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ELDEN RING
メーカー:フロム・ソフトウェア
機種:Steam
発売年月日:2022年2月25日
価格:9240円
ジャンル:アクションRPG
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![]() ![]() PS4版 PS5版 |
映像 | 音楽 | 快適性 &操作感 |
独自性 | 難易度・ バランス |
ボリューム | シナリオ | 総合評価 |
9 | 7 | 7 | 9 | 8 | 10 | 8 | 81 |
評価点万歳!! |
《ゲーム全体・世界観について》 ・本作はフロム社が製作しているソウルシリーズの最新作で、ストーリー上の明確な繋がりは無いもののダークファンタジーの世界観やゲームデザインなどはソウルシリーズの系譜をほぼそのまま引き継いでいる。『黄金律』『指』『腐敗』といった、独自のキーワードを主軸に作られた硬派な世界観が見事で、本作の世界観設定の元で幾つものストーリーが展開出来そうなほど濃いのが特徴。 ・元から西欧ファンタジーの世界設定を多く引き継いでいるシリーズだが、本作はSF・ファンタジー小説作家であるジョージ・R・R・マーティン氏がゲーム世界の神話設定を手掛けたらしく、さらに独自性の高い世界設定になっていると感じた。世界の中心に天を覆うほど巨大な黄金樹がある事や、登場人物にヒト以外の多様な種族が積極的に関わるようになった点など、北欧神話的なファンタジー設定が多くなったように感じる。作中の登場人物やフィールド設計にも上手く反映されており、ゲーム的な都合にも合致している。 ・フィールド上でも時間や天候の変化による影響が生じるようになり、映像面でも表現が多彩になったと感じる。ソウルシリーズお得意の洞窟内や地下世界などの暗く悍ましさを感じるダークファンタジーらしいエリアも良かったが、プレイの大半を占めるフィールド上では世界の中心にそびえる黄金樹が神々しく背景に溶け込み、壮大な自然風景か楽しめた。グラフィックの美しさについてはほぼ文句無しの完成度かと。 《本作からの新要素について》 ・ある程度フィールド上の道筋が決まっていた過去作品とは変わり、本作はオープンフィールドというほぼオープンワールドに近い仕様に。メインストーリーの流れだけを追うと狭間の地の世界を南から時計回りにぐるっと一周して進む形になっているが、ちょっとした寄り道イベントやクリアに必須でない他のレガシーダンジョンなども含めると、クリアまでにかかるプレイ時間はかなりのもの。 ・オープンワールドではお約束のチェックポイントへのファストトラベル、トレントに乗馬しながらの高速移動といった、移動力についての不便さはほぼ感じずかなり優秀な部類。特に特定の場所でのみ使える霊気流ジャンプは、高く聳える垂直な崖を一気に跳躍して行けるのが便利。ゲーム序盤からほぼストレスなく自由に移動出来る作りであった。 ・世界各地をトレントで疾走しているだけでも、気になる拠点やイベント、さらには野生のボス戦にも遭遇する。特に本作の新要素である騎乗と上手く組み込んだボス戦は楽しく、ボス自身も馬に乗りながら戦う騎馬戦や、超大型のボスをトレントで追い掛け懐に潜り込むものなど、新しい攻略システムにも繋がっている。 ・プレイヤーの身体能力がダークソウルシリーズよりも更に機敏に動けるSEKIRO寄りの身体能力になっており、しゃがみ移動によるステルス行動やその場ジャンプなど、戦闘攻略でも過去作品より一味違う立ち回りが出来る。単に真っ向勝負を仕掛けるよりも、ステルス戦闘を基調に立ち回ったり、ローリングではなくジャンプで回避する方が有効的な攻撃もあるなど、アクションゲームとしてもさらに一際面白くなった。 《戦闘システム・バランスについて》 ・高難易度3Dアクションゲームのソウルシリーズ本家本元なだけあり、ボス戦のアクション難易度は相当に高い。敵の配置やボスの行動パターンを理解しプレイヤー自身が積極的に適応していく必要があるが、リトライする度に上達を感じていくゲームデザインは中毒性が高くいつまで経っても止め時が見付からないほど熱中する。それ相応にプレイヤーの腕前を要求するゲームデザインなだけあり、ハマる人は間違いなくハマるであろう唯一無二の面白さがあると改めて実感した。 ・本作はボスの弱点や攻撃パターンが多種多様で、何か一つの攻撃方法だけで統一して攻略する方が却って難易度が高くなるゲームデザインになっている。そのため本作は武器だけでなく戦技や魔法の組み合わせや、祝福で休むたびに補充され一時的に身体能力を上げる霊薬、クラフト要素で有効な戦闘アイテムを作るなど、過去のソウルシリーズよりもさらに攻略パターンの幅が広く取られている。ステージ上に置かれているアイテム数もかなり増えているためアイテム収集も行いやすく、アクションの腕前以上にプレイヤーが積極的に創意工夫していく攻略性が面白い。 ・基本的には1対1で真っ当に戦う人型のボス戦が多めなものの、超巨大でほぼ全く動かないボスを相手取るボス戦、特殊なギミックの武器を持って戦うボス戦、多人数で1人のボスを相手に戦いを挑むボス戦など、シチュエーションや攻略方法に独自性を備えたボス戦が大幅に増えた。トレントに乗馬しながらの騎馬戦やジャンプ回避前提の技を使うボス戦など新システムとの兼ね合いが上手いものもあり、ボス戦攻略でも新しい方向性を見出していると感じた。 《その他について》 ・ボス戦でない通常戦闘時も専用のBGMが流れるように変化し、道中を進む時も緊迫感ある戦闘を楽しめる。武器を振るう時の効果音しかほぼ聞こえない通常戦闘には昔から違和感があったので、少し遅い気もするがここは真っ当に評価したいところ。 ・レベルはそのままステータスの振り分けがやり直せる『生まれ直し』のために必要な雫の幼生がそこそこ手に入るため、使いたい武器や魔法の要求ステータスに合わせた能力値調整がやり直しやすくなったのはグッド。大して寄り道せずとも多種多様な武器や魔法が手に入るゲームなので、能力値の振り分けをやり直してビルドの試行錯誤がしやすくなるシステム改良だったと思う。 ・世界各地の放浪商人を倒し鈴玉を狩る事で、拠点となる円卓で商人のアイテムを自由に買えるようになったのはとても便利。この行為をしても特にデメリットもなくゲーム側もそれとなくこの行為を薦めているので、残酷で心が痛む点を除けば本作は買い物が便利になったと感じる。 |
問題点とはな… |
《戦闘システム・バランスについて》 ・ボスの強さはソウルシリーズ歴代最強と言っても過言でもなく、行動パターンが豊富すぎるため攻略難易度はかなり高い。本作は遺灰の存在やNPCを召喚出来る金のサインなど救済措置が多めに取られており、システムを駆使すれば初心者一人の攻略も不可能ではない造りになっている……と言われているが、そもそも遺灰にも強さの違いがあり、どこで何の遺灰が手に入るかもほぼノーヒントなため、遺灰頼りにするとしても初心者は攻略情報を積極的に調べていく必要がある。さらに遺灰やNPC召喚も全てのボス戦で召喚出来る訳ではない事、強い遺灰を召喚してもそれ相応のアクションの腕前は必要なことなど、初心者が本作をクリアするまでのハードルはかなり高いと感じた。 ・終盤のボス戦はゲームスピードが速すぎて、プレイヤーの移動速度や回避の遅さでは追い付けないものがある。ゲーム中盤まではまだ敵の行動パターンとプレイヤーの行動パターンが同速度に近く、反射神経が追い付けば手に汗握る楽しいバトルが繰り広げられるものの、ゲーム終盤ではボスの攻撃パターンが速すぎて反射神経が追いついてもプレイアブルキャラの行動速度が追い付かないものが続出する。こうなるとボスが遅めの攻撃を仕掛けてくる時のみ近接し、苛烈な攻撃を仕掛けそうな時はまともに戦闘に付き合わず、距離を取って時間稼ぎをするのが安定策に。前作SEKIROではボスだけでなくプレイアブルキャラ側の動きも機敏で、敵の高速攻撃に高速防御を取る戦闘デザインであるため良かったものの、エルデンリングの主人公はそこまで機敏な防御行動が取れないため対応がキツい。終盤ボスのゲームスピードはもう少し抑えた上で、また違う形でゲーム難易度が上がっていれば終盤の消極的な攻略には結び付かなかったのではないかと思う。 ・相手の攻撃をタイミングを合わせて返す必要があるためハイリスク・ハイリターンなパリィが、ボス戦ではパリィを1回ではなく2、3回ほど成功させないとダウンし致命の一撃を入れられないシステムに変更したのは微妙な調整だと感じた。本作は強靭削りの大きな戦技を使うとボスが倒れる事が多く、それでも致命の一撃が入るので基本的にリスクの高いパリィを狙う必要性が薄い。強化版パリィの戦技を装備してボスの行動パターンを熟知すれば使えなくもなかったが、過去作品よりもボス戦でのパリィが実戦的でなくなったのは間違いないと思う。 《快適性・作り込みについて》 ・フィールド上の祝福(ファストトラベル及びチェックポイント)やサイン溜まりが視認しづらい。祝福は薄っすらと光の粒子が集まっているので夜の時間帯に探索すると若干見付けやすくなるが、それでも少し物陰に隠れていると分からなくなるほど小さいため見つけ辛い。過去作品では通り道が限られているので目立たないデザインでもまだ良かったが、本作は明確な通り道が少なく自由に走り回って進んでもらうオープンフィールド形式なため、祝福を見落とす機会がかなり多い。 ・過去作品よりチェックポイントからボス戦へのリトライがしやすくなってはいるものの、死亡時限定のチェックポイントであるマリカの禊が近場に用意されていないボス部屋が時折存在する。ファストトラベル先である祝福はともかく、チェックポイントのマリカの禊だけはボス部屋の前にほぼ必ず配置する仕様でも良いとさえ感じた。再戦まで道中の敵を無視して駆け抜ける作業が2分ほど挟まるだけでも、連戦が続くとこの作業がやや面倒に感じるので……。後半のボス戦ほどボス部屋近くに祝福やマリカの禊が置かれているケースが増えるものの、ゲームに慣れていない序盤ほど置かれてない傾向があるのも辛い。 ・フロム社のゲームではお馴染みだが、世界観や物語の展開についての説明が少なく、NPCの然りげ無いセリフやアイテムのフレーバーテキストなどからプレイヤー側が積極的に理解していく必要がある。過去作品のようにストーリーが今一つ理解できなくてもクリアまでの道筋が狭く定まっていた仕様とは違い、本作は攻略上でも積極的に情報理解をしないと進め方が分からなくなる事があるので、説明不足であるが故の問題点がさらに増している。広大なフィールドの本作に於いては、メインストーリー周りだけでも更にヒントを分かりやすく用意した方が良かったのではないかと。 ・ダンジョン外のオープンフィールドだが、明らかに手抜きを感じるエリアが幾つかある。特に後半になるにつれ一定の距離に点々と敵やアイテムが置かれているだけで無味乾燥なエリアが増え始め、そうしたエリアはトレントで駆け抜けてアイテムだけ拾って終わることが多い。序盤は敵の拠点に入り込み宝箱を見つけだすなど攻略の甲斐があるものが多かったものの、終盤ほどステージの必要性そのものが微妙で退屈なエリアが多い。 ・そして終盤の寄り道ステージでは開発者側が想定したであろう攻略方法として特別なアイテムを使いながら進めるものがあり、ステージ構成デザインが酷すぎるものがある。例を挙げると『典礼街オルディナ』と『腐れ湖』は、それぞれ全く関係のない場所にある有効なアイテムをノーヒントで見つけ出し、現地で上手く活用していかないとまともな進行が不可能。そのアイテムが無い状態で進める場合、両ステージ共に理不尽に体力が減らされるのを急いで回復しつつ、何度も死にながらフラグ立てをしていけば攻略出来なくもないが、全く面白味を感じない。終盤の無味乾燥なステージも問題だが、終盤の開発者側の想定した攻略方法が滅茶苦茶なステージも問題的。 《その他について》 ・ケイリッド地域は腐敗したブツブツが大量に集まったオブジェクトが幾つかあり、そこまで苦手意識を持たない自分でも結構気持ち悪く感じた。トライポフォビア(集合体恐怖症)の人にとっては間違いなく地獄。 ・ボスと再戦する方法が周回をやり直す方法しかないのが残念。これはソウルシリーズお約束の仕様ではあるが、エルデンリングは過去作品以上にマップが広く、周回するにもかなり時間がかかるのが辛い。武器や魔法などの編成次第でボス戦攻略の面白さが変わるゲームなので、気軽に再挑戦出来るモードが用意されていても良い気がするのですが……。SEKIROやアーマード・コア6など、クリア後もボス戦やミッションを気軽にリトライ出来る最近のフロムゲーもある訳で、そろそろソウルシリーズも従来作のお約束を考え直しても良いのではないかと思ったり。 ・死してなお戦いに協力する存在、遺灰で選ばれているのが敵モンスターやモブキャラクターといった今一つ印象に残らない存在が多く、一部の傀儡化する人物など除き重要なNPCの遺灰がほぼ存在しないのが残念。特に魔術師トープスや戦士の壺アレキサンダーなど、感慨深い結末になり最後に主人公に遺灰を残してもおかしくないシチュエーションの登場人物は何人かいた。死してなお戦いの記憶だけを思い出し主人公に戦力を貸してくれる遺灰と、生きながら戦闘マシーンへと変えられる傀儡はシナリオ的にも重要な要素であったので、NPCイベントを完遂した褒美として彼らの遺灰も使ってみたかったように思う。 |
コメントの時間だ |
エルデンリングは『オープンワールド化したダークソウル』という印象しかなかったが、実際にプレイしてみると大いに飛躍を遂げた内容であると実感。単にオープンフィールドの世界へと変化し物量を増したのみならず、アクションゲームとしても改良が大いに加えられている。ただし、自分のプレイでは本編のストーリー的に重要なボス戦及びダンジョンは制覇、そして主要なNPCイベントも発生させた一方で、ゲーム本編とは大きく関わらない対人戦や周回を前提としたゲームバランスなどにはほぼ触れていませんが、悪しからず。 フィールドの完成度は序盤のエリアほど高く、マップ画面で言うならゲーム開始時の南に近ければ近いほど探索の甲斐がある拠点が多い。城・砦・洞窟など、マップ上で気になる場所にはほぼ確実に何かがあり、フィールドの各地域の特徴を活かしたイベントが堪能できた。ゲームのメインストーリーに当たるレガシーダンジョンに関しては終盤まで完成度が高く、フィールド上の寄り道を抜きに考えればダークソウルシリーズとほぼ同等の内容だと感じた。 中盤まではボス戦も結構楽しかったが、終盤のボス戦ではボスの攻撃速度が早く移動距離も長過ぎるせいで、プレイヤー側が攻撃を叩き込むタイミングが大幅に少なくなっている。フロム社が一つ前に製作したゲームがハイスピードの攻防を魅力とするSEKIROだったためか、本作のボスの行動速度もSEKIROのボス戦を引き摺っている印象。ただ、ボスの攻撃パターンそのものは悪くないので、プレイヤーがSEKIRO主人公であれば終盤のボス戦も激しい攻防が楽しめる攻略内容だったとは思う……。エルデンリングの主人公ではゲーム終盤ほど積極的に戦えず、後手に回り消極的にチャンスを狙う攻略方法の方が安定するのがあまり楽しめなかった。徹底的に対策をすれば終盤のボス戦でも短期決戦や激しい近接戦闘の差し合いが行えるとは思うものの、これを実行するためにはかなりの前準備が必要であり、却ってクリアまでに時間がかかるように思えた。 自分はアクションゲームの腕前にそこそこ自信のあるゲーマーなので本作のクリアも順調に達成できた一方で、単に難しいだけでなくゲーム制作者の意図や拘りについても注視するタイプのゲーマーでもあるので、本作のボス戦等について是々非々的に取り上げるとこのような長めの批評に。オープンフィールドを完成させる為にその他へ皺寄せが及んだ傾向にある気がするので、次作では無理にオープンフィールド世界を作る事に拘りすぎず、従来のダークソウル世界の作りに戻してもらった方がより楽しめるのではないかと思った。 独自の世界観やグラフィックなどはかなりの評価点で、ソウルシリーズでは気になっていた問題点の大半も改良が加えられており、総じて評価するならまさにソウルシリーズ集大成。プレイヤー自身が積極的にゲーム世界にのめり込む必要があるものの、それに応えてくれるだけの内容はあると感じた。メインストーリーを遊ぶだけなら過去作品のソウルシリーズがさらに改良されたような内容なので、シリーズ経験者であれば楽しめる大作なのではないかと思います。 |
掲載日:2025年3月18日
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