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俺の屍を越えてゆけ
メーカー:ソニーコンピュータエンタテイメント
開発:マーズ、アルファシステム
機種:プレイステーション
発売年月日:1999年6月17日
価格:5800円
ジャンル:RPG


広告(良かったら買ってくれぃ)
  
PS版 PSP版(リメイク)

執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
6 9 6 10 9 9 8 91
プレイ時間…200〜300時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
ゲッヘッヘ!コリャ最高だなァ!!(朱点童子風に)
・長い積み重ねをふと振り返り、その膨大な蓄積っぷりに対してある時はニヤニヤと満足してみてみたり、またある時はしんみりとしてみたり。キャラの寿命は長くても2年弱なので、同じキャラは使い続けられず使い捨てとなる。ただ、そう言った世代の蓄積の中で家系図やらキャラ間で伝承される奥義やら、歴史を紡いでる感とでも言うか、感情移入しやすい作りになっているのは不思議。そういう点で段々重みを感じてくるのがまた味とでも申すか。

・大まかな目的を提示するシナリオはあるが、基本的にはゲーム開始共にポーンと大海に放り出されて後は好き勝手にどうぞ的なスタイル。自由度が高過ぎて何をすれば良いのかサッパリ…と思いきや、意外とバランス的には何とかなるように設定してくれているようで、その辺りは実に親切。その辺りのゲームバランスのサジ加減が絶妙。

・戦闘画面での和風テイストな世界観やデザインが色々とナイス。初代PS世代の性能のポリゴンだとどうしても絵が無機質になりがちなんだが、2Dドット絵だと案外今遊んでも気にならない(いや、この辺は個々のプレイヤーさんの価値観にも依るけどな)。

・PS1時代の大作RPGと言うとどうしてもムービーゲー寄りでシーンの切り替え時や戦闘時など長ったらしいロードとかあったものだが、このゲームは(↓で挙げてるセーブ部分以外は)読み込み待ちがほぼ皆無で快適!戦闘の回数をこなす必要があるだけに、快適にサクサクと戦闘が進むのはありがたい。

・音楽の出来がGOO。どうしても同じ場所・同じ場面を往ったり来たりする必要があるので、それに伴いBGMも同じ曲を結構延々と聴いてるはずなんだけど、場面ごとの使い分けだとか個性付けだとかが巧いんだろね、これは。
アハハ…。そんなんじゃ駄目サ(黄川人クン風に)
・流れ自体は全体的に単調。大雑把に言ってしまえば、経験値とカネを稼ぐ→高い武器・防具を揃える&よりランクの高い神サマを選んで成長率の高い子供を作る→もっと強い敵と戦いまた稼ぐ…の繰り返し。まあRPGなんて基本そんなもんだが、このゲームの場合、演出とかシナリオでそう言った作業的な部分への動機づけが無い分、露骨に『作業』が浮き出てしまっている。個人的にはそんなに気にならんかったが、ここはかなり好みが分かれそうな部分ではある。

・フィールドは斜め45度から俯瞰した視点で操作も45度ずれているんで慣れるまではちょっとじれったく感じた。戦闘画面とは異なり、無骨なポリゴン表示のダンジョン・動きの粗いキャラクター等、出た時期を考慮してもあんまり綺麗とは言い難い。マップでの操作性そのものもちょっと重たくて快適とは言い難い。

・メモリーカードを1枚丸ごと全部食ってしまう重さが難点。セーブ時間も毎回長いので「めんどくさいからまだセーブしなくていいや」とか思いがちなのも罠と申すか(そんな時に限ってヘマしたりしてリセットかけたくなるので)。
ちょっとォ、感想なんですけどォ(イツ花風に)
 エート、PSPのリメイクの方じゃないです、初代PS1で出たオリジナル版の方のレビューです。リメイク版のレビューはこちらをどうぞ)。

 演出(ムービー)とかストーリーで押して来る印象の強い『ファイナルファンタジー』等のシリーズとはある意味対極に位置すると言っても良い、極端にシステム偏重型のRPG。ゲームを開始したら「後はお好きにどうぞ」と放り出されるような恰好にはなるのがやたらとワイルドだが、実際のところはバランス的にはプレイヤーが見えないところでバランスが破綻しないように配慮されて作ってくれてるらしく、とっつきづらさに反してストレスは覚えづらい方のゲームかと。個人的にはどうも頭を使うのが苦手なもので、ゲーム内であれこれと指示される受けのスタイルの方が馴染みがあるのだが、こう言った人間でもしっかり楽しめる作りになってるのはありがたい。反面、同じような作業を延々と繰り返す必要があり、どうしても中弛みしやすい部分はある。キャラでなく血を鍛えると言う意味ではすんごく壮大な育成ゲーでもあるんで、チマチマとキャラを育てるのが好きな方には向いてると思う。言うなれば「配慮が隅々まで行き届いた系の大作作業ゲー」って感じですかね。

 好き嫌いはハッキリ割れる手のゲームだと感じるけど、合う人には合う、そんなゲーム。今だとリメイクも出てるし、PS3ゲームアーカイブスで低価格でも配信されている。気になる方は是非どうぞ。こちら初代PS版は「ちょっと荒削りだけどシステムのスキを突いてラクもしやすいバージョン」、PSP版は「PS版の欠点だとか快適で無い部分を綺麗に改善したけどズルい遊び方・ゴリ押しはしづらくなったバージョン」って感じですかね。

掲載日:2012年2月6日
更新日:2019年7月30日


執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
8 9 8 10 7 9 8 87
プレイ時間…50時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
バーンとォ!!最高の出来ですね!!
・大河ドラマのような壮大な世界観が魅力だが、一家のセリフ数はあまり多くないし、全体から見ても実際の会話量だけで言えば他のRPGよりは少し少なめ。シナリオ等がゲームの重みとなるRPGとは違って、プレイを積み重ねた時間や、キャラクター達の経歴がそのままゲームの重みや感慨深さになるというか。プレイヤーが貢献してきた事が過去の産物として流される事なく、プレイヤーの積み重ねが強さや面白さに変わっていくゲームシステム全般が秀逸。

・平安時代の純和風らしさを徹底したグラフィックで、見栄えする訳ではないが味のある見た目。戦闘などの一部分だけは少し古臭いなーと感じなくもなかったが、その代わりに長ったらしくなくゲーム展開がスピーディになるという長所もあったので、まあ許容範囲かと。

・ゲーム開始時から育成計画や運用方法はプレイヤーに大きく委ねられてる事もあって、プレイヤーごとに毛色の異なる進め方が出来る。就かせる職を考えて一家の成長傾向を攻撃や守備を重視したり、どのダンジョンからどう進めようかと考えたり…。自由度の高さにはとにかく定評があり、プレイヤーがどう真似しようとも二つとして同じ一族を作れないのも魅力と言える。

・普段のバトルも基本的には王道なRPGのバトルっぽくはあるものの、体力がゼロになる事のリスクの高さや、味方と敵の大将の存在といった独自の戦略性も組み込まれていて中々面白い。

・システムを熟知してくると、『強い神様と子供を作る→ダンジョンを進めたり術や装備を集める→また強い神様と?』のルーチンワークになってくるのだけども、ただただ作業ゲーになるだけでなく、工夫する醍醐味が強い作業ゲーになるのがハマる要因になってくる。正攻法は一つだけでなく、状況に合わせてプレイヤーごとに工夫していける、ゲームの懐の深さが楽しいと感じた。

・ゲーム中で使われてる曲の雰囲気は明るい物から暗い曲調の物までかなり幅広いが、場面ごとに上手く合わせて使われてる事もあってかなり好評。同社が開発したゲーム作品、リンダキューブアゲインからの流用曲もあったりするが、これもゲームの雰囲気とよく合っていて実に良かった。

・登場する神様達のデザインや設定等は、独自性が高い見た目でありながら種類が多くて中々好評。こういう細かい部分の作り込みがしっかりしてるからこそ、キャラや神様に対する思い入れが強くなるのだろうと思った。

・評価できる…というのとは少し違うんだけども、一部の強力な術や武器の存在、システムの裏を付いた稼ぎ技など、少しプレイすれば気付き始める『これテストプレイ時に普通に気付いてたのでは?』と思えるような気付きやすい裏技に近い物も普通に残してるのは驚いた。しかも、そういう物を使いまくっても簡単にクリアは出来ない難易度も絶妙というか。
バーンと…?あっ、ちょっと問題が…
・プレイヤーが行える事が多い反面、ゲームシステムはかなり複雑なので覚える事がとても多い。拠点ではいつでも説明を見る事が出来たり、最初の時点ではそこまで熟知しなくても進められなくもないようには作られてるが、ゲームシステムを全て把握するには一苦労する。父系遺伝子と母系遺伝子の仕組みや、属性武器の優位性など、ほんの少ししか説明されてないにも関わらず重要なシステムも多いので、システムの把握が攻略に繋がるこのゲームでここは少々辛いものがある。

・能力に関係する遺伝子や技といった物は間違いなく引き継がれているものの、鍛えたキャラであっても月日を経てば絶対に容赦なく死んでいってしまうので、そういった意味での喪失感や呆気なさは多少感じる。いかに次の世代へ力を託すかといったシステムが魅力のゲームなので、その点は弁えておかないと、ただただ喪失感や作業感が気になるゲームになってしまう。

・フィールド上ではクォータービューの俯瞰画面で表示されてる事もあり、最初はハッキリ言って無茶苦茶操作し辛い。敵との接触判定も遠距離感が掴みにくいせいで訳も分からず戦闘が始まったり、最初は普通に移動するだけでも難儀する。

・本作は最初から『ダンジョンに行って取り敢えず敵と戦ってきてください!!』と言われる程度で、進め方の計画は自主的に立てるゲームであり、一族の育成の仕組みなども最初は意味が分からないので、『ゲームを始めた時の惹き込み具合』はやや悪いゲームな気がする。ゲームシステムをある程度理解すると面白くなりだすが、その段階まで辿り着けない方がプレイした場合、何が面白いのか分からず投げ出しかねないと思う。他のゲームでもそういう面はあるが、本作では特に、最初の意味不明さや惹き込みの弱さが露見している気がする。

・あまりゲームのパッケージ等に言及する事はないんだけども、本作のディスクが入ってるパッケージは実写の男の子の写真がドーンと写ってるだけで、これだけ見るとどういうゲームなのか分かり辛く、魅力を感じにくい気がする。ゲームをクリアした人からすれば感慨深く思えるパッケージになるし、まあ見た目のインパクトはあるんだけども、ゲームの内容も何も分からない人を惹かせるにはちょっと微妙かなと思ってしまった。

・記録する内容がすこぶる多いせいか、メモリーカードの容量を半分以上使う必要があるのがやや困る。セーブ時間も少し長めで、拠点まで戻らないとセーブ出来ないので小まめにセーブするといった行動がやり辛い。
バーンとォ!!感想ですよ!
 壮大な大河ドラマのような一族史を、プレイヤーが自ら手掛けて悲願を成し遂げる歴史を紡いでいくのが何よりの魅力のゲーム。RPGの中でも、ゲーム側が用意したキャラだけを使って一本道を進めていくような内容ではなく、プレイヤー自らが一族の育成を積み重ねて成長させていくのが楽しみのゲーム。そういう意味ではRPGの中でも戦闘やストーリー重視というよりも、システム重視の内容と言えそうな。

 ただ、一般的なRPGとはやや違って、ゲームの最初からバーンと魅力を感じるゲームではなく、わりと最初の方はゲームシステムの魅力を感じにくいゲームなので、ゲーム序盤の惹き込みの弱さはやや気になる。ひたすら噛み続ける事によってどんどん味わい深くなっていき、やがて重厚なゲームの重さに感慨深くなる、高級なスルメのようなゲームとでも言えそうな(例えが意味不明だけども)。ゲーム初心者の方にも手放しで勧められるゲームではないんだけども、少しでもRPGやゲームに精通している人であれば、プレイステーションのオススメRPGの一つとして是非とも勧めたいゲーム。

掲載日:2020年7月21日


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