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ペルソナ4 ザ・ゴールデン
メーカー:セガ
開発:アトラス
機種:Steam
発売年月日:2020年6月14日
価格:1980円
ジャンル:RPG
映像 | 音楽 | 快適性 &操作感 |
独自性 | 難易度・ バランス |
ボリューム | シナリオ | 総合評価 |
8 | 9 | 7 | 8 | 7 | 9 | 8 | 81 |
ウッホッホ、これはこれは…最・高どぇす |
《日常生活パート全体について》 ・ペルソナ4ではATLAS製RPGでお約束の東京ではなく、八十稲羽市という架空の田舎町が本作の舞台となる。田舎といってもテレビもラジオも無いようなド田舎ではなく、都心からやや離れた日常生活には困らない程度の田舎町という事もあって、都会住みでないプレイヤーなら却って親近感が抱けそうな舞台。マヨナカテレビという八十稲羽市だけのオカルト的現象から始まる連続殺人事件の解決が大きな目標となっており、尚且つ田舎町特有の高校生活をしっかりと再現した上でストーリー展開が行われているのも特徴。 ・本編の事件解決に至るまでの大筋のストーリーは壮大だが、伏線の張り方や意外性のある見せ方がとても巧妙。『最初は犯人の正体や手口が分からない』『犯人はこの街に住んでいる』という王道的なミステリー展開で、徐々に物語の真相が明らかになっていく展開には強く惹き込まれた。真犯人を含め街の人々は気の良い方々が多く、プレイヤーを良い意味で悩ませてくれる。 ・プレイヤーは高校2年生の間の1年間を八十稲羽市で過ごすが、単なるつまらない日常生活だけで一日が終わる事はほぼ皆無。プレイヤーが行うべきノルマやイベント数は圧巻の一言。全体から見るとダンジョンに潜っている日数は短く、プレイヤーはストーリーを追ったりコミュニティを築き上げるなどの日常パートが大半を占めるものの、イベントシーンの多さから飽きが来ない作りになっている。これは主にペルソナ3から始まったゲームスタイルだが、本作ではさらに日常生活パートで行える事が強化されている為に行動選択の余地もさらに広い。 ・タロットカードの大アルカナをモチーフに形成された、約20人ほどのコミュニティ関係者達。コミュを築く相手はパーティメンバーである自称特別捜査隊の高校生の仲間達のみならず、老若男女問わず街に住む方々が主人公と関わっていきサブストーリーが進んでいく。完璧なハッピーエンドになるものばかりではないが、前向きに人生と向き合っていくトゥルーエンド展開で締められるものが多く、本作の大きな魅力の一つとして昇華されていると感じた。個人的には花村陽介や巽完二や足立透といった、男同士の関係性として共感出来るイベントが多いキャラに対して強く好感を持てた。 《ダンジョン攻略パート全体について》 ・ダンジョンのコンセプトの独自性が高い。具体的な内容を書いてしまうとストーリー展開のネタバレになるので避けますが、それぞれのダンジョンを形成してしまった人物の内なる心象世界が大きく影響されており、初見のインパクトだけでなくゲーム世界への深みが齎されている。普通のRPGでは有り得ないコンセプトのダンジョンも多く、ネタ重視のものから幻想的なものまで幅広い。 ・アトラス製RPGではお馴染みの、弱点属性を突いて戦闘を有利に進めるバトルシステム。敵の行動パターンはそこそこ優秀で、特にボス戦ではプレイヤー側のペルソナの弱点属性に隙があればしっかり狙ってきたり、バフ・デバフを徹底するなど序盤から硬派なゲームバランス。パーティメンバーの優劣がそこまで大きくなく主人公のペルソナ合体次第で戦略の融通が結講利く事もあり、ボス戦に挑む際の前準備そのものさえも楽しい。 ・本作のペルソナ4ゴールデンは完全版に当たるためゲームバランスが不安定になる仕様変更はなく、難易度調整が上手くいっていると感じた(※後に販売されたペルソナ5の完全版は強すぎるペルソナが序盤から悪魔合体の結果で強制的に組み込まれるなど、ゲームバランス的な問題点があった)。新しく追加されたスキルカードなど自由度が高過ぎるシステムも、取得に手間やコストが大きくかかるようにするなどやり込み要素や初心者救済措置の範疇に収まっている印象。 《その他について》 ・音楽の優秀さには定評のあるシリーズだが、本作もお洒落かつノリの良いBGMが勢揃い。ペルソナシリーズといえばボーカル付きのお洒落な戦闘BGMがよく引き合いに出されますが、個人的にはそれに加えてイベントシーンやダンジョンなどの、場面ごとにしっかり合わせた曲が特に印象深かった。 ・オマケ要素のマヨナカ横断ミラクルクイズや、江戸川先生のユング心理学講座もよく出来ている。特にユング心理学講座は詳細を端折りすぎている部分もあるが、初心者向けに上手く纏めてある内容であった。そこまで長くはないが、これを見ておけばペルソナシリーズの世界観と、実際の深層心理学との関係性も理解できるようになるかと思われる。 |
ヤバイ、これはヤバイ…色んな意味で… |
《日常生活パート全体について》 ・本編の連続殺人事件の大筋のプロットやコミュのサブシナリオなどは完成度が高いと思う一方、日常パートの学校生活で行われるイベントにおいて、かなり有り得ない学校生活の行事や能天気過ぎる展開が幾つかある…。ジャンルがジュブナイルなのでこのくらいはっちゃける必要もあると感じる一方で、ほんの数日前or数日後に凄惨な戦いや物語の急展開が発生する事もあるので、日常生活パートの天井知らずに明るい展開に付いていけない事も。 ・一部の登場人物達の場所や、イベント発生の有無が分かり辛い。出現する場所は曜日固定である程度決まっているものの、全ての行動パターンを理解するには時間を要する。慣れないうちは全てのエリアを端から端まで毎日巡って探す必要があるなど、とにかく手間が掛かってしまう。せめて全体マップ上で誰のイベントが発生してるか一目で判るようにするなど、ゲーム側からも何かしらの工夫が欲しかったところ。 《ダンジョン攻略パート全体について》 ・ダンジョン攻略の面白さはやや微妙。階層によってランダム生成フロアと固定マップのフロアに分けられており、固定マップのフロアでは特殊なギミックもあってまだ面白い所もあるが、ランダム生成フロアは宝箱と敵がランダムで配置されているだけで慣れてくると経験値の高い敵以外を避けて階段を上り続けるのが最適解になるので、攻略の工夫に乏しい。 ・序盤がキツく中盤からはヌルくなってくるゲームバランス。敵の弱点属性が序盤からしっかりバラけているので使えるスキルが限られている序盤は難しく、特に最序盤は戦闘時にSPゲージを回復できるSP回復アイテムやSP回復手段が使い難いシステムになっているのも辛い。中盤に入る辺りからはコミュの進展やスキルが充実するのでプレイヤーもかなり強くなるが、その一方で敵はステータスの数値が上がっているだけで行動パターンは序盤と大差ないものが多く、難易度的にもややヌルい。 |
真実を追求しながら感想。 |
自分が直前にプレイしていたのが続編の超大作であるペルソナ5であったのでペルソナ4は見劣りする事にならないか危惧していたが、本作は本作で独自の魅力が多く順当に楽しめた。ただ単に悪者を見付けて倒すという目的だけではなく、各々のキャラクターが自らの内心にある影の存在を受容し成長していくという目的も強調されており、ペルソナ4のこのストーリーコンセプトは個人的にもかなり共感できる点。プレイヤーを置いてけぼりにする超展開もあるものの、ペルソナ4はかなり前向きに物語が進んでいくので気分良くゲームを進められるのは本作ならではの長所かと。 プレイ時間の大半は日常生活パートで占められているが、高校生らしく勉学や部活やバイトに勤しみ、様々な場所で出会った人物達とコミュニティを築き上げ、時には中間テストやダンジョン攻略に向けて前準備をするなどなど……。高校生活を体験するアドベンチャーゲーム的なテイストだが、テキスト量やイベント数が豊富に用意されているので常に新鮮な体験が続く。イベント重視のゲームなので、クリア後でも語る内容には事欠かさないほど濃いストーリーになっている。 本作が発売されて以降、ATLAS社がメディア展開などで使うIPといえば女神転生シリーズ系統から打って変わってペルソナ4の方にシフトされ、ペルソナ5で盤石の体制が完成された印象。今からプレイすると快適性などで古臭さを感じる事もあるが、ATLAS製ゲームの中でも万人向けのシナリオなため、ATLASゲー初心者にもオススメ出来る部類。 |
掲載日:2024年7月2日
シリーズ別一覧:真・女神転生
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