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Nintendo Labo Toy-Con 04 VR Kit
メーカー:任天堂
機種:ニンテンドースイッチ
発売年月日:2019年4月12日
価格:7980円
ジャンル:その他


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フル版 ちょっと版

執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム 総合評価
8 6 7 9 7 7 75
プレイ時間…15時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
おおっ!良い感じじゃな!
《ゲーム全体について》
・マシンスペックや細かな設定変更、周辺機器の用意など、PCでVRを楽しもうとすると本来はかなり敷居が高いのだが、その点では本作はお手軽VRという宣伝文句のとおり、Switchを前もって所持していれば本作を買うだけでVRを楽しむ事が出来る。この安価さや手軽さは本作の大きな魅力の一つと言えそう。

・立体視の見え方やジャイロセンサーの反応速度は中々良い。画面が綺麗に見えるかの度合いで言えばさすがに一般的なVR機器の方が上だと感じたが、値段等を考えれば十分綺麗な方だと思う。

・頭にToy-conのセットを固定する事が基本的には不可能だが、こうする事によってプレイ中に気持ち悪くなっても素早く外す事が出来たり、他人と手早く画面を共有出来るのは利点に繋がっている。普通にプレイしていても定期的に休憩を促すメッセージが流れてくるので、VRに不慣れな人への配慮も考えられている事は一応記しておく(※発売前は頭部に固定出来ない事に関して非難してる人も多かったが、固定出来ない事なりの利点もあるよ、という意味ネ)。

・段ボールを組み立てる事によって作れるToy-conも、見た目やギミックが中々富んでいて面白い。ズームを絞る時に『キリキリキリ…』と音が鳴るのを再現出来るカメラ、足で踏む事により大きなうちわが動いて顔に強い風を感じる事が出来るジャンプ、段ボール内で実際に弾を込めて輪ゴムの力によって段ボール弾が発射される事により、撃った時の反動を大きく感じられるバズーカなど、見た目だけではない面白味が大いに感じられる物が勢揃い。

・本作でのチュートリアルに価する段ボールを組み立てる手順も、かなり分かりやすくテンポよく教えてくれる。ゲーム中で何度も見直したり、様々な角度から見る事が出来るので、作り方がいつまで経っても解らないという事態はまず起こらないと思う。

・何気に嬉しいのが『わかる』に収録されている研究所。理系工学などが好きな人にとっては目に鱗な話を聞かせてくれるコーナーで、本作のVRがどうして動くのかの仕組みの解説や、果てはNintendo Switchに搭載されている機能の仕組み等まで分かりやすく説明してくれる。

・おためしVR映像が用意されており、ちょっとしたVRのショートムービーが収録されている。VRとは一体なんぞや?という疑問を一先ず体感してもらうにはうってつけのモードで、未体験の人にも、なんとなくでも楽しんでもらえる気軽さがグッド。

《カメラToy-conについて》
・けだまる君というどこかキモ可愛い生物の生態を撮影するモードと、海にダイビングして魚の写真を撮る、大きく分けて二種類のモードが用意されている。生き物を狙って写真を撮るという点では、64の『ポケモンスナップ』辺りがゲームの仕様としては近いか。360度全てを見回す事が出来るVRのシステムと、カメラで全体を見回すという二つの動きがよく噛み合っていて臨場感をとても感じられた。

《ゾウToy-conについて》
・立体的に絵が描けるお絵描きモードと、立体的なパズルゲームの二種類が用意されている。3Dの空間に立体的に絵を作るのはモデリング製作に近い面白さがあり、発想は中々悪くなかったと思う。

《トリToy-conについて》
・バッサバッサと鳥が羽ばたく感覚を真似た作りのToy-con。鳥のように広大な島を飛び回り、空から島を眺めるのは本当に空を飛んでいるかのような爽快感が感じられた。

《風Toy-conについて》
・足で踏む事によりToy-conに付いている大きなウチワを動かす事ができ、ゲームをプレイしながら実際に大きな風を感じられる。音や手に持った感覚だけでなく、ゲームと連動して本物の風をも感じる事により、体感の面白さが飛躍的に上がるのがとても良かった。

《バズーカToy-conについて》
・例えるなら、ゲームセンター等にあるガンシューティングゲームが近いと言えるだろうか。360度全ての方向から登場する敵を相手に、バズーカ砲を用いて敵を殲滅していくのがかなり独特。敵のロックオンや、バイザーを下げる事によって時間を止めたりなど、他のゲームよりも特殊な行動の数が多いのもバズーカの特長。一番ゲームらしい面白さを感じられるのはバズーカであると言えそう。

《Toy-conガレージ、VRひろばについて》
・Toy-conガレージでは、プレイヤー自らがゲームをプログラム及びデザインして、オリジナルのゲームを製作していく事が出来る。ある程度の決まり事に沿ったプログラミングしか出来ないものの、ミニゲームを作る分にはとても十分。プログラミングの手法も視覚的に分かりやすく作りやすいように工夫されていて、プログラミングの知識や経験が全く無くても、ゲーム中で解説してくれるのは有り難い。ある程度のセンスこそ必要だが、実際のプログラミングよりもそこまで時間をかける事なくVR空間のミニゲームを作れるのは他に類を見ない独自案。

・任天堂スタッフがVRガレージを用いて作ったミニゲームが『VRひろば』に多数用意されている。前述のToy-conガレージも最初はどういった物が作れるか想像がつかないが、VRひろばに製作例が多数用意されている事もあり、VRひろばから着想を得ることも出来るのは助かる。
これじゃあマズいよ~!!
《ゲーム全体、Toy-con全体について》
・Toy-conを作る手間と時間がかかるのが何よりの特徴でもあり、欠点でもある。ゲームを買った直後ではほぼ何も楽しむ事は出来ず、まずは工作へ徹することがゲームからは求められる。肝心のVRゴーグルセットは最初に作られるのだが、そこからさらに他のToy-conを遊ぶためには、また工作で作る手間が必要となる。この『物を作る手間』が魅力のゲームであるので、ここを難点として捉えてしまうと、魅力が激減してしまう事はほぼ間違いないと思う。自分もそこまで器用とは言えないが、普通にサクサク進めていっても全てのToy-conを作るのに約7時間くらいはかかったので、誰が作ったとしても時間がある程度かかるのは覚悟した方が良いと思う。

・プラモデル等を作る事に慣れている子供等なら意欲的に作れるとは思うが、単純にオモチャやゲームを求めているだけの子供だと魅力は感じにくいはず。ダンボールだけの時点ではデザインも茶色っぽく、あまり見映えしないのもあるだろう。単純な子供向けのオモチャとして考えると見た目はあまり華やかとは言い切れない。

・ダンボールを原材料として作られているという事もあり、耐久性はやや低い。ぶつけたりすれば勿論凹むし、水で濡らせばふやけてしまう。分厚さもそこそこあり、丈夫さがある反面、段ボールを折り畳むのにも力が結構必要で、力の無い子供だと途中で疲れやすいはず。

・どのToy-conも丈夫な作りではあったが、唯一『シュノーケル』だけは異常に作りが貧相。組み立てる為のパーツが少なく、テープ等で補強しないととにかく崩れやすくて使いにくい。

・組み立ての説明に関してはほぼ問題は無いが、一つだけ言えば…ページめくりのオート機能があれば二重丸だった。組み立てをする時は段ボール部品を両手で持っている事がほとんどであり、ページめくりにコントローラーのボタンを押したりするのが少々不便になるので。 

・プレイを長時間続けると、かなり肩や腕に負担がかかってくる。Switch本体とジョイコンが二つ、さらに段ボールによって組み立てたトイコンが全て合わさると1キロ近くも重さがあり、VRの性質上常にこれらを持ち上げ続けなければならないので、とにかく腕に負担が来る。ガッチリ体型の巨漢である自分でもかなり腕に負担がかかって長時間のプレイがキツかったので、子供がプレイするともなればさらに負担はキツいはず。

・ゲームのモードを変更する際に、他のToy-conへジョイコンを入れ直すのに一手間かかるのがやはり面倒臭い。さすがに共有するのは不可能だし、複数作ればジョイコンを流用する必要も当たり前だが出てくるので、仕方無く発生した問題ではあるが…。

・VRゴーグルの裏面にホコリや塵が付きやすいのだが、綺麗にするために毎回解体して取り出す手間がかかるのが面倒。一般的なVRヘッドセットだと目前に液晶があるだけなので、汚れても目の前の液晶部分を拭けば簡単に綺麗に出来るのだが、本作はSwitchに表示された液晶をレンズを通して見るという段階を経て作られている上に、段ボール等から自然と出てくる塵が引っ付きやすいので、この点に関しては安価な作りが逆に祟っている。

・全てのToy-conを組み立てると、とにかく…デカい。本当に大きく、一般的にスーパーマーケットで使われるようなカゴを二つ用意して、その中にしっかり詰め込んでやっと全て収まるくらいデカい。合計30枚近くにも及ぶ大きめの段ボール板を組み立てるので当たり前ではあるが、とにかく半端じゃなく場所を取られるのでプレイしていない時はかなり邪魔。置き場所に一苦労するのは間違いない。

《カメラToy-conについて》
・カメラ撮影による特別なシーンや生き物の画像収集が目的のゲームなので、プレイを進めるうちにやや作業感が強くなってくる。『○○と○○を同時に撮れ!!』系のお題は特に顕著。

《ゾウToy-conについて》
・お絵描きに、アンドゥ機能が存在しないのがあまりにも辛い。立体的に絵を描くという都合上、平面に絵を描くよりも手ブレが起こりやすく描き間違いも多発してしまう。消しゴム機能は存在するが、その消しゴム操作も手が少しでも震えると狙った場所から逸れてあらぬ方向へ消してしまう事も…(苦笑)。ゾウToy-conは精密な操作がやりにくい形なのに、お絵描きもパズルも二つとも精密さを求められるようなゲーム内容だったのが辛かった。

《トリToy-conについて》
・最初は広大な島を翔べて爽快感も感じられるが、実際のゲーム内容は島に溢れる食べ物をひたすら集め続けるだけの作業ゲーの印象。島全体の見た目の変化があまり無く、飽きが来るのも早い。

《風Toy-conについて》
・足で何度も踏むという関係上、いつ壊れてしまわないかヒヤヒヤする。他のToy-con以上に丈夫に作られているものの、体重が一番かかるToy-conでもあるので注意深く使わなければならない。あと、他のToy-conよりもコレが一番デカく、折り畳む事も可能だが片付け場所には風Toy-conが一番困る。

《バズーカToy-conについて》
・収録されている二種類のゲーム共にToy-conで狙いを定めるのが持ち味となっているが、狙いを定めた所より弾がやや下降する事が多く、照準も解りにくいので狙いが定め辛い。VRの奥行きと遠距離を狙う、という二つの要素を噛み合わせたのは中々面白い試みだったとは思うのだが。

《得点には影響してないが、残念だった点》
・ゲームの問題というよりはVR全体に言える問題でもあるが、とにかく目と頭が疲れやすい。これはVRというものが脳の空間把握能力をフルに機能させる必要があるものだからだそうで(※詳しくは細かく解説してるサイトや書籍があるから調べてネ!)、慣れない内はそこまで長時間でなくても数十分でかなり疲れてしまう。途中で休むように何度も勧告してくれるなど、配慮もしっかり用意されているが、長時間プレイするのにはやはり向かない。

・Toy-conガレージで作ったゲームを、他人とデータ上で共有する事が出来ないのがかなり惜しまれる。ゲームを『つくる』楽しみも売りとしてる本作だが、作る楽しみは誰かにプレイしてもらってこそ楽しめるという事でもあり、せっかく時間とアイデアを込めてミニゲームを作っても、データ上で他人と共有が出来ないのはあまりにも勿体無い。DSの『メイドイン俺』等では作ったゲームをインターネット上で共有する機能があって、その時は他の人に作ったゲームをプレイしてもらえる嬉しさもひとしおだっただけに、本作でも何らかの形で作ったゲームをデータを通じて他者と共有出来たら、本作の評価も一回り以上上がったと思うのだが…。現時点ではゲームを作った本体を使った場合でしかプレイは出来ない。
それじゃあ、感想を見ましょう?
 任天堂もVRへ進出か!?と世間では騒ぎ立てられ、それに自分もついつい乗っかって買ってしまった本作。3D映像という点では任天堂が過去に出した『バーチャルボーイ』や『3DS』等が挙げられるが、本作がVRたらしめる理由はそれだけではない。360度全ての空間を見回し、プレイヤーの細かな動きでさえも感知してゲームへと連動させる、というのが前二者と違う所だろうか。Toy-conによるギミックの追加によって、世間一般のVRゲームとはまた違う方向性で、ゲーム中の画面だけでは収まらない動きによる独自性も増すように作られている。

 実際に段ボールを組み立てて物を作る面白さや、ゲームと体の動きが連動する事によってゲームの空間をさらに楽しめるVRとしての魅力はしっかりと感じ取れた。ただ、両者共に人を選ぶ所が大きく、工作が好きでなかったり、VRが体質的に合わない人であったりすれば、どちらもプラス点になるはずがマイナス点に変化してしまうかもしれない。
 実際のゲーム内容に関してはやや作業感が強いゲームが多かったり、やけに精密な操作を求められるゲームが多かったりと、最初のVRのインパクトが凄いだけで実際のゲームとしての面白さはあまり続かない物が多かったのは残念。普通のゲームモードに関してのみ言及すれば、ハッキリ言って本作は凡作止まりだと言っていい。VRの見た目のインパクトにゲーム内容が完全に負けてしまっている。

 本作では大まかに『あそぶ』『つくる』『わかる』の三種類の項目が用意されているのだが、『わかる』や『つくる』では工学魂を揺さぶられるような物が勢揃いで、プログラミングや工学系の物作りが楽しい子供や大人ならまず楽しめると思う。

 『お手軽VR』の宣伝文句の通り、確かにややこしいプログラミングやVRの下準備等を考えればお手軽な方であると言えるが、それでも工学に対して興味がしっかりと持っている人でなければ、本作を遊び尽くすのは難しいはず。単純にSwitchのVR機能のみ少し体験したい、という程度にしか考えてない人なら、もう一つ安価に発売されている『ちょびっと版』を買うだけでも全然構わないと思いますぞ…。フルセットで買うと値段もそこそこかかるし、何より置き場所には本当に困る…(苦笑)


 ここから先は、本作についてふと思い付いた自分の悪知恵。本作の『ちょびっと版』は買った後から他のToy-conを追加購入する事も可能なのだが、二つあるうちの一つは『トリToy-con』と『風Toy-con』のセット内容。ところが、この二つはどちらもARセンサーを使わないという特長があり、ジャイロセンサーのみの判定でほぼゲームが進められる。なので、実はこの二つはToy-conを組み立てなくても、ジョイコンだけを持って振ったり、動きを定めただけでもゲームを楽しめる。故に、実はこのセットを買わなくても、この両方のゲームは少しズルをすれば『ちょびっと版』だけを買っても普通に遊べる事が出来たり…(苦笑)。

掲載日:2019年4月23日


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