選択肢が増えたのは面白い試みと言える。『2』以降の定番となった異種合成(「盾」+「草」)も顕在。

・これまでのシリーズだと、以前の作品から画像の素材を流用してる印象が強かったが、今回のグラフィックは新規に描き起こした物である模様。結構手が込んでいて、髪や服が風になびくような描写が結構キレイ。

・『3』での改悪要素(レベル継続性・過剰な演出による快適性の悪さ・キャラのリアル描写によって犠牲になったテンポの良さ等)は以前のスタイルに戻った。やはりシレンはこちらの方がいい。

・本体の残り充電量が少なくなると警告メッセージを発してくれるのが地味にありがたい。熱中していると電源ランプの色とか気付かなかったりするので。

・仲間キャラが賢くなった…と言うか、無駄に突進しなくなった。以前とかだと、壁の中のパコレプキンと睨めっこして自滅…とか言うことも多かったが、今回はだいぶ軽減されている印象。仲間毎に動きが違うのも個性が出てて面白い(女性キャラはシレンについてくるのを優先するのに対し、ガルウィンは敵を見つけると勝手に突撃していくとか)。

・「死ねばアイテムを失う」というシリーズの特徴は引き継いでいるが、装備アイテムに「タグ」を付ける事で、手に戻すことも可能になった(代わりに金品を要求される事もあるが。)のは初心者救済の意味では良いと思う。

・メインストーリーそのものは非常に短いが、エンディング後が本番。豊富に用意されたダンジョンはどれもクセモノ揃いでありなかなかの手応えがある。ストーリー自体が淡泊な代わり、サブイベントが豊富な点は評価してもいい。

・チュートリアルを兼ねた問題ダンジョンも用意されており、基礎からしっかり叩きこんでくれる。後は実際に何度も遊び何度も死んで覚えるだけ。そう、「シレン」は死んだ回数だけ自分が成長するゲーム。レベルやアイテムは残らずともそれまでに積んだ経験は自分の中に蓄積していく。初心者の方、めげずに頑張っていただきたい!

・敵図鑑やアイテムの説明で有名漫画や他のチュンソフトの作品のネタが散りばめられてるのがちょっと楽しい。ただ、ところどころやり過ぎ感もあるので↓の欄にも記す。

・BGMは『3』より“すぎやまの大将”作曲のが増えたかなア、と感じた(ただ、すぎやまBGMは夜に配置されてることが多いのが残念)。
ダメかもシレン
・色々と初心者やヘタクソさん向けの救済措置は用意されてるけど、難易度自体は低くない(って言うかむしろムズい)。ヘンに力む必要は無いけど、重量級の内容ゆえ、シリーズ未経験者が手を出すならそれなりの覚悟は必要かも。

・DSのRPGでは別に珍しい事ではないが、セーブデータが一つしかないのがチト不便。やり直すなら前のデータは消さなきゃダメなのがトホホ。SFC時代でも3つはセーブできたのに…。

・プレイヤー側にこれと言った落ち度が無くても、運次第では倒されてしまうことがある。そう言ったある意味で理不尽な部分も受け入れられないと結構キツイかも。その手の逆境、ある種の理不尽さに負けぬ、打たれ強さは求められる内容かと。これだけは間違いなく言える。キアイが肝要。

・上の項目に関して。“夜”はバランスがちょっと荒削りな印象。「明かりの巻物」・「すごいたいまつ」があるか無いかでまったく難易度が変わってくる。倍速レベルアップモンスターを動きを把握し易いため。挙げたアイテムがあると一気に緩くなりラクショー。無いと非常にキツい。バランス的に両極端なのが惜しい。

・「ストーリーよりシステム重視」のシリーズの原点に返ったのは評価できるのだが、今度は逆にアッサリし過ぎな気もした。『3』ほどコテコテに物語重視にしなくてもいいから、ストーリーモードで4〜5種類のダンジョンがあった『2』や『アスカ』くらいの量があれば良かったんだけどな。「3」の反省からこうなったのは理解できるが、ちょっと極端過ぎたかもね。

・容量をケチるためなんだろうけど、村人の顔グラフィックがみんな一緒(爺さん・婆さん・オジサン・おばさん・お兄さん・お姉さん・コドモが各1種類だけ)で色違いのみなのはちょっと手抜きくさい気も。

・個人的にはGOODな面として挙げた「敵図鑑のネタの数々」だが、明らかに悪ノリし過ぎてて世界観を崩してる面は否めず。ユーザーによっては嫌悪感を抱く恐れも。

・鰹節やごんぼうなどのアホ装備が減ったのはちょっと寂しい。あと、装備品が使い込むことで強化されるのはいいのだが、なかなかレベルアップしないので、持ちこみ不可のダンジョンなんかではシステム自体が有効に作用してない気がする。

・ゲーム内容には全然関係ないんでスコアにゃ反映させて無いンすけども、なんだってここまでイラストのタッチを“萌え・アニメ”路線に変えられたんでしょう?ムネとかシリとか必要以上に強調された女性キャラを見てると、なんかギャルゲーでもやってる気分に。なんだかなー(苦笑)。
感想やもシレン。
 「んんん…!?なんかいいかも!?」
 「シレン4、面白いかも知れん!」

 雑誌などのインタビュー記事を読む限り、スタッフの顔ぶれは出来の悪かった『DS』(≒「元祖」の劣化リメイク)&『3』(ローグライク路線の否定&ストーリーぶっ飛び)と同じ人が多いかな…って事でかなり心配しておった…と言うか、今回もヤバそうだなぁと思っておった。イメチェンで「舞台を南国にしました」なんてのも、いかにも“逃げの一手”っぽいし、イラストなんかも妙にギャルゲーチックで軽いタッチだったり。定価も携帯機のクセに6000円以上に設定されており、「随分強気な値段で来たなあ」、「果たして値段分楽しめるのかねぇ?」と非常に不安視しておった。
 だが、実際に、遊んでみると、意外や意外。なかなか遊べる内容だったり。シレンDS等から数年足らずのごく短期間でよくここまで建て直してきたな、と感心(逆に今回『4』がここまで出来るなら、何故『3』はあれほど歪んだ内容になってしまったのか?…とも言えるが。なんでこれだけの物が作れるのなら、最初からこのクオリティの物を出さなかったのか、と)。見た目は結構変わったけどしっかり「シレンらしさ」は感じられるし、最初は「どうかな?」と思った諸々の変更点も「これまでに無いスリルを味わえる」、「戦略の幅が広がる」等、プラスの方向にちゃんと作用している。野球で言えば『3』は力み過ぎて変なフォームで放ったストレートがスポーンと抜けてあらぬ方向に飛んでったモノ、今回『4』が大きく外れたと思われた変化球がグニャリと曲がって捕手のグローブにピシャリとストライクで収まった感じ…かな(←わし恒例の意味の分かりづらい例え)。

 信頼を積み上げるのには苦労するが、逆に崩れるのは一瞬。それゆえに、ここ数作のユーザーを裏切る完成度のモノ連発で「シレン」を見限ったユーザーから信頼を取り戻すには時間がかかるかもしれない。一度傷つくとなかなか上向かないのが信頼感。そう言ったユーザーから再び信頼を得る道のりは非常に険しいと言わざるを得ないが、まずは一歩一歩地に足を付けて着実に歩み出したその姿勢を評価してあげたい。

掲載日:2010年3月4日
更新日:2018年12月4日


縮緬遊戯堂 > レビューランド > ニンテンドーDS > 不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ