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メタルギアソリッドV ファントムペイン
メーカー:コナミ
機種:Steam
発売年月日:2015年9月1日
価格:8556円
ジャンル:アクション


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PS4版

ファントムペイン
+グラウンドゼロズPS4版

執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
9 8 7 9 7 8 8 79
プレイ時間…100時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
良い結果になっとるな!
・PSPで発売されたピースウォーカーのマザーベース開発システムがいくつか引き継がれていて、敵兵士を戦場から回収して人材を集めたり、チマチマと武器開発や拠点開発を行っていくのが楽しい。本作では完成した拠点を自由に彷徨く事ができたり、拠点設備や装備品などのカスタマイズが豊富なので、試行錯誤しながら自己流に築いていくのが中々ハマる。

・行えるアクションの種類や武器の利用方法などはさらに増加。これまでのシリーズでは、腕のたつプレイヤーなら初期装備の麻酔銃とCQCによる肉弾戦だけで潜入を全て終える事も出来たが、本作は敵がかなり優秀でそう簡単にはいかないので、武器やアクションの種類を把握して潜入していく事が求められる。

・これまでの作品では一人で潜入するのが基本だったが、本作ではバディとして一緒に行動してくれるキャラが複数用意されていたり、支援班へ要請する事で様々なサポートを幅広く行ってくれたりするので、仲間から手助けを受けてる事を実感しながら潜入出来るようになったのはポイント。相応にお金はかかるが、サポートを要請しまくれば攻略はやりやすくなるし、これまた独自性の高い潜入が楽しめた。

・本作では難易度変更は用意されていないものの、一つのミッションだけでも基本的なクリア条件だけこなそうとすれば難易度は低いが、ミッションごとに予め用意されているタスクをこなそうとするとさらに難易度は上がるようにバランス調整されている。敵を殺傷したり敵から見つかると問答無用でSランク評価が取れなかった過去作とは違い、本作ではタスクをこなせばしっかりとSランク評価が貰えるのも自然的で良かった。

・敵の索敵能力や戦闘能力はかなり高く、状況に合わせてしっかりと警戒網を作って対処してくる。例えば従来のメタルギアシリーズでは、近くに敵がいない状況でスナイパーライフルで敵を狙い撃ちすれば敵がこちらを探知出来ず一方的に攻撃する事が出来たが、本作では銃の弾道予測などを見て遥か遠くからでも狙撃された方向へ広範囲に迫撃砲を撃ってきたり、銃を乱射してきたりとかなり工夫してくる。

・初心者救済グッズとして、チキンキャップとひよこキャップという救済アイテムが用意されてるのはグッド。これまでのメタルギアシリーズはアクションがとことん苦手な人だと詰んでしまう可能性もあったと思うが、この二つのアイテムを使うと潜入任務がかなり楽になるので、ゲーム初心者でも本編クリアくらいまでなら辿り着けるようになるはず。

・メタルギアシリーズお約束の重苦しい説教臭さも多少あるストーリーだが、本作は陰鬱としたシナリオながらも、良い感じに伏線や複数の組織や登場人物達による複雑な思想が入り混じっていて惹き込まれる。メタルギアシリーズ特有のシナリオがある程度楽しめた人なら、まだ受け入れられる内容かと。
こらあきまへんで!
・ゲーム全体の未完具合が強い。1章まではほぼ問題なく進められているのだが、2章からに関してはかなり端折って物語の展開が進められる。本作は2章までしか用意されてないが本来は5章構成だったとかいう逸話があったり、明らかにムービーで挿入すべきイベントもカセットテープでの音声のみの演出になってたりと、製作者側が演出しようと想定していた描写が全て行いきれていない感じがある。本作だけで後の物語を想像するのは出来なくはないが、開発者側がやりたかった事がやりきれてないのは痛感する。

・ストーリー展開そのものも、グラウンドゼロズに引き続きかなり重苦しい。残酷な描写に加えて荒んだ人間関係や組織関係もかなり多くなってるので、まあある程度の重苦しさは覚悟しないとプレイしてて疲れてくる。

・2メートル以上の高さがあってもしっかりとよじ登る事もあれば、腰くらいまでの高さしかないのに登れない場所もあったりと、フィールドの見た目通りに動けないのが不便な事がある。あと、全体的に高所から落ちる事が増えたのにも関わらず、本作では三階建てくらいの高さから落ちると一発で死亡してしまう点にはかなり違和感が。これまでのシリーズでは三階くらいの高さから落ちてもノーダメージか、あるいは少しのダメージ程度で終わっていただけに特に辛い。

・本作はオープンワールドという扱いにはなってるものの、これまでの作品では一つ一つ潜入場所が区切られていたのがシームレスになったという程度の印象で、そこまでオープンワールドとは感じなかった。ミッションも行くべき場所がそれぞれ決められてる事もあって、開発者側が想定してるであろう一本道を通って各地を潜入していくという流れが続く。乗り物や、ダンボール配送といった便利な移動手段を用意してないと無駄に移動時間がかかるという事もあって、別にオープンワールドでなくても、一つ一つの潜入場所は大きくしつつもエリアごとに区切ったらそれで良かったのではないかと思った。

・ゴールに到達すれば一段区切りになった前作のピースウォーカーとは違い、本作ではミッションが終わった後にヘリコプターを要請して乗って帰る必要があったり、危険区域から移動して出る必要があったりと、リアル過ぎるが故に面倒臭い側面もやや見られる。特に、マザーベースに居る状態からミッション出撃をしようとするためは、ヘリコプターを要請してわざわざ乗る必要があるのはリアルとは言えども流石に面倒臭すぎるとしか…。

・開発できる武器やアイテムの種類は豊富だが、本編だけで言えば中くらいのレベルまでの武器やアイテムさえあればクリアに支障は無いので、高レベルの武器やアイテムは必要性がよく分からなくなってくる。本作は本来なら5章構成にするつもりだったらしく、恐らくはさらに難易度が上がっていくであろう5章までを想定して高レベルの武器やアイテムを用意したんじゃないかと思うが、それに反して本作は2章までの構成になってしまったので、やけに強すぎる武器やアイテムも開発できるようにされているゲームバランスになってしまったのではないかと。

・本編に組み込む形で追加された新たなるオンライン要素であるFOBやオンライン上でのレート戦などだが、どのプレイヤーのプラントに潜入しようとしてもステージの形は似通ったものばかりで潜入していてもあまり面白くない。報酬として本編で使えるさらに高性能な武器やアイテムの開発などが行えるようにはなるが、ある程度強化してしまえば本作はそこまで強い武器を手に入れずとも難易度はほとんど変わらないので、自己満足や実績埋めの域に近い。面白くないわけではないが、ほとんどプレイせず終わる人も多そうな内容だと感じた。

・新たに追加されたオンライン上で他のプレイヤーとチームを組んで戦うメタルギアオンライン3、通称『MGO3』だが、収録されてるステージ数は少なく、やり込み要素もあまりなど、どちらかというと手抜きに近い印象を受けた。こちらも決して面白くなくもないが、あまり奥深くない内容でこのくらいのTPSゲームなら他にもありそうな印象を受けた。
ほな感想やで!(例の関西弁スネーク風に)
 小島プロダクション製作においては、最後のメタルギアシリーズ作品。ゲームの物語そのものはメタルギアソリッド4の時点でほぼ全て完結してたので、最終作だからといって何か大きな終着点がある訳ではないが、ゲーム作りの技術や潜入のシステムの追求としてはまさにシリーズ中でも最高レベルだと感じた。

 グラウンドゼロズと同じく、新しく開発されたゲームエンジン『FOX ENGINE』が使われてるだけあって、グラフィックはとにかくリアル。同じくゲーム内容もリアルさが増しており、リアルであるが故の面白さは多いし、重いストーリーに合わせるならゲーム的な要素は控えてリアル嗜好に近付けたのも良かった。

 敵の能力や行動パターンは過去最高レベルに賢いので難易度は相応に上がってるが、それに加えて主人公のスネークが行えるアクションの種類も大幅に増え自由度が高まったので、とにかくプレイヤーごとにプレイスタイルの毛色が出やすくなったのもポイント。潜入の面白さだけで言えばシリーズ中でも最高レベルに楽しめたし、こういったタイプの潜入の面白さが楽しめる作品は中々出てくるものではないと思う。

 ただ、リアルすぎるために面倒臭さが増してるなと感じた部分も。特に分かりやすいのがオープンワールド化した部分で、一つの潜入場所が広大なのはもちろん嬉しいのだけども、移動に時間がやたらとかかったり、オープンワールド特有の仕様を活かしきれてるミッションがあまり多くなかったりするため、無理にオープンワールド化しなくても良かったのではないかと総合的には感じた。

 何よりも、ゲームの終着点が分からず未完気味なオチになってる事や、潜入は面白いもののそれ以外のシナリオ面などがまだ続きそうなまま無理やり終わってしまった感じがあるのが残念。まあ当時、開発の小島プロダクションとコナミには色々と確執があって、(個人的にはコナミだけでなく、小島プロダクション側に対してもあまり快く思ってないものの、)未完結のまま無理やり終わらざるをえなかった事情もあったので否定的な意見ばかりを言う事はできないんだけども…。

なんだかんだ言われてるが、潜入の面白さや、途中までの陰鬱ながらもよく考えこまれたシナリオは面白かったので、『これまでのメタルギアシリーズを楽しめた人』なら楽しめる内容だと思う。最後のメタルギアシリーズとしてはやや締まりきってない部分もあるものの、総合的には完結作品としてファンを楽しませられた内容だと思った。

掲載日:2020年6月19日


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