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アーマード・コアVI
ファイアーズオブルビコン
メーカー:フロム・ソフトウェア
機種:Steam
発売年月日:2023年8月25日
価格:8690円
ジャンル:アクション
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![]() ![]() PS4版 PS5版 |
映像 | 音楽 | 快適性 &操作感 |
独自性 | 難易度・ バランス |
ボリューム | シナリオ | 総合評価 |
10 | 8 | 7 | 9 | 9 | 9 | 8 | 87 |
素敵だ…本当に心が踊ります…(良いところ) |
《世界観・シナリオについて》 ・作中では人や生物の姿を見る機会がほぼなく、大規模な機械都市などで複数の企業による派閥抗争が機械兵器によって行われる硬派な世界。プレイヤー視点では数々の機械兵器やAC(※アーマード・コア。主人公達が乗って操作する機動兵器)しか目にする事がないが、これら機械兵器の造り込み度合いが半端ではない。自分はロボットオタクではないものの、無骨で迫力のある動力関係及びフレームパーツ、武器やブースターのリアルな駆動演出など、機動兵器の最高にカッコいい拘りが詰まっているのは感じられた。 ・登場人物の数はかなり多いがミッション開始前のブリーフィングやボス戦前後のイベントシーンでは日本語ボイスでよく喋るため、外見上の区別は分からないにも関わらずキャラクター像は覚えやすい。独立傭兵レイブンとして雇われれば敵対する派閥に加担する事もあるため、昨日の敵は今日の友の精神で様々な人物と関わり合えるのが特徴。常に信頼できる味方はハンドラー・ウォルターくらいだが、敵対する相手もセリフ回しが魅力的で敵ながら好感を持てる人物が多かった。 ・ストーリー展開の魅せ方が秀逸。ミッションを進めるにつれ全く予想の付かない展開に幾度も遭遇し、プレイヤー自身がゲーム体験を通して物語を展開していく流れであるが、伏線の張り方や適度な意外性が絶妙であると感じた。惑星ルビコンの全容が明らかになり複数の企業や組織の思惑が交錯する中、強敵との対峙や戦友との共闘といった王道的ながら熱い展開も多く、どのミッションも予測不可能なストーリー展開に惹き込まれる。 《戦闘デザイン・バランスについて》 ・一つ一つのミッションは小粒で短いものだと5分ほど、長くとも20分はかからないのでかなり気軽に挑戦できる。戦闘系のミッションも量産型機械兵器の殲滅から歴戦のAC乗りとの一騎打ち、超巨大な機械兵器の討伐以来まで色々あるのが特徴。ミッションの種類も幅も広く、偵察や隠密行動を目的とした難易度低めのミッションも多く、一部の難関といえるボス戦を除けばテンポよくゲームが進行するのも有り難い。 ・アーマードコアシリーズお馴染みの長所だが、機体の編成、いわゆるアセンブルがかなり楽しい。機体のパーツの組み合わせで長所短所や操作感が大きく変わる他、武器編成もミッションごとの攻略しやすさに大きく関わるので、自分だけの機体をアセンブルしていく時間が良い。本作はミッションクリア時の報酬も多く、失敗時の修理費や弾薬代も安価で積極的にSHOPで買い物がしやすいため、アセンブル時に選べる選択肢も自然と豊富になってくる。 ・多少強い武器も幾つか存在するが、武器の数もかなり豊富ながら一つ一つの武器の特徴がしっかりしているので、ゲームバランスもそこそこ良好。完全上位互換や完全下位互換の武器もほぼなく、同じ武器を左右揃えるのも意外と効果的な事があるので組み合わせのパターン数はかなり多い。 ・ミッションで撃破必須なボス戦は全て同じ戦法で攻略すると難しく、柔軟な戦闘方法が求められるバランスになっている。機体編成で回避力や防御力に特化したり、使用武器もエネルギー攻撃で長期決戦や積極的なスタッガー狙いで短期決戦を挑めばあっさりクリア出来るなど、ボスの編成に後出しジャンケンする形で有利を取ると一気に難易度が下がるのが良い。 ・敵を狙うターゲットアシストがかなり優秀。どのAC機体も機動力が高く激しく動き回るが、よほどのエイム力が無い限りは手動操作で敵を狙うより、ターゲットアシストを使って敵を攻撃する方が命中しやすい。近?中距離ではアシスト有り、中?遠距離はアシスト無しで立ち回るのを想定しているようだが、複雑な操作をせずとも1vs1のAC戦では常にロックオン状態でプレイしてもほぼ問題なし。ACSや腕パーツと武器の相性も影響するものの、エイム力に悩む人にとっては有り難い仕様だと感じた。 ・攻撃を喰らい続けて衝撃値が限界まで溜まるとACがしばらくダウン状態になるスタッガーというシステムがあり、スタッガー状態の敵には直撃補正が加わるため瞬間的に大ダメージを与えられるように。ジワジワと小ダメージを重ねていく戦略もあるが、本作は敵も味方も積極的にこれを狙うのが基本であり、スタッガーの間に瞬間的に大ダメージを稼いでいく爽快感はかなりのもの。 ・一つのミッション内でもチェックポイントが細かく用意されており、評価は下がるもののチェックポイントから再開すれば体力や弾薬も満タンの状態になるのは助かる。機体の編成も行えるので、ミッションの最後に出てくるボス戦でもその場で有効な武器に持ち替えるなど対応出来る点も良い。 《UI・快適性について》 ・まるで機体の中のディスプレイを見ているような感覚になるHUDは後述の通り見辛さもあるものの、画面の真ん中だけを注視するだけで弾薬の装填数や、危険攻撃の方向が分かりやすい配置になっており、慣れると見やすくて便利。特に必要な情報だけを真ん中に纏めたあまり見慣れないUIなので最初は面食らったが、主張し過ぎずコンパクトに纏まっておりこれはこれで良いと思った。 ・最初からチュートリアルを全て表示するのではなく、ストーリー進行に合わせてトレーニングでのチュートリアル及び、仮想空間で1対1戦の練習が出来るアリーナの内容が少しずつ解禁される設計。プレイヤーの上達に合わせてゲームシステムへの理解が深められるのは、複雑なゲームシステムを有する本作ならではの良い配慮。 《その他について》 ・イベントやボス戦のシチュエーションに合わせたBGMもカッコいい。重低音を基調としたサイバー世界的な曲が多く、本作の機動兵器SF世界の雰囲気とよく合っている。 ・敵のACの思考ルーチンがかなり優秀で、読みやすいパターンも残しながらもこちらの機体の状態に合わせて攻撃頻度が大きく変化するなどかなり賢い。アセンブル的にはどの敵ACもプレイヤー側で再現出来るように、ある程度の通常レギュレーションに則った性能をしている模様。ゲーム後半になるほど機体性能ではなく、思考ルーチンで強さを発揮してくる難易度調整が秀逸だと感じた。 ・『NEST』なるオンライン対人戦モードも用意されており、バランス的には難があるもののネット上の猛者プレイヤーと戦いたい人にはオススメのモード。現在はプレイヤーの腕前が凄まじくメインストーリーを一通りクリアした程度の腕前では中々太刀打ち出来ない相手ばかりだが、自分で考えたアセンブルの戦略が対人戦でも見事に通用した時の爽快感は凄まじい。 ・パーツや武器の購入価格と売値が全く同じ金額なのは助かる。高い金を出して買った武器がイマイチ使いこなせない……という事もあるが、売値が同じなので不要と見なせば売却し、躊躇無く色んなパーツや武器の買い足しが出来るのは実に便利。 |
ご友人…踊り疲れたのですね…(悪いところ) |
《戦闘システムについて》 ・戦闘システムを理解しているか否かでゲームの攻略難易度が大きく変動する事がある。特に跳弾のシステムや、射撃適正ACSの低さによる射撃のバラつきなどは武器によっては重要な仕様であるものの、ゲーム中で説明される機会が少なく分かり辛い。彼方を立てれば此方が立たず……という前提でアセンブルを考える必要があるので、どこで妥協するかの匙加減も最初は難しい。 ・敵のAC戦は立ち回りが優秀で面白い一方で、ゲーム後半の一部の大型機械兵器や特殊な機械兵器はとてつもない移動速度で距離を詰めて攻撃を仕掛けたり、超広範囲に弾幕を張って近付けなくする物があり、行動パターンの偏りによっては難しさより理不尽さを感じる事がたまにある。 《UI・快適性について》 ・恐らくシリーズ伝統なのだと思われるが、ステータス周りは非常にややこしくパッと見ではほぼ理解出来ない。特に難解なエネルギー出力関係を例を挙げると『容量・重量・余剰EN出力・EN補充性能・供給復元性能・ジェネレーター出力補正・ジェネレーター供給補正・ブースタ効率補正etc…』といったパラメータが複数あり、それぞれの数値ごとに長所短所が大きく出るなどとにかく複雑。パーツ構成のほんの少しの違いで操作感や立ち回りが変化するので、全てのパラメータの仕様を理解するまでには苦労する。 ・画面の最下部に表示されているレーダーは大まかな方角及び敵やアイテムの位置が分かるが、パッと見では全方角のどこに何があるのか分かりづらく不便。さらにレーダー範囲が広がるヘッドパーツを着けても、思ったより広範囲をサーチしてくれないのも困る。 ・いずれのミッションもフィールドが結構広く用意されているが、隠しパーツや戦闘ログ、アーカイブなどを探し出すにはマップの隅から隅へスキャンか目視で見つけるしかなく、自力で全て発見するのはかなりキツい。ミッションのクリア報酬やSHOPに並ぶパーツがかなり多く、マップ上で手に入るものはコレクション要素だと諦めてもゲーム難易度がそこまで変化するものではないが、もう少し見付けやすくあれば良かったのにと思う。 《その他について》 ・オンライン対戦のNESTはゲームバランスが微妙。1vs1では引き機体アセンブルと呼ばれるタイムアップ後のAP残量の割合で判定勝ちを狙う手法のユーザーが多く、真っ当に戦ってくれる相手でなければ困難する事が多い。3vs3は時間制限まで真っ向からの交戦が続くが、スタッガーからの短期決戦を狙うのが前提のバランスであり、短期決戦狙いの機体以外は勝率があまり伸びない傾向にある。オフラインはともかくオンライン上のバランスは総じてあまり良いものではなく、オンライン上でのやり込み要素もあまり用意されていないのでおまけモードに近いのかと考える。 ・ストーリーはほぼ全編を通してセリフ量は多いものの、フロムゲー特有の説明不足感はあった。プレイヤーが積極的に戦闘ログやアーカイブ、ストーリーを理解していかないと物語の全容が把握しきれないゲームであり、固有名詞も多いのでたまにストーリー展開が今一つ分からなくなる事がある。 ・ゲーム最序盤に戦うボス戦がやたら強く、撃破しないとその後のゲーム仕様を解説するトレーニングにさえ辿り着けないのは問題点。位置付けとしては死んで操作を覚えてもらうのが目的のボス戦なのだとは思うが、アクションの腕前がそこそこ要求されるのでここで心が折れる人もいるのではないかと思った。逃げる事も可能なイベントボスにするとか、ゲーム仕様の理解が追い付いていないプレイヤー向けにも救済措置があっても良かったかもしれない。 |
花はどこだ…手向けなければ…(感想です) |
かなり昔に初代アーマード・コアだけは遊んだ事があるもののそれ以降のアーマード・コアシリーズには特に触れる機会がなかったため、自分としてはほぼ初のアーマード・コア。シリーズの評判としてアセンブルが魅力的である事は知っていたが、実際にプレイすると想像以上にアセンブルの奥が深く、ボス戦や自分の得意分野に合わせたアセンブルがミッション攻略の鍵となる感覚は唯一無二の面白さであると感じた。 意外にも初心者やシリーズ未経験者向けに配慮されてる点が多く、ゲームの進行に合わせてトレーニングやTIPSが追加されていく段階的なチュートリアルになっている。TIPSをよく記憶していけばゲーム内の解説だけでも最後まで進める事は出来るが、初心者泣かせな仕様である跳弾やパルスアーマー、エイムアシストの活用法があまり詳しく語られていない事、さらにはゲーム最序盤のボス戦であるヘリコプターがやたら強い事など、初心者に優しいのか優しくないのか分からないチグハグな点は幾つかある。 他にもオンライン対戦のバランスなど細かい点で気になる所はあったものの、メインストーリーをプレイするだけなら目立った不満点はなく、最初から最後まで熱中してゲーム体験を楽しめた。元からフロム社が優秀な技術力を持ち合わせている映像・シナリオ面も然ることながら、オフラインの攻略の奥深さなどアクションゲームとして最大の魅力たる部分も完成度が高い。アーマード・コアの攻略性は他に似たゲームが少なく、根強いファンがいるのも納得がいくと身を以て分析した。 公式とは全く関係のない言葉だがネットミームとして『身体は闘争を求める』が数年ほど流行るなど、十年近く続編の情報が無い中でついに新作が発売されたゲームなだけあって、かなり力を入れた内容になっているなという印象。オンライン対戦の仕様やバランスなどで苦言を呈している人は多いものの、メインコンテンツであるオフラインのミッションに関しては総じて完成度の高いゲームである事に間違いないかと。フロム社のアクションゲームの中ではこれでもまだ初心者向けに配慮されてる点が多く、アーマード・コア初プレイの人にもオススメしやすい内容だった。 |
掲載日:2025年3月25日
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