俺の屍を越えてゆけ2
メーカー:ソニーコンピュータエンタテイメント
開発:マーズ、アルファシステム
機種:プレイステーションVITA
発売年月日:2014年7月17日
価格:6264円
ジャンル:RPG


執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
6 8 3 4 7 8 3 54
プレイ時間…70〜80時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
ってゆーか、わりと良いっぽい!(コーちん風に
・システム面は他のRPGとは結構異なる部分もあるし、色々と聞きなれないパラメータがある分、前作未経験者にとってはとっつきは悪いと思う。ただ、チュートリアルはしっかりしてるし、コーチン(ナビ役のイタチ)の指南が的確で指示通りにしていればまず初心者でも安心かと。基本的には前作「1」と同じ流れで通信で他のプレイヤーと結びつきができる以外はこれと言って新しい点、変更された点は見受けられず。前作→PSP版リメイクの時点でほぼ完成されたシステムだけに、ヘタにいじられてないのは安心した。パーティのメンバーの配分だとかどの神様と子供作るとか、町のどこに投資するだとかプレイヤーによって結構たどってく道が全く異なってくる内容だと思うんだけども、割と定石と思われる路線からムチャして外れてもそれはそれでしっかり楽しめるよう作られているのが凄い。受け止めてくれるだけの懐の深さが実にイイ。バランス面に関してはほぼ完璧な出来。

・シナリオ重視の内容ではないし、最初にムービーが流れて導入部分が終わると後は完全にポーンと大海に放り出される格好になりダンジョンにもぐる度に小話が挿入される以外はほぼテキスト的なシナリオの提示はなくなる。ただ、プレイヤーの通った道・攻略した過程そのものが物語の起伏になってるところがユニークな点だと思う。後述の夜鳥子さん(一族でない、神でもある特殊な存在)が余りにも出しゃばり過ぎで良さを打ち消してるのは否めんが、それでもシリーズの持つ良さ自体は残っているとは言えるかな上記シナリオのスコアは4だけど、夜鳥子さん要素抜きなら8点くらい付けてもいいです。

・ロード時間はゲーム通してほぼナシ(フリーズ発生の前は目に見えて数倍重くなるが…)。マップからダンジョンに入る時の切り替えで多少あるにはあるが、2〜3秒程度なのでまぁ、許容範囲内かと。繰り返しが基本の内容だけに読み込みでイライラせずに快適に遊べるのは嬉しい。初代はセーブにウン十秒とかかかったが、今回はPSP版リメイクに引き続き一瞬でセーブ可なのは良し。

・一族上限が256人で強制エンディングだった「1」と比べ、4倍の1028人まで増えているので、ゲーム進行が遅くなる「どっぷり」のままでちんたら遊んでも、恐らく上限にはかからない(実際にそのモードのまま遊んでないので保証はしかねますが)。前作はあんまりちんたら遊ぶと上限にかかる事もあったので、この点は有り難い改善点と言える。

・細かい点だが、苗字名前とも入力で4字まで入れられるようになり、古風な名前を付けやすくなったのは良し。「〜〜衛門」とか「〜〜兵衛」とか前作で付けにくかった名前が多用できるのが地味に嬉しい(おれだけか?

・前作では固定の顔が256種類用意されているだけだったが、キャラの顔がある程度遺伝するようになった。一族側の親だけでなく神様側の特徴が出る事もあるのは面白い。リアルパーツに寄りがちな一族とアニメ顔の神様が合わさって変な顔になりやすいが、それもまた味か。

・和風のグラフィックは他にない味。フレームレートはたぶん秒間30出てないと思うが、アクションとかレースとか処理速度が必要なモンじゃないからまぁよし。それでも出来自体はハードの能力考える&同時期の周りのゲームと比べるとと正直ショボいのだが、まぁ、PS1の「1」も映像の一世代古かったし俺屍にその点は求めてないので和風グラが数世代分進んだ、と捉えれば及第点か。

《追記》良いとこって言うよりはようやくイーブンに戻っただけだが、とりあえず、修正データ適応後はフリーズ多発は改善。起こる人はまだ起こるみたいだけど、筆者の環境では以降はフリーズゼロです。
ハハ…君たちさァ、そんなんじゃまるで駄目サ。(黄川人風に
・第一印象は良かったんだけど、ちょっと進めると話的にもシステム面でも過剰なまでに『夜鳥子さん』プッシュされ過ぎてて正直、不愉快レベルに鬱陶しい。過度にそちらに比重がかかり過ぎな印象。話の内容が夜鳥子さん中心になるのはまだ許容してやってもいいけどもねぇ…システム面にまで食い込み過ぎな気がするのですよ…。要所要所で明らかに異質な存在である夜鳥子をパーティに入れてないと話が進まないので、その点が本シリーズのウリの一つの自由度を下げてるのは否めんですね。シナリオにしても出てくる神様が男神の大半が夜鳥子ファンクラブ状態、女神も女神で殆どの神様が「夜鳥子夜鳥子」連呼してうるさいんでちょっとウンザリする場面多し。一族の中で異質な癖に、頻繁に転生させてパーティに常に入れて育て続けなければならず、おまけに倒した敵や素質のランキングにちゃっかり顔出し(能力が高いので序盤なんかは大半のランキングでぶっちぎりの一位になり「一族の人間?知らんよ!」状態と化す)。話的にもこれ、戦うの主人公一族である必要性すらない(ってかそもそも、普通の人間でも神様との間に子供は出来てるからねぇ、わざわざ短命の一族が戦わんでもいいじゃないとか感じてしまう)。まだ途中もいいとこだけど、現状ではシナリオは無いより酷い出来。本来主役のはずの主人公一族が完全に食われてしまい、戦う理由が「夜鳥子さんの送り迎え役&ボディガードでしかないのはどーなの?」とか思ってしまったり。とりあえず外部からシナリオ担当を招聘した(ってか『新約聖剣伝説』他もろもろでシナリオ大崩壊招いた前科のある生田美和氏ってオイ…)のは間違いだったな。生田氏はシリーズ物でもそのシリーズの持つイメージ無視でシナリオ組む傾向が強かったが、俺屍も見事に破壊してくれましたなぁ。桝田ゲーに桝田以外のシナリオ成分を求めてる人ってそんないないと思う。めんどくさがらないでシナリオも自分で監修していただきたかった。でもキャラの宣伝と販売促進とか狙ってるなら元凶は誰よりも桝田氏自身とも言えるし、「俺のヌエ子たんカワイイ」が根底にあると感じるから、外部クリエイターに関係なく、どのみちダメだったのかも…。

・「2」とはなってるけども、オンライン周りが多少加わった以外は新しい要素ってのは別にそれほどでもないかも。「作業を楽しむゲーム」っていう前作のゲーム性そのものが合わなかった人は今回も合わないとは思う。見た目とかはハードが変わった事で相応に良くなって「1」のような貧弱さは感じないが、ちんまりしてるせいか凄さを感じる内容でもない。あと相変わらず、一族の強さが上がらずに鍛える期間が出てくると経験値を稼ぐ作業に膠着しがち(じっくりモードとかだと多分さらに頻繁)なんで、その辺りに耐えられるかどうかも好き嫌いは分かれそう。

・なんの脈略もなく突然神様が出奔していなくなるのはちょっと困る。ってか一旦苦労して天に戻した神様がコロコロと居なくなるのは一体なんなの!?中位の神様がごっそり抜けるせいでちょうど手頃な交神の相手がまったくいなくなり、かなり格下の神様相手に「とほほ…」となるケース多し。どこのダンジョンに消えるのかも基本的にノーヒントでどこにいるかも分からないので攻略サイト・本でも見ないと全員見つけるのは多分むり。

・基本的には快適なのだが、フィールドが立体的になったために一部見づらい箇所がチラホラ見受けられるのも否めない。あと、ダンジョンがユーザーごとにランダムで割り振られる(自分の国に7〜8個の内の3個が割り振られる)が、前作に比べると風景だけの違いになってしまって、「ワープゾーンだらけの変則構成」とか「一本道だけどやたら敵強い」とかダンジョンごとの個性が乏しくなったなぁという印象。

・良い点でも挙げたが、初期の当主の顔がプレイヤーの写真取り込みorリアル系パーツの組み合わせなので、余程のイケメンさんか絶世の美女さんじゃない限りブサイク顔になるのがトホホ(調整はできるが…。筆者の顔はどうかって?…聞くな)。それでいて神様はアニメ顔なので、子孫はリアル顔パーツとアニメ顔パーツが混ざった変な顔になる事もある。もうちょい、ここはどっちかに寄せても良かったんじゃないかなぁ。変顔は変顔で愛着は持てるけども…。

・昔っから桝田ゲーって「アニメ」要素に偏ったグラフィックデザインの傾向だったが、今回は桝田ゲーのPCエンジン臭さってよりは、むしろ「露骨な萌え系」という、いかにも最近のソニーハード寄りに媚びてしまってるのはちょっと残念。出るソフトの大半がそんなんなVITAで出す以上、デザインで妥協するのは仕方無いのかもしれんけど、そういうソフトが溢れてるからこそ安易に媚びないでもらいたかった。ま、絵の出来自体が悪い訳じゃないんで数時間遊んでれば慣れます、一応。

・初回特典の神様DLするためにPSストア見てみたら…「健康度が低くなってもその場で回復可能」とか「レアアイテム取り易くなる」とか、公式のチートとも言えるアイテムがゾロゾロと100〜200円くらいで並んでる…。硬派な作りのゲームだけに、そういう要素に手を出して欲しくはなかった。ま、それらが必須なバランスとは(今の所)感じないし、そこまで悪質でもないので上記スコアには特に反映はさせてないですが。ただ、そういうのが売り切りのゲームでも当たり前のように用意されてしまう風潮自体にはかなり危機感を覚えますな。4000〜7000円とかフルプライスのパッケージタイトルでそういう事はすべきじゃない。個人的には意地でも手を出すつもりはないですが。DL商売で儲けが出るとメーカーが調子に乗るんで、買った皆さんは使わないようにしましょう!

・DLC関係でもう一点。一族の衣装の色の追加・変更とか、特注の武器防具の名前変更だとか、初期でランダムで勝手に決められる家紋の変更にまでカネがかかると言う事実!!いやーー、そこは別に最初から普通にできるべきであって、カネむしりとってまでやる事じゃないでしょ?ヒジョーーーーに印象悪いです。過去作で普通に出来てた事を改めて今になって課金コンテンツにする神経そのものが信じられない。あと、出身国くらい手動で選ばせろ。

・んー…早くも数えきれないほどフリーズ。戦闘前に恐怖のホワイトア〜〜ウト!!1〜2時間に1発くらい、多いと30分に2回とか被弾してるんですが…これさぁフリーズ多過ぎじゃね?同じ個所じゃないけどどれも戦闘に入る前か中ボスフィールドに移るタイミングの読み込み。明らかに読み込みが重くなって挙動がおかしくなり最後にフリーズ…ってケース多し(回数が回数だけに「あ、やべえ。なんかそろそろ凍るな…街に帰るか…」とか分かって行動に移せるようになったのがなんか悲しい)。メモリ解放周りとかちゃんと出来てんのかな、これ?巻物とか入手した際にフリーズされるとやる気も失せる。よって仕方ないから、貴重な巻物でも入手したら時間が余ってようと速攻切り上げて帰るようにしたんだけど、システム面の不具合でプレイスタイル変えられんのは釈然とせんわぁ(怒)。同じ月に戦闘を多数行った場合やマップに敵が多い箇所だと起こる気がする…。毎月セーブしてれば被害は少ないけど、ダンジョンにもぐってる途中にはセーブできないから被害がゼロとはならない。だんだん挙動が重くなってきて、「なんとか持ってくれ…!」と祈りながら遊ぶのは、心情的にはあんまりよろしくない。速いとこ改善して欲しい。とりあえず、この点が改善したら快適性に+2、総合点に5点くらいプラスしてもいいくらいなんだが。《※追記》 2ヶ月後になってようやくバグ修正パッチ来ました〜〜と思いきや、パッチ当てるとデータが飛ぶ不具合が…筆者、見事に被弾…orz。エート、不具合修正のためのデータ導入でセーブデータ消失ってなんちゅー冗談じゃ!?メーカー側で消えたデータ戻してくれるでもなく、使い勝手の悪いPCへのバックアップを頻繁にやっておくくらいしかユーザ側でできる事がないってのは、いくらなんでも酷すぎでは?一応、『フリーズ多発』は無くなったけど、ストーリー上の問題点だとかは一切修正入ってないんで、まぁ欠点はほぼそのまんまですな。
ふふふ…私はね、感想くらいじゃ死なないのですよ…。
(陰陽師・阿部晴明風に
 前作同様、ゲーム性そのものは独特でかなり尖った内容…ではあるけども、色々とお助け要素が増えたおかげで結構マイルドに遊び易くなったとは思う。「1」をそのまま踏襲して各要素を現代風にアレンジし直した感じゆえ、斬新さって意味ではそれほどでもない。ただ、パーツパーツがしっかり磨かれていて隙が少なく、シリーズ物としては期待を裏切らない出来になってると思う(…夜鳥子さん要素とフリーズ多発を除けば)。
 不満点はやたら一族外の存在である夜鳥子をやたらとシステム面でも話の内容でもゲーム側からゴリ押しされて窮屈になってる点。自由度の高さがウリなのにプレイスタイルが大きく縛られるのはちょっと納得がいかない。しかもそのキャラってデザイナー桝田氏のオリジナル小説のキャラなんだよね…。PSP版リメイク「1」に出てきた『天空のハルカ』の大勢いる女神の内の一人くらいなら別にどうでもいいんだけど、そういう余所のキャラクターをシナリオ面でもシステム面でも根幹に持って来る神経はちょっと信じられない。特典のマンガ本のインタビューに「一からキャラを作るのは面倒だからね。」とか書いてるんだけど、そういう事情をわざわざ言ってプレイヤーの神経逆撫でせんでもいいと思う。これまでの桝田氏のゲームは大半はすんごい良く出来てたと思うし、今回もシステムの根っこ部分は良いと思うけど、今回の『夜鳥子さんゴリ押し』はマイナス部分が多過ぎてちょっと容認しがたい。元から偉そうな物言いのクリエイターさんだけど、良い物つくってりゃカッコよく聞こえても、出来がアレだと痛いだけ。
 見た目はナンパでも作りは硬派な事が多かった桝田ゲーだけど、今回はちょっとそういう自分のキャラの販売促進なるゴリ押しのマイナス面の部分が非常に鼻につくのが残念。桝田ゲーって続編が出ても基本は外さない事が安心感につながってたのに、今回で信用ガタ落ちだな…。

 あと、とにかく許せんのがフリーズがやたら多発して快適に遊べない事。たまに起きるくらいでも評価ガタ落ちなのに、1〜2時間に1発くらいのあんまりな頻度ともなると擁護しがたい。これちゃんとテストしたの?起きない人はまったく起きないらしい。条件は分からんが、これだけのフリーズ頻発を見逃した or 無視したかして、発売強行した責任は重いと思うぞ>関係者みんな。現状だとあんまりにもフリーズし過ぎて巻物とかレアアイテム後に凍られて萎える事も多し。貴重なアイテム・巻物倒したら時間残っててもさっさと退散して凍る前にセーブ!!…いやーなんで不具合回避のためにこんなセコいプレイ強要されんのよ、もう…!こんな状態で見切り発売した時点で評価ガタ落ちだけど、幸い現代は修正データ配布で手軽に改善できる。夜鳥子さんゲーなのはシステムとも深く結びついてるから諦めるとしても、せめてフリーズだけは早いとこ改善して欲しいよ、これだけは。《追記》バグ修正パッチでデータ消されました。泣きっ面に蜂です、もう。不具合修正データでセーブデータ消されるって何の冗談だ!?

 総じて、掴みの部分は凄く手触りが良くて最初の2〜3時間くらいは「おおぅ、コリャ神ゲーか!?待った甲斐があったのう!!」とか張り切ってたんだが…ちょっと進めていくと、過剰な夜鳥子さん押し+やたらと多発するフリーズでガクッとテンション下がったなぁ…と言う感じ。長い間待たされた新作&一旦持ち上げられた後に地面に叩きつけられた格好になってしまっただけに、相当な『ガッカリゲー』かな…。率直に申し上げて、これのためにVita買ったくらいと言えるくらいなのに、肩透かしもいいとこだなぁ。まぁ他のソフトとかで100時間以上遊んでるのもあるし、Vitaを買った事まで損したとまでは言わんが。根っこのシステム自体の完成度は高いから『クソゲー』とは言わないけど、期待した水準からの落差って意味では結構ダメージがでかい…。どうしてこうなった…。とりあえず2014年のワーストがっかり賞は間違いなくこれで決まりだな。

 なお、発売から半年でワンコイン更にはフリープレイ化で。とりあえず、発売日ほぼ定価買いでここまで神経逆撫でされたのも久しぶりだ(品質面でもシナリオ面でも開き直るクリエイター側の姿勢においても)。ここまでコケにされたらもう次回作が出るとしても絶対新品では買わん。本作ほどの酔狂に付き合える程のリッチマンでも物好きでもいい人でもありませんのでね!

掲載日:2014年7月21日
更新日:2014年12月8日


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