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ファイアーエムブレム トラキア776
メーカー:任天堂
開発:インテリジェントシステムズ、任天堂開発第一部
機種:スーパーファミコン
発売年月日:1999年9月1日
価格:2500円(ニンテンドウパワー書き換え)
ジャンル:シミュレーションRPG


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バーチャルコンソール
3DS版  WiiU版

公式設定集

執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
8 9 9 9 6 9 8 84
プレイ時間…500〜600時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
陛下ッ!素晴らしいですぞ!
・操作性は前作同様、良好。新システムの『かつぐ』、『捕える』、さらには敵のアイテムを強奪する『盗む』等の追加によって行動の選択肢が広り、ゲーム的に深みが大きく増した……と言うか、フルに使って行かないとにっちもさっちも行かんバランスだが。

・前作で初登場した『武器の三すくみ』は前作時点ではバランスが良くなくしっかり機能していたとは言い難いが、本作ではその部分が手が加えられ、クラスの強弱や個性化って意味でバランスはだいぶ改善している。従来作品では重い・当たらない等、使い辛かった斧の武器自体だとか使い手の性能が上がりバランスは良くなった。重さを軽減する『体格』のパラメータの導入に拠る所が大きい。

・物語は前作『聖戦の系譜』の補完的位置付け。トラキア半島(トラキア王国及びレンスター王国)を舞台に進んでいくが、前作では描かれないキャラの側面も垣間見る事もあり、前作経験者がニンマリするような場面もちらほら用意されている。

・難易度は非常に高いが、運に頼らなければ進めないという場面は多くなく、しっかりシミュレーションゲームとして成り立っている点は流石の作りではある(まぁオニな事には変わらんけども)。難しい分、クリアした時の感動はひとしおではある。

・戦闘アニメは前作『戦線の系譜』同様、非常に滑らかで動きも多彩。実に凝った作り(見栄え優先でテンポが犠牲になってないのも優れた点)。動きのパターンが多く、ついついOFFにせず見てしまう魅力あり。BGMは軽快な曲調が多かった前作と一転してやたらと重厚なものが多くなっているが、重苦しい場面の多い本作には合っている。
敵襲!そんなんじゃ死にますぞ!
・本作のバランスってのは「ピッチャー視点で理不尽さを感じないギリギリ低めのストライクゾーンに向けて投げ込んだ豪速球」みたいなモンであり、兎に角意地の悪い新要素が多い。新たに追加されたシステムはひたすら陰険。突発的で前フリが一切無い敵の増援イベントや出口の無い拷問部屋への強制ワープなど、理不尽さを感じるギミックがいやに多い。後のシリーズ作品でも普通に登場する索敵マップにしても、本作の場合はホントに真っ暗で地形すら見えない。ひたすらオニである。客視点での「もうムリ」ギリギリを狙ってると思われるが、想定しとる客が「FEシリーズのヘビーな常連客」であり、それ以外の客層への配慮は正直足りてない…ってか、そもそも配慮のカケラすら見られん作りではある。

・必殺の発動率など、明らかに画面に表示される確率とは違う数字でゲームが進んでいる部分もチラホラ。戦闘では数字が全てのゲームなので、もう少し画面の数字を信用できる作りであってほしかった。確率で発動するスキル・再行動等、運絡みのシステムが多かったのも個人的には少々引っかかる。

・シナリオ面は前作『聖戦の系譜』を補完する位置付けにあるが、前作の内容が完全に頭に入ってるのが前提で説明らしい説明はほぼ存在しない。細かい点で矛盾点もそれなりにあるのも気になる(敵陣営の侵攻タイミングの違いだとか、カップリング部分の設定等だとか)。

・ゲームをクリアしても物語は終わりではない。あくまで前作の途中の範囲までであり、敵の幹部を1人倒してオシマイであるので、ゲームをクリアした時も話的にはややしっくりこない。
感想じゃい。
 ファイアーエムブレム第5作。位置付けとしては前作『聖戦の系譜』のスピンオフ作品だが、システムとしては『紋章の謎』等のオーソドックスなFE路線に回帰している。…のだが、スーファミも最末期で『コンビニでの書き換え専用』なる特殊な販売形態をしており(翌年通常カセット版も出てはいるが、そもそもN64に世代交代してかなり経っている時点で)売上度外視の作風であり、「開発者側が客に歩み寄る」とは真逆の「開発者からの挑戦状」的な超絶鬼バランスである。

 他のファイアーエムブレムのシリーズの他の作品は慣れれば何とかなりそうなバランス取りなのだが、本作品はとことんユーザを突き放す理不尽に片足突っ込んじゃってるような激辛難易度であり、手軽さとは対極の重い内容に仕上がっている。シリーズ未経験者には敷居が高過ぎて理不尽全開のバランスと思われんで生半可な覚悟での手出しは無用。ヤケド確実ですぞ。

 へっぽこエムブレマーのわしだが、なんだかんだで昔は今よりは大分ホネがあったんで、わしはなんとか総合評価『A』をゲット。喜びもつかの間、後に最高評価が『SSS』(※カートリッジ版やVC版などね)であることを知る。もうこれ以上はムリだよぅ(笑)。

 とりあえず、シリーズの生みの親である加賀昭三氏が携わった最後のFEなワケですが、システム的にもシナリオ的にも氏特有の刃モノのような鋭さが味わえる(しかも手加減ナシ)、といった点では、最後かつ最高のFE、と言えるかもしれませぬ。以降に発売されたFEは良くも悪くもマイルドな路線に変わっていってるしね(高難度もあるにはあるが、本作みたいなバランスとも結構違うんで)。

掲載日:2004年9月12日
更新日:2021年2月9日


執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
8 8 7 10 7 9 8 83
プレイ時間…700時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
ふむ…素晴らしいですぞ!
・戦略の自由度がかなり高い。『育成の自由度』で言えば最近のファイアーエムブレムシリーズの方が上だとは思うんだけど、プレイヤーが行える手段の豊富さや各ユニットの独自性が高く、複雑なアドリブ性を要求される事が多い事もあって単調な攻略が行い辛いのが特徴。FEシリーズの中でも、常に深く戦略を考える必要があるので、やり応えはかなりのもの。

・マップのクリア条件が特定の敵の殲滅か敵拠点の制圧くらいしか用意されてなかった過去作とは違い、特定の場所まで全ユニットを到達させ離脱させるマップや、一定ターンの間防衛をするマップなど、独特のクリア条件を満たす必要があるマップが登場した。他にも暗闇の中で索敵しながら進むマップ等も加わり、マップ攻略のバリエーションはさらに増している。

・前作までのスキルシステム等に加えて新しく追加された『体格』等のステータスや、『再行動確率』『追撃必殺係数』といったユニットごとに変動せず最初から定められているステータスなど、能力の種類が増えた事によってユニットごとの特徴が増している。

・後のシリーズでは近類するシステムが使われてない事が多いが、疲労度のシステムは多くのユニットを使い分ける必要があるかなり画期的なシステムだと思った。ファイアーエムブレム外伝や、Wiiの暁の女神などでも複数の部隊を編成してエース級ユニットを多数揃える必要があったりはしたが、本作の疲労度システムは育てるユニットを多数揃える必要がある事に加えて、1人のユニットを酷使し過ぎると次の章で使えなくなるという制約も備わり、違う方向で戦略的な一面も強くなったように感じる。

・ストーリー展開も他シリーズと比べると華やかさには大きく欠けるが、複数の組織関係・人間関係などが入り交じり、表舞台で繰り広げられていた聖戦とはまた違う、泥臭さの強い戦記モノらしい魅力がある。

・後にディレクターの加賀氏が手掛けたティアリングサーガでも採用されているが、広田麻由美氏によるキャラクターデザインも個人的にはかなり好評。前作の聖戦の系譜までの顔グラフィックは昔の少女漫画チックのような若干の古臭さを感じなくもなかったが、本作からのファイアーエムブレムシリーズのキャラクターデザインは現代的なゲームの雰囲気に近付いてるような気がする。

・前作に引き続き、戦闘アニメはかなり派手で物理攻撃だけでなく魔法攻撃も派手なエフェクトの物が揃っていて臨場感がある。個人的にはFEシリーズの2D戦闘アニメーションなら、本作の戦闘アニメが一番好きかも。
いささか、問題であるかと…
・とにかく難易度が高く、理不尽さも感じる初戦泣かせな仕様が多く存在する。敵のステータスの大幅な変動やユニットの突然の再行動など、運要素も結構増えている。さらにマップの内容によっては、突然の増援発生やマップ独自の罠の展開など、難しいというよりただ初見泣かせな章も多く、事前の準備が無いとゲーム全体の理不尽さに振り回されてクリア出来ず詰んでしまう可能性が高い。

・物語の舞台的に致し方ない事ではあるけども、他のFEシリーズよりも窮地に追いやられているような泥臭い展開が何度も繰り返されるのがかなり息苦しい。「やっと窮地を脱した!!」と思っても次の章ではまた大量の敵に包囲される等の展開がかなり続くので(苦笑)、展開が読めていないと精神的にもかなり疲弊する。登場するキャラクター達も本作では貴族や軍人兵士等が少なめで、全体的に華やかさに欠ける一面がある。

・UIの利便性が増してる部分もある一方で、ユニットの初期配置を変える事が出来なかったり、スキルの仕組みや戦闘時の計算式等が一部ゲーム中では見えない仕様になっていたりなど、不便さが増してる部分もある。ユニットの配置に関しては、実は特定のユニットの出撃を取り止めたり選択順によって後の章で出撃順を調整したりする事も出来なくは無いんだけど、もはや上級者限定の裏技に近く普通にプレイする上ではまず分からない。

・前作の聖戦の系譜における6章〜8章前後のストーリーの裏事情が本作の舞台となっている事もあり、前作をプレイしていないと分からない専門用語が多く本作だけでは物語が全く理解出来ない。また、聖戦の系譜の時ではプレイヤー次第だった独自のカップリングが本作では既に定められていたり、聖戦の系譜の時には無かったキャラクター設定が独自の脚色を帯びていたりなど、前作のプレイヤーからしても若干の違和感を感じる部分も多い。

・セーブデータが消えやすい。書き換え版よりもROM版の方が消えにくいと言われてるものの、ROM版でもそこそこ消えやすい気がする。
ダグダに愛されながら感想。
 自分が本作をプレイした時間はファイアーエムブレムシリーズの中でもかなり長い方で、やり込み度合いも高く自分の中ではかなり楽しんだゲームの部類に入る。…んだけども、とてもではないが他のゲーマーの方々には気軽に薦められるゲームではない。面白いゲームには幾つか種類があると思うんだけども、本作は『システムやゲームの展開を熟知した上でやり込みプレイをすると面白いゲーム』と言えそうな気がする。

 本作は何をどう間違ってもファイアーエムブレムシリーズに慣れていないゲーマーには薦めてはいけない。初プレイからどうしても高難易度のFEシリーズがやりたい人がいたとしても、最初に本作をプレイするのは避けて他のシリーズの高難易度モードをプレイした方が良いですよと言いたいほど。前作の聖戦の系譜をクリアした事があり、FEシリーズのノウハウを熟知した上で高難易度のFEに触れてみたいという覚悟がある人のみが門を叩く事が出来るゲームであり、本作はとにかくハードルの高いゲームと言える。

 本作では敵が理不尽に強くシステムの不条理さに泣かされる事が多い分だけ、こちらも対抗手段は多く用意されているという、お互いに汚い手段を酷使する事を前提としたゲームバランスは最大の魅力にも最大の問題点にもなり得る。杖使いのような戦闘を行わないユニットでも戦略としては他シリーズよりも重要な立ち位置に居たり、クリアするまでに育てるべきユニットの数が他のシリーズと比べても多めに育てる必要があったりなど、戦略の奥深さも異色過ぎると言えるほど奥深い点は個人的にはとても魅力に感じた。

 ちなみに、自分は実機にて総合評価SSSをエリートモード使用&不使用で合計2回達成!!!自軍の資産価値やユニットの成長度合いも考慮して総合評価が出される他のFEシリーズとは違い、本作では最終的な仲間の数とクリアまでのターン数しか考慮されないので、何でもアリなストイックなやり込みプレイが出来るのも本作ならではの利点かと。他のFEシリーズよりもプレイヤーならではの試行錯誤のしがいがある内容なので、ハマる人はかなりハマる可能性も秘めている。

 今からプレイする場合、スーファミの実機で遊ぶのではなく3DS&Wii UのVCで遊ぶ方がオススメ。難易度の高さがキツくなったらいつでもセーブ&ロードで誤魔化す事が出来る上、その機能を使わないとしても実機ではセーブデータが消えやすい難点があるのでVCの方が間違いなく安定すると思う。

掲載日:2021年2月9日


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