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悪代官
メーカー:悪代官
開発:グローバル・A・エンタテインメント
機種:プレイステーション2
発売年月日:2002年8月8日
価格:5980円
ジャンル:シミュレーション


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PS2通常版

執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
7 8 6 9 7 7 8 80
プレイ時間…40時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
山吹色のお菓子はいいのう~!(良いところ)
・このゲームの主人公である悪代官こと腹黒主水之介助兵衛、そして悪徳商人の大黒屋金次は、昔から時代劇モノで数多く登場するいわゆる『悪役』。各話ごとに正義の味方が悪である主人公達を成敗しに来るのを返り討ちにするというゲームストーリーで、バカゲーらしく破茶滅茶な展開が続く。本作独自のゲームシステムやネタはかなり笑える可笑しいものばかりで、独自の着眼点から生まれたゲームだと感じた。

・本作は章を開始するとまず最初に悪代官と役者さんが演じた実写ムービーが流れるが、これがかなり面白い。最初は時代劇にありがちな悪代官と悪徳商人の悪巧みが少しヘンテコな形で繰り広げられるが、段々と悪代官が悪徳商人や正義の味方達に振り回され、嫌嫌ながら戦う羽目になるストーリーが笑える。昭和の時代劇モノのような外連味を効かせた言い回しやコミカルな演技が光り、実写映像パートに関してはかなりの高評価。

・登場する正義の味方はまず最初は柳生十兵衛から始まり、大岡越前、遠山の金さんや長谷川平蔵、新選組や赤穂浪士、果ては水戸黄門といった錚々たる面子が悪代官を成敗する『正義の味方』として登場する。これらの有名な正義の味方達が返り討ちに遭う時代劇モノなどまず存在しないので、悪として有名な正義の味方達を返り討ちにするのはかなりの爽快感を得られた。

・そしてゲームパート。準備パートではステージの形に合わせて予め罠や用心棒を配置しておき、襲撃パートではリアルタイムに悪代官を操作しながら正義の味方の体力を削り切って倒す、タワーディフェンスのような内容。時代劇モノのお約束として正義の味方は悪人に対しては滅茶苦茶強いため、どれほど屈強な用心棒を用意してもほぼダメージを与えられずバッサバッサと切り殺されてしまうが、用心棒や悪代官を相手して疲れてきた頃合いに罠にハメると本格的にダメージを与えられるという、搦手を用いてダメージを与えるゲーム設計。桁違いに性能が高い正義の味方を、いかに策略的に返り討ちにするかが求められるゲームデザインが中々に秀逸。

・本作は攻略の自由度は高いがその分だけ罠の特徴を活かした連鎖や用心棒の配置を自分の頭の中でしっかり考える必要があり、アドリブ力も結構求められるバランス。ゲームの進行に合わせて開発出来る罠の種類が大幅に増えていき、組み合わせ次第でかなり強い使い方が出来るものが増えていく。正義の味方にとどめを刺す際に罠を連鎖させるとクリア時の評価が上がるため、おバカな罠に連続でハマってとどめを刺される光景は絵面的にも面白い。

・ゲームシステムが独特なため慣れない間は負け続きになるが、本作は負けても多少は軍資金が入るのがまだ救いか。悪代官が勝つと燃え上がる炎の後ろで悪代官が悪そうな高笑いをするムービーが流れるが、負けるとその章の内容に沿った簡単な紙芝居とナレーションが始まり、その内容は悪代官が正義の味方に成敗され万事解決に終わるという、いわゆるハッピーエンドが繰り広げられる……(笑)。負けた事自体が楽しめる作りになっているのは珍しいと感じた。

・楽曲数もそこまで多くはないが、ゲーム展開によく合う時代劇らしさを意識した曲が多い。必殺仕事人シリーズのような有名なフレーズをオマージュしたものやドラクエ風の曲など、元ネタがなんとなくイメージ出来るネタ曲もあり…。全体的にこのゲームの世界観によく合っている。
大黒屋!貴様手打ちじゃあ!!(悪いところ)
・敵の行動ルーチンが独特で反応が鈍く、上手く悪代官を操作しないと正義の味方が思ったように動いてくれない事がある。これにより罠を完璧に構築していても、ちょっとした事故でダメージを与える機会が消失する事もあるのが難。一度負けると次もまた罠の配置からやり直しなので、丹精に作り上げた罠準備がパアになりガッカリする事も…。せめて罠の配置はそのままで再挑戦出来れば良かったかと。

・マップ構成にやや難アリ。まず全体的にマップが広すぎる傾向にあり、パート開始時点では悪代官の場所から正義の味方までの距離が遠い。さらに罠配置時は正義の味方がマップ上の何処から現れるのか分からないのが不便。
お代官様、コメントのご準備を~!
 「越後屋、お主も悪よのお~!」「お代官様には敵いませんわ!」「ガハハハ!!」といったセリフでお馴染み、時代劇におけるお代官様こと悪代官側が主人公という、なんとも珍しい着眼点のゲーム。悪代官は普通の時代劇ならアッサリと正義の味方に成敗される運命にあるのが世の常人の常でござる……のはずだが、このゲームでは悪代官が正義の味方を返り討ちにするのが目的。

 本作の主人公の悪代官こと腹黒主水之介助兵衛は不快感ある悪役ではなく、バカゲーとして振り切ったコミカルな悪役であるのもポイント。序盤はともかく中盤からは被害者として無能な悪役達の事件に巻き込まれ戦う羽目になる上、正義の味方連中があまりにもビッグネームかつ一個人として強すぎるので、プレイヤー視点としては弱者側の悪代官を応援してやろうという気になってくるのがなんとも不思議。

 本作は時代考証もへったくれも無いストーリーだがお代官様について真面目に考えると、代官は一地方に配属された役人職であり時代劇モノでありがちな不正などは厳しく監視されている上、代わりが幾らでもいるためいつクビになるか分からない不安定な役職であったそうな。そうしたお代官様が新選組や赤穂浪士といった歴史的な戦士集団、江戸幕府のお偉いさん方などを相手に戦うのはあまりにも荷が重すぎる話だが……ストーリー中では理不尽さもありつつ笑える形で戦う理由を見出している。

 ゲーム部分は独自の面白さもあるものの、少々荒削りで不便なところが目立つ。策略が上手くハマると正義の味方を気持ちよく返り討ちに出来るが、想定外の事が少しでも起きると用心棒は切り捨てられ罠は踏み壊され悪代官はお手討ちに。負けても笑ってやり直せる人ならいいが、理不尽さを感じて嫌になってくる人もいそうな程度には理不尽なところがある。本作のノウハウを理解してくるとかなりテンポよく罠にかけられるようになるものの、この段階に至るまで腕前を鍛えるのはには少し時間がいる。万人受けするとは言えないが、独自のゲームデザインや完全なる悪役側として展開されるおバカなシナリオが上手く調和されているため、個人的にはPS2のお気に入りゲームの一つ。

掲載日:2024年12月24日


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