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ゼルダの伝説 スカイウォードソード
メーカー:任天堂
開発:任天堂情報開発本部
機種:Wii(Wiiモーションプラス専用)
発売年月日:2011年11月23日
価格:6800円
ジャンル:アクションRPG


執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
9 10 7 10 7 9 9 86
プレイ時間…40〜50時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
良き哉。
・これまでの3Dゼルダは良くも悪くも重厚な作りで、ユーザーに求められるスキルのハードルが高くて辛くなる場面が少なくなかったが、今回のゼルダは重厚さはありつつも、“嫌になるような重さ”、“くどさ”が無い。この部分が改善されただけで、自分としては相当ありがたく感じる。

・従来のボタン操作からWiiモーションに拠る動きの操作への比重が高まったが、無理矢理感はなく、非常に合理的に作られたシステムなのだと納得できる快適な操作回りの出来には脱帽。似たような操作系統のゲームが無いので最初のうちは多少面食らう部分もゼロではないが、慣れるに従い良さが滲み出てくる。

・ボスのような目玉となる敵だけでなく、雑魚の敵まで手を抜かずに作られていることを感じられる戦闘の奥深さ。新しいアイテムを得る度に「どんな反応をするだろう?」と試してしまいたくなる作り。

・圧倒的に美しいサウンドとグラフィック。オーケストラ使用の重厚なサウンドがなんとも豪華。不覚にもファイル選択画面の音楽でちょっとホロリと来た(苦笑)。グラフィックに関して言えば、解像度だとかポリゴン数だとかは当然Xbox360やPS3などの高性能機にはかなうレベルではない。ただ、表現力だとか、芸術的なセンスとでも言うか、そう言ったフォトリアル・デジタルではない、有機的な美しさが本作にはある。好みは多少分かれそうな表現だけれども、間違いなくレベル自体は高い。で、個人的には好み。水彩画チックな柔らかい表現・彩度が高くて華やかな画面が良い意味でファンタジー色が強くて絵画的。

・濃いです。濃過ぎです。登場人物が。アク強過ぎです。んむ、さすがゼルダ。変な人ばっかり沢山いるのがステキ(褒め言葉ね)。ナビ役のフェイの事務的な冷たさとズレてるところもステキ(同)。現状分析とかのセリフが微妙に笑える。ただ、フェイに関しては人によっては狙い過ぎであざとく感じるかも…。

・ゲーム内容には別に関係ないが、オマケにオーケストラCDが付いてくるってのも太っ腹で良し。
ダメ也。
・難易度が高いってワケじゃないのに、超絶にプレイヤーへの負担が『重い』。スタッフの仰る『濃い作り』は言ってみれば、フィールドもひっくるめて全てが『常にダンジョン』みたいな作りである事を指しているように思う。ただの道中も敵の密度が濃いのは確かなのだが、常に緊張を強いられる作りで正直、疲れる。雑魚でもボタン連打で倒せないから逆に面倒になるし、無視して走り去るとかできないケースもあるし。これまでのゼルダがダンジョンでは謎解きに、ボス戦で戦闘に、道中では気楽に走り回りつつ随所に戦闘を織り交ぜ…みたいな作りであったのに対し、今回はひたすらダンジョン(しかも敵多目)みたいな感じなので一本調子に感じてしまう他、メリハリが効いてなくて逆にダレる部分もあるように思う。正直、個人的には内容的に重過ぎて遊ぶ事自体に疲れを覚えるような羽目に…。

・一部、ストレスの溜まるミニゲーム要素が攻略上必須となっており、かなり気持ちが萎えた(実際、結構な期間プレイ中断したんで)。ストレスとなる部分は注意深く取り払ってるのに、こういう詰めの甘さと言うかね…、煮え切らなさが勿体なく感じてしまう。

・ヒントの多さやイベントの豊富さで幾らか目くらましにはなってはいるが、やっぱりライト級のお手軽内容とは当然言い難く、「スイスイ進めなきゃヤダ〜!!」…って方には今回も合わん内容だとは思う。ただ、これまでのゼルダとは“重さの質”が異なるので、「興味はあるけど今までのゼルダはちょっと荷が重くて…」とお嘆きだった方でも案外合うかもしれんし、逆に今までのゼルダは好きでも今回は駄目って人がいそうな重さの質でもある。

・Wiiモーションプラスによる剣振り必須の操作だが、意図する動作と別の動作になったりして誤認が多く(特に「突き」や「横斬り」・「斜め斬り」の誤認、「バクダン転がし」の動作などなど)、ストレスが溜まる。これまでのシリーズ以上に『特定の攻撃でしかダメージが通らない』事が多いため、ちょっとのズレで弾かれたり隙を与えてダメージ食ったりする。自分の場合、手が震える持病があるんでWiiのゲームの中には相性が良くないゲームもあったが、細かい操作がキモの当作品も結構該当してんのかなーとか思ってみたり。システム面に“遊び”が少なく、攻略の自由度もこれまでのゼルダより狭まった印象がある。

・メニューでのアイテム選択だとか、今までの操作で済むところまで必要以上にリモコン操作を強要してきて正直めんどくさい。新しい操作の提案もよろしいが、できれば過去の操作から選択できるとかカスタマイズできるとか配慮は必要だったと思う。

・「Wii Sports Resort」なんかでもあった、リモコンの再設定の儀式(ゼロ点がずれたから再設定するために平らな場所に置け、と言われるアレ)が面倒くさく感じた。Wiiスポはプレイが細切れになっているためそれほど気にならないが、ゼルダは基本、遊び始めたら数時間ずっと…ってスタイルになりがちなんで、途中でそういう儀式が挟まるとちょっと興醒めしてしまう。ジャイロの特性とかハード側の問題なんだろうけど、ソフト面でどうにかできなかったのかな…?

・装備アイテムが壊れるのはめんどくさくて困る。今までその要素で不便を感じさせるところは無かったというのに、今になっていきなり変なところでリアリティを追及されても…。勘弁してもらいたかった。

・風のタクトなんかでも感じたが、触りの部分は抜群の出来で「過去最高のゼルダ到来か!?」とか思ってしまったのだが、中盤頃あたりから継ぎ接ぎ感とでも言うか「まだ時間足りてないのかな…」的な粗っぽい部分が露呈してガクッと肩透かしを食う羽目になってしまうと言う竜頭蛇尾なところが今回もあったように思う。最初のダンジョンとかギラヒム戦あたりなんかは「抜群にいい!」と感じたんだが、徐々にワンパターンな部分が見えてきて、途端に醒めてしまうという。う〜ん、五年の製作期間でもまだ足りないすか?
感想なりけり。
 『時のオカリナ』以降の3Dゼルダは良くも悪くも『時のオカリナ』に振り回されていたイメージがあるが、今回の『スカイウォードソード』は3Dゼルダとして初めて、そしてようやく呪縛を打ち破った感がある。個人的にはこれまでの3Dゼルダは、凄いゲームだけどちょっと荷が重い内容だと感じる場面が多かった。
 一方で、出だしの触りは最高の感触なのに、これまでの過去のゼルダでもしばしば見られた「あれだけ製作期間あってまだ足りないと?」要素がポツポツ出てきてガッカリも。操作面がガラッと変わってバランス的にも一本道で自由度が低く、全体的には丁寧にストレスを取り払ってるのに、部分部分で「アレレ?なんで?」と思っちゃうような強烈なストレスポイントがあって、長期間プレイ中断を挟み、クリア後も複数回プレイしたい気にならないゼルダでもあった。また、Wiiモーションプラス必須で、要所で直感操作にこだわったのはいいけど、直感的だから簡単かっていうとそうでもなく、むしろ複雑さ・煩雑さに繋がっている部分が多く、改善の余地は多いと思う。

 どうも竜頭蛇尾な作りから抜け出せてないのが残念でもあり。毎回5年以上も製作期間を用意できるはずもなかろうから、上から目線でえらそーに言わせていただければ、「限られた期間内で超一流の物にまとめていく」、そして「触りの完成度の高さをラストまで継続しつつ一本の作品を作りあげる」ってのが、製作陣の今後の課題になるんじゃないのかなぁ。
 とりあえず、2014年のE3で判明した次回作は本作の自由度の低さの反動からか「シリーズ初のオープンワールド」である事を強調していたが、規模が格段に大きくなる分、広げた風呂敷の分だけしっかりと一本のゲームとして形作る事が果たしてできるのか、その点は不安だったり。

掲載日:2011年11月28日
更新日:2014年7月7日


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