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ファイアーエムブレムエンゲージ
メーカー:任天堂
開発:インテリジェントシステムズ
機種:ニンテンドースイッチ
発売年月日:2023年1月20日
価格:7678円
ジャンル:シミュレーションRPG
広告(良かったら買ってくれぃ) |
通常版 |
映像 | 音楽 | 快適性 &操作感 |
独自性 | 難易度・ バランス |
ボリューム | シナリオ | 総合評価 |
6 | 7 | 6 | 6 | 6 | 8 | 4 | 63 |
陛下!素晴らしいですぞ! |
《ゲームバランス部分》 ・「育成が非常に楽しい」系の作りで、チマチマと稼いでいって少しずつユニットを鍛えていくのが楽しい作り。クラスチェンジは選択肢が多く、プレイヤーの好み・工夫次第で同じユニットを使っていてもかなり違いが出て来そうな所は面白いと思う。 ・コーエーがプログラムまで担当していた前作『風花雪月』よりも敵AIの思考だとかS-RPGとしてのシステムの練り込み具合に関しては順当にファイアーエムブレムっぽさは戻った感じでありシミュレーション部分の出来は上がっているかと(前作のAI思考だと順繰りに敵を動かし、攻撃可能と判断したら比較を行わずに即行動に移ってた感じだが、本作はちゃんと複数のユニットで行動の結果を比較して動いてる雰囲気はある)。 ・『Echoes』→『風花雪月』と、ファミコン版の『外伝』をベースにした作品が続いて、マップの地形とかもただっ広い形状のものが多かった印象だが、本作はマップも結構凝った作りで密度が上がった印象。ユルいだけじゃなくて、程よく陰険な敵の配置も増えた感があり、考えられたバランスになってるようにか案じる。 ・難易度は幅広く選択できてチュートリアルもしっかりしている。待った機能も搭載していてターンを遡って戻す事も可能なんで、シリーズ未経験の人から熟練のプレイヤーまで楽しめるバランスになってるかと。 《演出部分》 ・↓の通り、デザインはどーもキラキラし過ぎててFEっぽくないように感じて好きではないのだが、グラフィックのレベルって観点では前作の『風花雪月』よりもかなり向上しているように感じる(前作は作ってるトコの関係か、『無双』みたいな動き・モデリングの安っぽさがあった。実際無双化されたし…)。戦闘の動きとかも生き生きしているし、表情の変化とかも滑らか。この部分はかなり力がこもった出来とは思う。 |
敵襲!そんなんじゃ死にますぞ! |
《シナリオ・テキスト部分》 ・ストーリー展開は非常に安っぽくご都合主義的な展開が続出する。展開が陳腐で『if』とか思わせる薄さが気になる。実際にそれらのシナリオを担当してて、裏アカで愚痴だの暴言だの吐いて酷く炎上した開発者K氏が担当って事で納得ではあるが…なんでそんな人を、よりにもよってサブじゃなくてメイン級に抜擢しちゃうかなァ!?カンベンしてよイズ社サン&任天堂ぉぉ。まぁ一開発者の人格がどうであろうとアウトプットさえしっかりしてりゃ末端の客としてはどーでもいい話なのだが、その肝心のアウトプットが微妙ゆえに文句を言いたくなるワケで…。どうしても本作のライターでゴリ押しするなら、次から偽名で載せろとは思う。 ・今回はマイユニットじゃないんだが、やっぱり主人公がやたらと崇められる描写は多い。ソレに至るまでの描写がないまま「神竜様!神竜様!」って崇められるのって、どうも違和感が強いのよね…。この手のプレイヤーキャラヨイショってJ-RPGだと割と見られる傾向だと思うが、わざわざ取り入れる必要ってあるかな、こういうの?客を接待するんならあくまで完成度・ボリュームで接待してくれ。必要な描写抜きでのチヤホヤは薄っぺらいし世界観ブチ壊しで共感もクソも無いんで、できればやめて欲しい。 ・本作のキャラと紋章士(過去作キャラ)で発生する会話は、組み合わせが多い弊害か、それぞれが一言発するのみで内容が非常に薄い(Wii『暁の女神』の支援会話に近い)。 《ゲームバランス部分》 ・相手の持っているスキルが重要って意味では、近年のFE同様、ちびちびと敵1人ずつウインドウを開いての確認が重要であり、数字だけで判断できない面倒くささはある。「システムが奥深い」とも「分かりにくくて回りくどい」とも言えるワケであり、この辺は良し悪しとは思うが…(個人的には暗黒竜〜紋章とかGBA3作みたいに数字の大小だけでしっかりバランスが成り立ってるFEの方が好みではある)。 ・アプリ版(ヒーローズ)を除くと、シリーズワーストクラスにユニットの移動力が低い。歩兵だとアーマーでなくても4マス(初代FEでは5〜7マス)、馬に乗ってても6マス(同じく8〜10マス動けた)しか動けないとかザラ。視認性が悪化するのを避けるためにカメラをマップからあまり引いた視点にしたくない…とかが絡んでるんだとは思う。…が、本作はユニットを担いで移動させたりできないため、余計にただ移動させるだけのターンが増えてテンポも悪くなった感がある。結局はグラの見栄えで快適性とかバランスが犠牲になってるように思えて複雑なキブン…。 ・システム的にもベースになっているのは『覚醒』や『if』だと思うのだが、「レベルを上げるだけではスキル継承できず、別途習得に使うSPを貯める必要があり、しかもその要求ポイントが異様に多い」(2000P=20LVUP分、つまりレベル1のキャラがMAXに上がるくらいのSP量が必要とか、あまりに渋チンすぎる。数値設定おかしくないか?)とか「装着可能なスキル枠が2つしかなく、カスタマイズの自由度が過去作よりかなり低い」(覚醒やifは4〜5コ装着できた)とかは気になる。 ・ジミながら個人的には非常に不満に感じたのが遭遇戦の仕様。『覚醒』や『if』は周囲の章に合わせた強さなのに、本作ではメインの章の進み具合に関係なしに自軍の平均レベルより+2〜3程度をキープしつつ敵が際限なく強くなっていく。また、開始直後から自軍より高レベルで高威力武器装備のザコがマップ全体から一斉に全員突貫して来るため、とてもじゃないがロストせず守るのに精一杯で、弱いユニットの稼ぎなんかには使えない。そして敵のレベルがどんどん上がる一方メインシナリオは敵の強さがそのままなんで、メインシナリオ側がユルくなり過ぎ等、短所が目立つ。遭遇戦って本来は初心者やヘタクソさん救済要素なハズなのに、本作だと明らかに遭遇戦の難易度が高過ぎて気軽に稼ぎに使えない。また、リアル時間と連動してしか敵が湧かないのもそうした意図が理解しかねる縛りで意味が分からない。過去作で出来てた事が退化していて、なんだかトホホ。 ・後から加入するユニットが性能面で初期ユニットを大きく凌駕する事が多く、先に加入するユニットをどんどん使い捨てて乗り換えて運用して行くのが最適っぽい、育成を否定するようなバランスになってるっぽい(上記の通り遭遇戦の敵がやたら強くて稼ぎづらいのも効いてる感じ)。 《快適性部分》 ・デモやムービーの挿入頻度が高く、しかもそれぞれが長ったらしく、見てるだけの時間が長い(飛ばせはするが、飛ばせば当然話は分からなくなるし…)。PS1〜2時代のムービーゲーを思わせる作りではある。何もFEでムービーゲーやりたいなんて思ってナイんだがなァ…(苦笑)。 ・本作はコーエーテクモがプログラムも手掛けた前作『風花雪月』と異なりプログラム部分も歴代のFEを手掛けたイズ社が担当っぽいんで、ロードが無くてUIもサクサク動く事を期待したのだが、正直かなり微妙な出来である。フィールド←→マップの移動とか10秒クラスのロードが結構あるし、UIにしても使いづらい「-ボタン」を押さないとユニットの数値類が確認できないとか、結構イライラ要素が多いのが残念。武器の性能にしても武器自体の性能でなく、ユニットのパラメータ込みの数字しか出て来ないのも、古参エムブレマーのわしとしては返ってやりづらい。 《演出部分》 ・キャラのモデル・動きはそこそこ力が入っている一方、背景はペラっとして動きが無い一枚絵の事が多く、少々ハリボテ感はある。まぁスイッチさんの性能だとどっか力を入れたら別ンとこは当然妥協の必要はあろうが…。 ・ファイアーエムブレムでアニメチックなOP曲とかカンベンして欲しい。こんな所にカネ使わんで良いのに…。本作のキモである「エンゲージ」にしても、仮面ライダー・時空刑事(特撮モノ)とかプリキュアみたいな変身であり。見た目も動きもテキストも、よってたかってキラキラ路線に媚びを売る方針転換であり、なんか薄っぺらいよなーって思えて、またひたすらモヤモヤ…。 《スコアに反映させてないけど気になる点》 ・シリーズ中一番、ビジュアル面のデザインがキツい出来…。まぁこれは完全にわしの好みの問題だし、グラフィック自体は無双っぽくて安っぽさがあった前作(←コーエー作なんで)よりかなり向上していると思うのだが、課金アプリでよくあるような原色キラキラのアニメ路線のデザインにはどうにも拒否感が大きく、今ンとこ全然慣れないのである…(苦笑)。このキラキラテイスト、デザインの路線としてはアトラスとのコラボ作『幻影異聞録』に近いと思うが、よりにもよってそのノリを本編でやっちゃうかぁ。キツイな…(加えて、デザイナーが海賊版ソフトの使用やらでプチ炎上して更にケチが付いた感もあり)。 ・「大半の過去作がスイッチさんで遊べないのに何で過去作から大量にキャラ持って来てんの?」って思ってたが、インタビューを見た感じ、課金アプリ側(ヒーローズ)への誘導を狙った物であるくさい…。これじゃあ番宣全開の民放のバラエティ番組みたいな感じである。てか、個人的にはこの手のオールスター物って世界観が安っぽくなるんで好みではないし、わざわざコンセプトが丸かぶりの物を複数並行して展開する必要性も感じられない。できれば過去作に頼らずに作中でしっかり盛り上げて欲しいところだが。イズ社サン、10年に1回はこの手の『第1作主人公でスマブラとかにも出て知名度のあるマルス様神格化』とかやりたがるんだが、悪癖だよなァ。オールスター物とかアプリ側(ヒーローズ)でやっとるワケだし、ゲーム本編である本作は、しっかり重厚な物を遊びたかった…。 ・過去作の主人公を登場させているのだが、人選とか使用武器は疑問符が付く。『外伝』ならセリカよりもアルムを出すべきと思うし、『聖戦』ならダブル主人公である息子側のセリスだって出すべきだった。『烈火の剣』からはリンが登場しているが、主人公はエリウッドだったハズで、メインシナリオ上では脇役のリンを出すなら、リン・エリウッド・ヘクトルの3名まとめてでも良かった気が。武器が偏るとか男ばかりになるとかゲームの都合上の理由はあると思うけど、過去作からキャラを持って来るならヘンに妥協したり改変したりして欲しくないな、と。この辺はまんま『覚醒』の時の欠点を引きずっちゃってますね。ハンパな過去作からの抜粋止まりになるくらいなら、過去のFE作品じゃなくて本作の英雄とか(各王家のご先祖様や配下の凄腕の戦士ら)でも出した方が、世界観の構築やシナリオ描写面でもプラスになったのでは。 |
感想ですぞ。 |
ニンテンドースイッチでは2作目になるファイアーエムブレムの本編作品。全体としては事前の宣伝で感じた印象(→『Echoes』や『風花雪月』よりも『覚醒』・『if』に回帰してんのかな、なる)に沿った感じの作りかなーって感じではある。どちらかと言えばシステム・ゲーム性を重視した作風か。 まぁゲーム部分の出来自体はそれなりに堅実だと思うし、シミュレーション部分の作りも前作『風花雪月』よりも深い物に仕上がってるように思えるのだが、個人的にはあまりに萌えアニメとかアプリ方面に寄せた原色全開のキラキラデザインのキャラと、過去に大炎上した開発者が復帰して手掛けた薄っぺらいテキスト部分への拒否反応が強い感じでモヤモヤしてしまう。外注作品だった前作『風花雪月』の方が明らかに重厚な作りだったのがナントモ複雑な気分ではある(風花雪月もキャラデザインはFEっぽくねーって思ったタチではあるが…)。見づらく無駄に階層化されたUIだとか妙に長いロード時間とか、従来FEで出来てた部分も劣化が見られるなど、どうも多方面で疑問符が浮かぶような作りでまたモヤモヤ…。 ネット上のヨソ様の評判を見てると「戦闘"は"出来が良い」って声が多いと感じるが、個人的には正直戦闘・バランスも微妙と感じたり。相対的に見りゃテキスト部分よりはマシとは思うが、それにしたって昔の作品で出来てた事が退化してたり、気になる部分がかなり多いかなーという印象だったり。 まぁファイアーエムブレムシリーズって数作毎に絵柄とかシステム部分とかめっちゃ変わるシリーズではあるけども…。本作の場合、あまりにも軽薄なデザイン・陳腐なノリのテキスト部分がわしとしては遊んでて色々キツい…。ゲーム部分そのものはそれなりにしっかり出来てると思うんだけど、モヤモヤ感も非常に強く感じる。ここまで「んー、きっつーなァ」って拒否感出たの、わしとしてはシリーズで初めてカモ…。遊んでたら慣れるかね…コレ?100時間以上遊んで駄目だからもうアウトな気もするが…。 総じて「色々と残念な出来と言わざるをえない」って感じではある。見た目やノリは発売前の予想通りわしは拒否反応が出るデザインで、加えて、UI・快適性・バランス部分も期待した程の完成度ではない…って感じで物足りなさがある。久しぶりの自前の家庭用のFE本編だったんだし、もうちょっと頑張って欲しかった。FE本編でここまで「さあ頑張って遊ぼう!」って自分を奮い立たせて挑まんとモチベーションが保てない作品って初めてだったなー。正直、残念としか言い様がナイ…。 |
掲載日:2023年1月24日
更新日:2024年8月6日
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