ブレイブリーセカンド
メーカー:スクウェア・エニックス
開発:シリコンスタジオ
機種:ニンテンドー3DS
発売年月日:2015年4月23日
価格:6458円
ジャンル:RPG


執筆: アルツ社長  

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
8 6 7 5 6 7 2 51
プレイ時間…15〜20時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
良かですたい!
<システム部分>
・とにかくユーザフレンドリーで遊びやすい。ジョブの組み合わせを複数セーブできたり、フィールドでのエンカウント率や難易度そのものを大胆に調整できたり、プレイヤーにシステム面でストレスを与えないよう、色々配慮されているのは伝わってくる。

・イベントにおいても戦闘においても、テンポの良さがウリと言える。速度調整やセリフの自動送りも可能だし、セーブやロードのストレスもほぼ皆無。この辺りは非常に良好。

・デフォルト(ターンの貯金)とブレイブ(ターン前借り)のバランスや必然性に関しては前作よりもバランスが向上したと思う。敵の動きなどもその辺りの戦略性を増す方向で変化してるのは良し。

<演出部分>
・グラフィックは前作同様デフォルメの効いた丸っこいテイストだが、出来自体は良好。フィールドの描き込みも繊細かつ丁寧で、3D立体視の効きも効果的だと思える。背景の作りなんかは「単純に綺麗」路線でなく絵として幻想的な味があり、綺麗で暖か味があるのが良い。

・キャラ自体はちんまいが、意外と動きは多彩で非常に滑らかに動く。

<サウンド>
・薄くてインパクトの無い新BGMだが、作りが悪い訳ではない、とは思う。
ダメですばい。
<シナリオ&テキスト部分>
シナリオのメリハリの無さが致命的。終始キャンプや遠足でもしてるかのような緊張感の無さ。下にズラズラと並べた多数の欠点込みで、近年のシリーズ物のRPGとしてはサイアクに近い出来とすら言えそうな。基本的にはわしはシュールなネタとか好きで堪らん部類の人間だと思うから、やるんならもっと徹底的に笑えるとか呆れるほどの抜けっぷりとか期待したいんだが、ただ内輪のネタの披露会(≒驚く程に対象層が限定されたネタ置き場)みたいになってるのがションボリ要素。こんなの、ブレイブリーデフォルトでやる必要性が無い。公式で安っぽい二次創作でもしてるかのような内容でまさに誰得。その意味ではしっかりブレイブリー『セカンド(≒二次創作)』ではあるけどな。

シナリオ&テキストの方向性が妙に『オタク向け』(というかネット廃人に媚びたような…)寄りの調整に。最初から相思相愛で無理に詰め込まれた感のある恋愛ネタ(必然性の無いキャラまで無理やりカップリングされてるオマケ付き)、シリアスさも全て吹っ飛ぶボス戦直前のグルメリポートの連続、やたら多用されるネットスラングの類でことごとく雰囲気ぶち壊し。「がんばリベンジ」や「アニエス様助け隊」等の開発者側が意図的に流行らせようとした物が皆滑ってるのも痛い要素。これらウケると思ってやってんのかねぇ?ここまで寒いテキストってのは久しぶりな気はする。「あー、もういいわ」って読み飛ばしたくなるテキスト・会話シーンってのも珍しい…。

・敵味方共にあくまでネタやウケ狙いありきであり、場面ごとの人物の心情の描写が常に場当たり的で感情移入を阻害しまくる。そのクセ、もっと説明が欲しい場面では描写をケチる。完全に力の入れどころを間違ってるとしか思えない。

・主人公ユウの存在感が薄い。多くの場面では前作のパーティメンバーの二人(イデアとティズ)に美味しい所は持って行かれている。また、名門出身で頭脳派の優等生って部分はまるで活きておらず、頼りの知識面においても前作主人公ティズに全部持ってかれてる印象。主人公がまさかの『前作主人公のファン』止まり。『マジメで純朴』ってキャラがそもそもティズと完璧に被ってるし…。これなら前作から主人公続投でも何ら支障は無かったと思う(必然性のあるロクな描写が無い以上、主人公復帰までは他キャラで繋げば済むように感じた)。

・わし込みで前作遊んだ人間は矛盾だらけで「え?そんな設定じゃなかったでしょ?」なるツッコミのオンパレード、前作未経験者は恐らく「何が何だかさっぱり分からん」必至の説明の足りなさ。どういう層を狙ってるのか、さっぱり意味不明。話を前作からの続き物にするなら違和感の無い程度に整合性の部分にも気を遣っていただかんと困る。

・ユウ関連で言えば序盤の三銃士ネタがあまりにも早期に終わってしまい、せっかくのキャラ設定が活きておらず、結果として人物に思い入れも無いためシナリオの描写から置いてけぼりにされる感が酷かった。「その辺のネタは体験版に収録されてる」とのことだが、体験版前提ってのも変な話だと思うがなあ。

・サブシナリオは「どうしてファンタジーのゲームにこんなに現実要素を持ち込むのか?」と思わずにいられないメイン側以上の雰囲気ぶち壊しシナリオ。また、2択で必ずどちらかを殺す羽目になるが、どちらを選んでも恐ろしく後味が悪い。もうちょい何とかならなかったのか。

<演出部分>
・サウンドは前作からかなり退化した印象。今作からの新曲は正直、殆ど記憶に残らない印象の薄さ。エレキギターチックな曲の作りがファンタージー風の世界にマッチしてるとは言い難い気も。

・深夜アニメでも強く意識したのか、章ごとにボーカル入りのOPテーマが流れるが…テンポは悪くなるしビミョーに合ってないし、蛇足の一言で片付く出来。果たしてあれっていれる必要ありますか?(笑

<バランス部分>
・レベルを上げるのに必要な経験値は貯まりやすいが、ジョブを上げるJPが貯まらんせいでジョブ育成が物凄くめんどくさい。

<システム部分>
・基本無料系アプリでいうスタミナ要素とか、別途料金が発生する法外なチート要素だとか、家庭用ゲームにムリヤリにアプリ系の作法を持ち込もうという開発側の姿勢はいささか疑問。そこはちゃんとユーザの声聞けよ。大半のユーザは望んでないと思うけど!
感想ですけん。
 ゲームとしての作りは少々行き過ぎた親切さすら感じたりもするが、基本的には快適&ユーザに優しい作りであり、その点は順当に前作の流れを汲んでいる。一方、シナリオ&テキスト部分の「誰を狙ってんのか理解しかねるテイスト」・「世界観ぶち壊しの品の無さ」・「前作からの設定の自己否定」もろもろ、よくもまぁここまでぶち壊しに出来たな…と逆に感心してしまうような内容

 繰り返しになるが、システム部分の出来はそれなりのレベルは維持できてるんで、クドくてセンスゼロ(そして随所で世界観も雰囲気も破壊する強烈なオマケ付き)のテキスト部分を我慢できるなら、RPGとしては中の上くらいの出来はあるとは思う。わしって個人的にはたぶん日本の平均的なユーザよりは『シナリオの不出来さには寛容な人間』だと思うんで、ゲームとして遊べるなら案外『そこそこ』と評価してしまう部分はあるんだが、ここまで嫌になったゲームってなかなか思い当たらんな…。

 ただやっぱり、RPGにおけるシステム・シナリオの両輪の内の片方:シナリオが全くプラスに機能せず壊滅してるデメリットはやっぱ小さくないかなあ。せっかく前作で(FF→光の4戦士系の流れは汲むとは言え)完全新作としてインパクトを残したのに、早くも2作目で大崩れって言う点が、印象的にはすこぶるよろしくなく、そして勿体無い。

 やたらと特定層のユーザに媚びる姿勢も引っかかる。製作側はどっか勘違いしてんじゃねぇか?『ユーザの声に耳を傾ける』と『声の大きい一握りのユーザだけに媚びまくる』って似てるようで全く違うと思うんだがなァ…。明らかにアサッテの方向に吹っ飛んでったよーな?

 色々とゲーム外でのマイナス面での話題も多い問題作とは言えるか(苦笑)。これのどこが『10人中10人に楽しんでもらえる自信があります』(発売前のスタッフ談)なんだか…。もうサッパリ分からんですなぁ。これ、『3』とか出たら大幅に売上落とすとは思う。最近の和ゲーってこういうユーザを敵に回す背信行為が多過ぎる。そりゃ廃れるよ、ゲーム。

掲載日:2015年11月23日
更新日:2016年5月2日


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