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ペーパーマリオ スーパーシール
メーカー:任天堂
開発:インテリジェントシステムズ
機種:ニンテンドー3DS
発売年月日:2012年12月6日
価格:4800円
ジャンル:アクションRPG


執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
7 7 4 4 3 6 3 44
プレイ時間…25〜30時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
イーヤッフー!ハハー!(よかばい)
・とにかく紙である事を活かした数々の演出はコミカルだし凝ってて手間かけてるねぇと思えるし、見た目的にも楽しい感じではある(実際に楽しいかは別として)。

・全てが紙の質感なのに明らかに浮いている“モノ”(ヤカンとかトランペットとか扇風機とか)は良い意味でシュール。説明書きのテキストもわずかにシリーズ特有のテイストが(辛うじて、程度だが)残っていて楽しめる。

・BGMに関してはフィールドも戦闘の曲もこれまでのシリーズから趣は変わったが出来は良い。ジャズの要素を取り入れたオシャレな曲が多いように感じられた。
マンマミーア…(イカンぞな)
<ゲームバランス部分(戦闘)>
・戦闘で必ず消費するシールが消耗品である上に、戦闘で得られる報酬がどうでもいいコインのみ。たまに店で買えるようなシールも落とすが「戦闘で使う枚数>>戦闘後ドロップする枚数」なので、戦闘重ねる分だけ手持ちシールが減って結局後が辛くなる。結果、戦闘は極力避けてボスまでシールを温存するのがベストな戦略…って結論に落ち着く仕様は納得がいかない。経験値も廃してレベル自体取っ払って仲間キャラも廃止して、ひたすらシールである事のみを追求した方向性そのものは斬新だとは思うが、その代償として戦闘がタダの障害物としか感じられなくなってしまったのが悲しい。逆に、ここまでシステムを刷新しておきながら何故メリットが無いターン制の戦闘を残したのかとスタッフに問いたい。徹底してRPGの要素を否定してるなら戦闘ごと無くしてしまえば良かったのに。

・ボスクラスの敵との戦闘において、初見殺し的な要素が多過ぎるのがイラつく。特定の種類のシールが無いとまず勝てない仕様(HPが異常に多いので粘って戦ってもシール切れになって手詰まりになる)であり、しかもそれに関するヒントは全く無しでまさかの放置。戦略性どうこうでなくて完全に『特定のシールを所持してるか否か』に依存してるのはバランス的におかしいと思う。

・パーティが完全にマリオ一人。マリオRPGでは3人、ペーパーマリオシリーズ各作品ではマリオ+もう一人が伝統だったが、今回遂にそれより減ってしまった。どうも展開が単調になりがち。マリオが動けないと何ターンもハメられるだけで回避策が無いのも問題かと。一人でも面白けりゃ全然かまわないんだけど、遊んでるとしょっちゅう「あー仲間居なくて寂しい〜…」なんて感じられちゃう作りはどう考えても駄目でしょ。

・戦闘の難易度は結構高め(気を抜いてガード失敗したりすると状態異常でハメ殺されたりする)。アクションコマンドは説明らしい説明も無く(看板に一言書いてるだけ!!)、一切放置ってのは任天堂らしからぬ不親切さ。ジャンプなんかは割と感覚で何とかなるのだが、各種ハンマーはタイミングが取りづらく、最初はマトモにダメージが与えられず非常に困った。マリオの能力をカスタマイズできるバッチ等の要素は完全廃止。あれこれ試せてプレイヤーごとに個性も出て面白いシリーズ特有の要素だったのになんで消した?

<ゲームバランス部分(フィールド・謎解き)>
・一方で謎解きなんかはヌルくてまるで歯ごたえが無い(後述のケースは除いて、だが)。ただ、ステージ内で必要なシールがそのステージ内に無い事が多く、それを取りにあちこちに戻る“お使い作業”が必要で鬱陶しい。難易度に関して言えば、お子様&ライトユーザー向けに緩くしてんのかなーと思いきや戦闘なんかは存外に難しい所もあり、やはりかなりアンバランスなチューニングになってると言わざるを得ない。

・イベント。露骨なお使いイベントが多過ぎてホントに嫌になる。テキスト部分に魅力が無いだけに、ホント単調なフラグ立ての作業に陥りがちで、またしても「どうしてこうした?」とまた問いたくなる作り。また、大半の“モノ”はステージをただクリアするだけでは手に入らず、シラミ潰しに探した上で手に入るので、イベントが起きた時点でまだ入手もしてない場合もあり、そう言った事態に出くわした場合、これまでに手に入れた手持ちのアイテムを試行錯誤してもどうにもならず、途方に暮れる場面も。イベントに必要なアイテムがどこのステージに隠されているかも一切ヒントが無く、詰まった場合、これまでにクリアしたステージを延々と再度シラミ潰し作業で探し回る羽目になる。…なんなのこの嫌がらせは!?『ドラクエ7』の足りない石版探しよりもずっとカッタルイよこれ!!

<快適性部分>
・シール化する際のアクションやデモが微妙に長くテンポが悪い。頻繁に使用するアクションだけに、もうちょいスイスイ進んで欲しいと思った。

・戦闘はアルバムの中に持ってるシールを剥がして使う、というスタイルなのだが、アナログな感覚過ぎて使いづらい。ベラーーーっとページに広がったシールを探すのが実に面倒。何を何枚持ってるとか分かりにくいいのも問題。一応、整理機能があり、使うと種類ごとにソートしてくれるのだが、自動ではソートされないのもまた面倒臭い。

<演出部分>
・物語&テキストの大胆なカット、レベル・経験値・仲間・バッチでの能力カスタムの廃止、キャラは新規キャラは無しで既存キャラ縛りで無個性なキノピオばっか。どうも『社長が訊く』を読む限り、宮本茂氏の「マリオに物語要らない」、「マリオに新キャラ要らない」、「RPGでなくてよい」が今作の方向性を決めているようなのだが、それがプラスに働いてるように思えないだな。それらが少しでもうまく機能してるならまだ見所もあると思うけど、『今回の新要素<<廃止された要素』なんで説得力が無い。今回のミヤホンちゃぶ台返しは失敗、言い方は悪いけども「今までの物を完全否定した挙句、一から作り直した完成品がこの程度?そもそも着眼点自体がずれてんじゃないの?」って言いたい。
イッツミーザ、感想。
 『ペーパーマリオ』シリーズの3DS版だが、RPG要素はかなり省かれた作りになっている。「ペーパーマリオに物語は不要」、「マリオシリーズで新たなオリジナルキャラは要らない」なる任天堂の重鎮・ミヤホン氏(宮本茂氏)の過激な方針で、前作までのスタッフをバッサリと粛清して(←コラ)制作された作品。

 個人的には3DS発表時の映像から楽しみにしてたのだが、いざ遊んでみると…、見た目はホントに色々仕掛けが施されていて『飛び出す絵本』チックな感じではあるのだが、ゲームとしてはこれまでのシリーズの魅力だったシナリオの意外な黒さとか戦闘の戦略性が見事に切り捨てられてしまっていて、肩透かしもいいとこだったりする。
 シナリオや戦闘で必須である特定の“モノ”を探しに行くシラミ潰しの“作業”は選択肢の幅が広まる後半へ進むほど酷くなり、「あれ…、あのシールどっから取りに行くんだっけ」とか「またアレが必要なんだが取りに行くのメンドクセー!!」とか言う事態が頻発する。システム面でも戦闘をこなすメリットがまったく無く、シールは消費するわダメージはかさむわであり、そもそも戦闘自体も面白くなくて、純粋に邪魔要素にしかなってない。ここまで徹底してRPG要素を否定してんのに、何故その部分は頑なにRPG風戦闘を残したのか理解に苦しむ。結局のところあれこれと肉を削ぎ落としたのは良いが、新たに加えた装飾部分が削ぎ落とす前の要素よりも劣った内容でしかないため、ゲームとしての魅力はガタ落ちである。一発ネタ的な見た目のインパクトと引き替えに失った物はあまりに大きい…。

 任天堂HPのインタビュー記事『社長が訊く』内では前作が結構ウケたとか書いてあったんだが、アンケートに答えるのは基本的にクリアした人・やり込んだ人が多いだろうから、そこからだけ意見を拾っていくってのは結構危険な方向性なんじゃないかなーと思ってしまうんですが、どーなんでしょ?これまでと同じ良いところをわざわざ褒める人が多いとも思えんしな。
 新しい物を作ろうと言う意欲はまあ素晴らしいと思うんだけど、良かった部分をごっそり捨ててまで取り入れるのが紙としての見た目を活かした演出止まりってのは果たしてどうなの?ペーパーマリオってそもそもマリオRPGの続編ってとこからスタートしてるんだから、個人的には「もっとしっかりRPGで良い」と思うんですがねー。アクションのマリオは本流シリーズが、他のジャンルにしても多数のマリオ派生作品がしっかり担当してるわけで。ミヤホン氏が直接監修してない「マリオ&ルイージRPG」シリーズが割と大らかにはっちゃけた作りで独自に進化しているのと比べると、こちらの「ペーパーマリオ」はミヤホン氏監修である事が完全に足を引っ張ってる感じ。経歴から言っても氏はRPGを作るのは苦手っぽい(と言うか作れない)から、本職・自前の作品の監修に徹して、外部制作シリーズまではあんまり口出ししない方がよろしいんじゃないでしょーか?

 新たな挑戦をするにしても「これまでの楽しさ+新たな楽しさ」と言う風にすればここまでズッコケる事もなかっただろうになあと思わずにはいられず。過去作が叩かれたわけじゃないのに、なんでこうもコロコロと毎回路線変えちゃうかねぇ。必ずしも「過去作を否定した新しさ」とかがプラスに作用するわけじゃないと思わされる作品。こういうゲームに出くわすと、どうしても斬新さよりも無難に出来た続編が懐かしく思えてしまう。

 ニンテンドー3DS発売当初から楽しみにしていただけに残念の一言。任天堂HPのインタビュー記事「社長が訊く」によれば、最初は折角ゲームキューブ版の路線で作ってたのに宮本氏の「ただの移植やん。駄目。やり直し」の一言で方針転換されてしまったとの事。まったくミヤホン氏もさー。強権発動でダメ出しするんなら、ちゃんと面白い内容に仕上がるまでとことん付き合う責任があったと思うし、口出しだけしてつまんないまんま発売しちゃうとか、開発者のトップとして無責任もイイトコでは?不遜な言い方になるが、元からテキスト・シナリオ・イベントを軽視する傾向の強かったミヤホン氏はRPG作りが向いてる開発者と思えんだけに、マリオRPGの後釜シリーズとして始まったペーパーマリオのプロデューサーには不向きだったと思う(ミヤホン氏の出した要求がことごとくマイナスにしかなってないんで、同じマリオのRPG枠の『マリルイRPG』みたいに下請けメーカに割と自由に作らせた方が面白いモノになったのでは、って意味でな)。世の中、変わらない方が良かった事だって絶対あると思うけどねーー。
 発売前の期待度からの落差・ガッカリ度合いって意味では、近年の任天堂作品の中ではワーストクラスだったかも。『どうぶつの森amiiboフェスティバル』みたいなより酷い内容のゲームもあるにはあるが、アレは発売からかなり経って散々世間様でウンコって言われてんの分かった上でワゴンセールで買ったのでネ。発売日に新品で買ってガッカリ…って意味ではこっちの方が断然ダメージが大きかったな、と(苦笑)。

掲載日:2013年1月28日
更新日:2025年6月17日


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