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ファイアーエムブレム風花雪月
メーカー:任天堂
開発:インテリジェントシステムズ、コーエーテクモゲームス
機種:ニンテンドースイッチ
発売年月日:2019年7月25日
価格:6980円
ジャンル:シミュレーションRPG


広告(良かったら買ってくれぃ)
  

執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
6 9 6 8 8 10 9 83
プレイ時間…500〜600時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
陛下!素晴らしいですぞ!
《バランス部分》
・ゲーム側からの縛りとかは少なめで、かつヌルゲーってワケでもなく。それでいて手応えはしっかりあるって意味では良好なバランスだと思う。難易度も複数用意されておるし、プレイヤー毎に自分の腕前に合わせて遊べる懐の深さは健在

・「FEでライトノベルだの深夜アニメちっくな学園ドラマってどーなの!?」とかだいぶ否定的な見方で眺めておったんだが、遊んでみれば案外違和感無く溶け込んでおり、そんな嫌味も無い点は考えられたバランス・差配なのかなーとは思う。

学園パートでの指導による育成だとか、従来作以上に育成部分に力が入っとる感じで、(経験値の貯まりが遅いので稼ぎ作業は相当面倒だが)自由度も高い。過去作で言えばSFC『聖戦の系譜』、GBA『聖魔の光石』等でちまちまと稼ぎ作業をこなすのが好きだったわしとしては、まぁ「楽しめる作業」って言える内容だと感じる。めんどくさいのは事実だしやたら時間は掛かるんで、この辺は好みは分かれそうではあるが。

《シナリオ》
『覚醒』以降でだいぶ叩かれたシナリオ部分の軽さに関しては今回かなりテコ入れされた様子で、重くて暗くてドロドロして陰険な路線が復活して来たなって印象で好感が持てる。キャラの描写に関してもどこか単一の属性だけ設定してそれをゴリ押ししてくるような薄っぺらさが今回はだいぶ薄まった感じ。ここは素直に良かったと思う。

・ここ最近のファイアーエムブレムは、国・人物の設定だとかをゲーム内で説明してくれず、他の媒体にこっそり入れるとか、薄い上に必要以上にカネばっかかかる仕様で好感が持てん部分もあったが、今回は設定部分だとかは練られた上で作内でしっかり説明が入るのは、まぁここ数作に比べりゃ改善したし良かったと思う(全部把握し切れなくても何となくで分かってりゃ話に付いてく分には困らないって意味でも)

・前作『Echoes』で大幅に減って1個辺りの会話も単調になってた支援会話のバリエーションが『if』以前くらいまでの物量に戻ったと思える点も良かった。

《グラフィック・サウンドなど演出周り》
・前作までがゲームキューブクラスのニンテンドー3DSで、今回一気に性能UPでスイッチさん。初のHD機種って事で、キャラのモデリングはかなり底上げされたかなー、という印象ではある(もっとも、↓欄で触れてる通り、この性能のマシンで出るゲームとしてはありふれたクオリティだと思うし、別に特出したモノは感じんけどな)。

・個人的にはファイアーエムブレムでフルボイスって要らんと思うし、そもそもフルボイスってメッセージ待ちの時間が発生するから好かんのだが、本作に関しては前作Echoesでのフルボイス導入での弊害と思われる支援会話の大幅削減とかが改善されてるっぽいし、テンポが大幅に削がれるとか明らかに浮いた演技で白けるとかは見当たらんので、人物描写って部分でプラス面もあるし、個人的なスタンス自体を変えるつもりは無いが、今回のメリットって意味では一応はこれはこれでアリって認めてやってもいい(←えらそう)。メインの味方キャラのみならず、町民やら山賊の雑魚やら完全にフルボイスである。大作RPGを
名乗ってるゲームでもここまで完全に…ってのは少ないかと。まぁ半端は白けるんで、やるんならこんけはやって欲しい。

《ボリューム》
・3つの学級、それぞれで軽く100時間近く掛かる程の物量はあり。ストーリー自体が変わるって事で、物量的には相当充実しておるかと

《その他、スコアに反映してない要素》
・3DSの3作品では「FEマニアはカネ払いが良いからどんどんDLコンテンツを仕込もう!」ってばかりに細切れで大量の割高DLCが乱発されたが、今回はゼルダBOWやゼノブレイド2など、任天堂から出た大作スイッチさんゲーよろしく、DLコンテンツは一纏めになって値段もそこそこ良心的にまとめられたのは良し(別に良い部分ってワケではなく、元々こうあるべきだったと思うんで加点の対象にはせんけどな!)。
敵襲!そんなんじゃダメですぞ!
《快適性》
ファイアーエムブレムシリーズとしてはワーストクラスのロード時間の長さが×。単体で同世代のゲームに比べて著しく長いってワケでも無いのだが、初の光ディスクメディアでの発売だったゲームキューブ『蒼炎の軌跡』でほぼロードゼロだったのを思えば、この点は明らかに退化したと思う。ゲーム開始時(メニューからファイル選んだ時)や戦闘開始&終了時の待ち時間が長く、学園内をうろつくフィールドパートでは区画ごとの細かい読み込みが気になる。この点はかなり残念だったり。リセット機会がどうしても増えるFEならこの部分はもうちょっと頑張っていただきたかったなー…。

戦闘のマップにおける視認性が悪い。地形の違いやどのクラス・どのユニットなのかがまるで分からない視認性の悪さは改悪点と言えそう。パッと見で誰か分かりづらいのも困るし、地形も動ける平地だか入れない壁や岩地形なんだかがやたらと分かりづらくて、逐一カメラを引いて全体を見渡せるマップで確認する作業が必要な時点でダメなデザインだと思う。過去作でFEがこの部分を外した事は一度も無いんで、ここはコーエー側の担当だったんかな?こういう機能性・快適性直結の部分こそ、イズ社さんがちゃんと監修せにゃならんかったのでは。

・マップ同様、ユーザインタフェースもどっかモッサリ&洗練されてなくて、操作性・挙動が常時なんか微妙に重い感じなのは気になる。UIのデザインの路線はどっかペルソナとかそっち系を意識した感じでオシャレなのはよろしいが、ここはヘンに色気を出さずに、素直に快適さ重視でも良かったと思う。「グラが超絶キレイ!」とかならまだ褒める点もあるが、この部分(マップ・地形のデザイン)は正直ショボいと思うしな。「見づらいしショボい」では困る。

・戦闘は毎回カメラが近くに設定し直され、その度に自分の好みの距離に直すのが面倒(近過ぎると数マス離れた敵の行動範囲とかも確認しづらいので個人的には好かん)。カメラ位置の保存くらい出来てて欲しかったところ。

《バランス部分》
・シンプルにまとめられたようで実際は別にシンプルじゃないシステム部分は×。FEって本来はパッと見で分かる、「単純にパラメータの数字だけで計算できるダメージのやり取り」こそがキモだったと思うんだが、戦闘に於けるスキルや武器、それの使用の結果としてのバフ・デバフの効果・種類がやたらとゴチャゴチャ複雑化し、効果を確認する面倒さが増えた印象は否めず。この辺りは前々作『if』・前作『Echoes』の流れをそのまんま踏襲しちゃってる感じかね(計略の攻撃範囲が確認しづらいのも難点)。今回は付帯する騎士団が発動する計略とか、更に複雑化した感じがある。極端なハナシ、昔のFEって数字の強弱でちゃんと個々のユニットの個性付けって出来てたのに、今回はやたらと種類の増えたインチキ敵専用スキルだとか、そういう力業的なやり方ってあんま好かんかな。何より確認がめんどくさくてゲームプレイのスムーズさって観点でどうしても流れが滞るのがね…。

・初期のユニットの移動力が4しかない(アーマーとか鈍重なクラスでなくても、である)。最近のFEに多かった担いで移動みたいなシステムは無いみたいなんで(「体当たり」や「引き戻し」等の戦技で1〜2マスずらすとかはあるが、それにしても貴重な戦技の枠を食う為考えなしに複数は取り入れられない)、騎馬やペガサスで遅いユニットを前線に運んで……とかもムリ。マップ自体はそこそこ広いので、どうしても移動だけで時間を食われる=テンポが悪い印象が否めず。移動距離がやたらと短い一方、弓なんかは仕様が外伝みたいにザコでも平気で射程が+1以上されたり(→ノーマルのザコのアーチャーでも漏れなくフツーに射程3以上である…)、騎馬が平気で行動後に再移動出来たりする(→再移動システムがあった聖戦・トラキアでは下級の歩兵でも5〜6マスは動けた)のは、ちょっと移動力と噛み合ってなくてインフレさせ過ぎ。正直、クラス毎の個性付けにしてもやり過ぎ感があると申すか、バランス部分はもうちょいどうにかなったのでは、と言う印象。

・敵の仕様がやっつけくさい。見た目は豪華になっとるのに過去作以上にこの辺が妙にやっつけと申すか。ザコ敵とかよくよく見てみると、1つのマップで出てくる敵は大体みんなパラも装備もスキルも完全に一緒で配置も単調なのが残念なのよねー…。ゴチャゴチャと要素を足して複雑化する前に、もうちょい既存のシステム部分を個別に丁寧に設定してあげる事で、ザコ敵に関しても個性付けとか出来たのでは?複数の武器種が得意なユニットでも一律で1個しか武器を持ってないとか、同じカテゴリの武器しか装備しとらんとか、もうちょい色んな武器を持たせてバリエーションの幅を持たせるとか、ひと手間掛けて欲しかった。マップもやたらと流用が目立ち、同じマップを3回4回と使い回す事がやたら多いのはやや看板倒れな気も。

・クラスチェンジは下級では要求されなかった関係無さそうな要素を直系と思われる上級職でいきなり要求されるんで、初見では「えー!?」ってなる事が多いように思う。

《グラフィック・サウンドなど演出周り》
・世間様だと「グラすげー!!」とか持ち上げられてて評判が良さげだけど…そんなに良いモンかな?個人的には「んー別にそんなでも…あんまり…」である。そら確かにPS2だとかゲームキューブ程度の性能しか無い3DSの時と比較すりゃ綺麗にはなってるけども、HD機種、スイッチさんって枠で見てみりゃ、悪いけど別にそんな映像部分のレベルは高くない。元々FE製作チーム(ってかインテリジェントシステムズのゲーム全般だが)ってデフォルメ路線の絵作りは上手いんで、ハード性能に制限がある時の方がいい表現出来てる事が多いと思うのよね。本作みたいなリアル路線だと特にモーション部分がぎこちない事が多く、本作もそれに該当してる印象(初めてポリゴン化した蒼炎・暁の時もそうだった)。どうしても動きの表現がリアル的な方向性に於いては硬いのよね…。あと、戦闘での騎士団とかは今回製作に参加のコーエーの無双シリーズそのまんまの動きやモデリングの安っぽさとかは間違いなくあるし、地形ののっぺり表現ポリゴン剥き出しの描画に関しても、もうちょい頑張れたのでは?…と思える部分が多い。ハード自体の性能UPの恩恵はあったと思うけど、路線としてはあんま向いてないのかなーと(アレな言い方じゃが)。

・キャラのモーションはパッと見豪華に思えるが、実際のトコは主人公+男女それぞれ大体2〜3パターンだけなんで、同じ動きの人物だらけであり、それに気付くとちょっと白ける面も。流用だらけなのが残念。

・せっかく1ヶ所の拠点に陣取っての学園生活でカレンダーとかで時間経過・季節の描写とか活かせそうな題材だと思うのに、時間経過に伴う季節感とか見た目の上ではほぼ皆無なのが勿体無さ過ぎだし、素材を活かせてないと思う

・せっかくわざわざムービーでアニメとか挿入されとる割には、妙に表現が軽いかなーと。剣が腹に刺さったら血が流れる描写はあっても良かったと思うしな(子供でも見れるTVの時代劇だって刀が刺さったら血はちゃんと流れる演出あるでしょ)。重さの表現を端折るんなら、そもそも別にCGムービーだのアニメだのもテンポを阻害するだけなんで挿入せんでよろしい(別に今回のFEに限った話じゃないけど、ゲーム全般、そういうトコってあるよな。過剰な自主規制と申すか)。マリオやカービィ、ポケモンとかなら兎も角、FEでヘンに全年齢向けとか狙わんで良いと思う。

《シナリオ》
・割と丁寧に描かれる前半に対し、後半は全体的に飛ばし気味。もうちょい章を増やしてでも最後まで丁寧に描き切って欲しかったトコではある。
感想であ〜る。
 Wii『暁の女神』以来、久しぶりの据置機種でのファイアーエムブレム。

 今回は従来のインテリジェントシステムズは監修メインで、FE無双繋がりでコーエーテクモ主導なそうで、何となくそれっぽい要素(キャラの会話のやり取りとか無双本編に近い印象、あとクラス名が恐らくコーエー側準拠。「"マ"ージ」じゃないのよね、今回)が増えた感じではある。

 システム部分では前作の『Echoes』がたぶん一番近い。「Echoesをベースにして色々肉付けして豪華路線にしてみました!」って感じかなァ。もしくは「単純化したガンパレードマーチorペルソナ+FEの戦闘」って感じにも思えたり。発売時期や話題性を考慮するとたぶんペルソナに影響されとるよな…(苦笑)。
 ここ数作でだいぶ批判もあったシナリオ部分も相当テコ入れされた感じだし、アレコレごちゃごちゃと要素が入ってる割には、案外「まとまりが無くて遊ぶのがめんどくさい」になっとらん点は意外。スムーズに遊べるって意味では考え抜かれたデザイン・作りなのかなとは思う。

 残念なのはUIだとか操作性、もしくはマップやステータス画面などの操作性・視認性・快適性の悪さ、更にはロード時間等が過去作より悪化してしまった事。ファイアーエムブレムは携帯機でのリリースや光ディスクメディア採用など、出るハードの大きな転換期にあってもこの部分だけは最優先で死守してきただけに、今回の快適性の低い仕様はチト残念だったり(たぶん、製作にコーエーが参加してるのが響いてるよな、コレ)。
 ま、全体としては引きの強い内容で一気に数時間遊べるなど没入感もあるし、重厚長大路線の超大作として生まれ変わったFEって言えるのでは。カネは相応にかかってる感じがするし、兎に角ボリュームはあるんで、内容を楽しめるのであれば数百時間以上楽しめてコスパも良いのでは。

 従来作から多少毛色は変わった感はあるし細かい欠点も少なくは無いが、じっくり遊べる超大作系FEとして、特に、これまでファイアーエムブレムの過去作に触れてなかったプレイヤーさんに特にオススメしたい内容と言えそうですな。

掲載日:2019年8月7日
更新日:2021年10月12日


執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
8 10 7 9 7 10 9 85
プレイ時間…400時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
素晴らしい!!格別の刺激だ!!
《ゲーム全体・シナリオ等について》
・歴代のシリーズから見ても、本作ならではの新システムがかなり多い。特に目立つのが学園内での散策で、イベントやクエストをこなしたり、支援会話や技能を上げたりと、生徒達との交流や学園内での業務を通じた独自のシミュレーションパートが面白い。
『if』のマイキャッスルよりもさらに深くイベントやユニット達との交流が増すように作られていてゲームの物語や世界観に深みを増す要因としても一役買っているかと。教師ならではの視点で多くのキャラと交流していくのが常に興味深い。

・『暁の女神』以前までのFE作品を彷彿させるような重厚かつ、時おり血生臭い雰囲気も漂う重厚なシナリオが復活している。多大な国家や組織が様々な思想を持っているという事もあり、どれも一筋縄ではいかない人間関係がよく描かれている。

・キャラクター設定や、国家間の関係などの舞台設定もよく考えこまれている。3DS三作品の時は多かったかなりクセの強いキャラクター設定は減り、違和感のない範囲に収まった性格のキャラが多い。支援会話等ははっちゃけてる物もあるが、学園内でのワンシーンとして考えれば違和感もそこまで無かった。

《ゲームシステム等について》
・ユニットごとの独自性や個性が際立っている。ファイアーエムブレムifでも良システムだったユニットごとの『個人スキル』なども続投しつつ、タロットカードの大アルカナ(ジョジョ3部やペルソナシリーズでもお約束のアレ)をモチーフに設定された『紋章』システム、得意技能&苦手技能の性能差、技能上げによって自主取得するスキルや戦技や魔法がユニットごとに決められている事等々。上記の事以外にも挙げだすとキリがないほどで、いわゆる上位互換や下位互換に属するユニットがほぼ存在せず、どのユニットも得意不得意や選択したルートごとの適性が用意されているのが特徴的。

・一定のレベルとクラスチェンジアイテムさえあれば基本的にクラスチェンジが可能だった従来作とは変わって、クラスチェンジのためには技能レベルが一定に達する必要があるシステムになった。これまでのシリーズだと『剣レベルDのソードマスター』のような違和感がある事もよく起きていたので、これもある意味現実的で良かったのではと。

・魔獣戦や計略など、これまでのFEシリーズではあまり無かった方向性のタクティカルな戦闘システムが追加されている。特に魔獣戦は通常の人間相手との戦闘とは大きく違う形式で討伐する必要があり、普段のストーリー中であっても様々な種類の魔獣と対峙することになるので、普段の戦闘面でも一味違う面白さが楽しめて良かった。

・限界値に達している時を除き、レベルアップの際に最低二つは必ずステータスが上がるようになった(ただし、基本的に学級に属している生徒系キャラだけで、それ以外のお助けユニット枠に近い立ち位置のユニットは例外)。さらにクラスチェンジ時にクラスごとの基礎値に足りてない分はステータスが底上げされる事もあり、これらのお陰である程度ステータスがヘタレる事こそあるものの、目も当てられないほど弱くなる事はまず無くなった。好きなキャラが全く成長をせず泣く泣く使うのをやめるという事もかなり減ってきたので、このシステムは良かったと思う。

《その他について》
・通常のストーリー上の会話数や支援会話数は間違いなくシリーズ中最高レベルに多いのだけども、その全てがフルボイスで展開される。通常の会話からモブキャラクターの会話に至るまで全てフルボイスで、声優さんの演技レベルはどれも高かった。個人的にはフルボイスである事にそこまで魅力は感じないが、こういう思いきった試みは面白いかと。

・シリーズ中でもとにかく桁違いに多いボリュームが素晴らしい。大きく分けて3つのルートに加えて難易度変更もあり、キャラクターの育成方針もある程度色々試せるようになっているので、周回プレイを何度もプレイしやすいように作られている。

・ファンタジー風味が強くなった世界によくマッチしている、オシャレかつ重厚な音楽も好評。基本的には強く主張しすぎない曲が多いが、物語のシチュエーションに合わせた曲が多く、サウンド面での評価はなかなか高い。本作の世界観に合うとは到底思えないようなテクノサウンドを使われてる曲もあるんですが、これも使い所が上手いおかげか違和感無くマッチしていたり。

・3DS時代のFEで使われていたコンテンツを細かく分けて搾取するタイプのDLCは全て無くなり、最近の任天堂発売Switchゲームで増えてきたエキスパンションパスという形でDLCを一括で全て纏めてくれたのは(前作までと比べたら)まだ良心的で良かった。

・選択したルートによってユニットの強弱や使いやすさが大きく変動するという、独特のゲームバランスに仕上がってるのは面白かった。例えばシナリオ中でも強キャラとして扱われてるカトリーヌ等は、早期加入が可能なルートで早期加入に成功すれば凄まじいステータスを誇るユニットになる一方で、早期加入が不可能なルートでは普通に育成してきた他のユニットよりは明らかに一歩劣る存在になったりとか。他にも、ベルナデッタやアネット等は『難易度ハードまでは他の同種ユニットよりも一歩劣る』使い勝手になる一方で、難易度ルナティックでは固有の戦技やスキルの関係で逆に彼女達を使わないとゲームの難易度が上がるなど、『難易度や選択したルートによってユニットの強さが変動する』というこれまでのシリーズではあまり見なかった現象が起きてるのが面白い。

《点には影響してないものの、一応》
・もはやゲームの評価ではないんですが…音声言語に英語も用意されているのが中々にGOOD。というのも、本作は一度見た支援会話やイベントであればホーム画面のエクストラからいつでも見返す事が出来るので、英語の勉強をしたい時は英語に変更して見返す事が出きる。Switchの本体設定をEnglishに変えれば字幕も英語になる上、分からなかった部分は日本語音声に戻して見返してみるなど、リスニングの勉強にもなる。幾つかの過去作でも字幕を英語に変える事は出来たものの、本作はフルボイスかつ会話量がかなり多いため、全てのイベントをいつでも見返せる機能は英語の勉強にもかなり役立てられそう。
むむ…すまん、駄目であった
《UI等について》
・全体的にロード時間が長めで、場面転換の際に細かくロード時間が入ったり、セーブデータの読み込み時間が長かったりするのが煩わしい。Switchのゲームではカートリッジ版とDL版でもロード時間にあまり大差は無いとは言われてるが、DL版でプレイしている自分でもロード時間の長さはかなり気になった。

・さらに全体的に字が小さめで、特にユニットの詳細ステータス確認画面の字が小さくて見辛い…。Switch本体をテレビ出力にせず携帯モードでプレイしていると明らかに文字が読み辛くなるのは難点。

・敵の中には面倒なスキルや騎士団を配備している者が存在している事が多いのだが、それらを確認するために相手のステータス画面を見て一々確認する必要があるのが面倒臭い。3DS三作品の時は3DSの下画面に表示されたり、それ以前の作品ではボス敵や一部のクラス以外は面倒なスキルを持ってなかったりしていたのでそこまで難でも無かったが、本作では高難易度になるほど厄介なスキルや騎士団を配備している敵が増えてくるので、細かな確認がやり辛いのには困った。

・カメラの最大ズームアウトの引き具合が弱く、特に計略やスキルなどを駆使して攻撃範囲が広くなってくると、ユニットの行動範囲や攻撃範囲が画面からはみ出てくるのはちょっと不便。該当する敵ユニットは限られてくるが、戦技持ちや特殊な騎士団持ちの敵の場合は射程範囲が表示されてる範囲よりも広範囲を攻撃してくる事があり、開発者の方々が設定し忘れたのかなと思う問題点が幾つかある。

・セーブデータスロットが5つしか用意されていないのが辛い…。本作はルートが大まかに分けて3つ用意されており、同じく3つのルートが用意されているifでは9つのスロットが用意されていたのに、本作の5つという枠内だとセーブデータのやりくりがキツい。[追記]→一気に25枠までセーブ出来るようにアップデートで改善された。できれば最初から欲しかったが、現在ではセーブスロット数の少なさで困る事はほぼ無くなったはず。

《ゲームシステムについて》
・スキル取得のメカニズムや学園生活で行える事など、新しく追加されたシステムが色々と複雑で覚えるべき事がとても多い。武器の三すくみの撤廃や特攻&有効の仕組みなど、過去作ではお約束だった部分が微妙に変更されている事があるのも困惑の理由かと。FEシリーズに慣れている人ほど陥りやすいシステム変更点が幾つかあるので、どういうプレイヤーであっても説明文はしっかり読み解く必要があるかと。

・最上級職になるために必要な技能が、上級職になるまでに必要だった技能とは全く関係ない技能を要求してくるものが多く、計画的に育成させないと最上級職になることが出来ない。無理に最上級職にならなくてもクリア出来るバランスにはなっているものの、前情報が乏しすぎて育成プランが崩れる事も多そうな気はする。

・学園内の散策パートは最初は楽しいのだけども、慣れてくるとお使いクエストを淡々と請け負ったり、支援上げや技能上げ等をひたすら繰り返すだけになってくるのでちょっと作業的。どういうプレイスタイルでも基本的にストーリー中盤まではほぼ同じ流れが続くので、周回プレイをし始めるとさらに作業ゲー的な感覚が強くなってくる。

・難易度ノーマルでも難易度がそこそこ難しく、カジュアルモードでも簡単にクリア出来ない人はいるかも。『if』ではユニットが倒されても次のターンにHPが全快で復活するフェニックスモードが存在していたので滅茶苦茶なごり押しでも一応クリアは出来たが、本作は適当にプレイするだけではクリア出来ない難易度になっている。よほどSRPGが苦手な人でなければクリア出来るとは思うものの、本作は覚える事が多いので理解し切れずに投げ出してしまう人も居そうな気はする。

・使えるクラスと使えないクラスの格差が激しい。便利に使えるクラスを集めれば飛行系やスナイパー系等のユニットをそれぞれ3人ほど揃えた編成になる事もザラで、色々なクラスを使って楽しむというプレイスタイルは普通のプレイではあまり見掛けないのも少し寂しいものがある。

・全体的に一度のマップで出撃させられる人数枠が少なく、自学級の生徒全員に加えて1〜3人くらいまでしか出撃させられないマップが多い。数名のみ副官としてサポートに付かせる事も出来るが、スカウトを繰り返して魅力的なキャラが増える事の多い本作において、出撃枠がキツいというのは少し勿体無く感じる。

・敵の増援が登場したと同時に行動を始める者が一定数存在する。砦なども無い場所へ敵がゾロゾロと現れる事もよくあり、突然の理不尽な死を受ける事も多かった。本作はユニットが死亡しても時間を巻き戻してやり直す事が可能にはなっているものの、もはやそれを行う事を前提に調整したのではと思うような初見泣かせの点が幾つかあった。

《演出・映像・シナリオ等について》
・グラフィックはシリーズ全てと比較すると確かに綺麗ではあるのだが、HD機であるSwitchとしては綺麗であるとは到底言い難い。テレビ出力ではともかく、携帯モードにすると一部のグラフィック(特に草など)がカクカクしてるのがさらに目立つ。

・外伝のストーリーにて、強制出撃枠として用意されてるユニット同士に支援会話が用意されてない組み合わせのものが少し存在してるのは気になった。

・散策時やストーリー&支援会話時のキャラの動きのパターンが少なくてぎこちない。どのキャラも声優さんがかなり迫真の演技をしているだけに、動きの乏しさが却って目立つ。

・一つのルートをクリアしただけでは分からない、シナリオ上での謎や伏線がとても多い。何度も周回する事を前提に作られたゲームであり、一周プレイするだけでは今ひとつ明かされない謎や、唐突に出てくるネームドユニットなど、本作ならではの固有名詞や歴史上の時系列の交錯が多いので、しっかり読み解かないと話が理解しきれない。

・これまでのシリーズでは主人公が比較的よく喋る事が多く、マイユニットとして加わるキャラもよく会話していたのだが、本作の主人公はかなり無口。感情表現が豊かでない事はゲーム内でもツッコまれているし理由付けも多少あるといえばあるのだけれども他のキャラがフルボイスで会話を展開するのに主人公だけはあまり喋らない点に少し違和感もあったり。物語の主軸となる人物なので、影が薄い訳ではないンですが。

・ゲームを一周クリアするうちの半分くらいまでは、シナリオや戦闘マップはほぼ同じ過程を過ごすので、何度も周回するとストーリー中盤くらいまでは新鮮味に欠けてくる。中盤までスキップして進めるといった仕様もなく、大きく分けて3つのそれぞれのルートごとに最初からプレイする必要があるので、大凡は同じストーリーやイベントをこなす必要があるのがやや面倒臭い。

・アニメ戦闘オフにしてても、ボス戦時やシナリオ的に重要な相手との戦闘時だけに関しては自動的にオンになっても良かったのでは…?これまでの作品では重要な相手の時は必ずオンになってたし、そこまで問題なかったような…。あと、従来作では戦闘アニメオフにしてても、特定のボタンを押しながら戦闘開始すれば戦闘アニメオンに出来たのに、そういった操作が無くなったのも残念(もしかしたら存在するかもと思って二年ほどそれらしい情報をかなり探したものの、本作にはどうやら"存在しない"で結論付けて良さそう)。

・ストーリー上で重要な立ち位置にいるキャラのうち、幾らかのキャラは顔出しを全くしないのがやや残念。『ダフネルの烈女ジュディット』や『フラルダリウス公ロドリグ(フェリクスの父)』といった面子はNPCとして登場したり顔出しもしてくる一方で、『ベルグリーズ伯(カスパルの父)』や『ホルスト卿(ヒルダの兄)』等は支援会話やストーリー上でも度々名前が出てきて存在感があるのに、外見も何も映し出される事がないのはかなり残念。

・プレイヤーの選択したルートや一時離脱ユニットや永久離脱ユニット、加入時期に大きく遅れを取るユニットなど、初見泣かせな仕様が結構存在する。金鹿ルートだけは唯一そういった初見泣かせな仕様が少なめなんだけども、他ルートではわりと容赦ないので戸惑う人も多そう。

《点には影響してないものの、一応》
・クリア後のデータを使ってのやり込み要素が薄い。育成を重視した内容なだけに、Echoesや蒼炎の軌跡のように後日談という形で育てたユニット達を使ってのやり込みマップが用意されてたら評価点がさらに一回り上がってたと思うくらい。周回プレイでスキルや技能レベルを引き継ぐ事は可能ではあるものの、手塩にかけて育てたユニットには思い入れが大きいのでクリア後データでのやり込み要素もあれば良かったのにと切に思う。

・難易度ルナティックでは、操作不可能な友軍NPCが凄まじく足を引っ張る。特に有名なのが友軍として登場してくるジュディットやロドリグ。敗北条件が主人公or友軍の首魁の敗北として用意されているマップでは、敵を上手く誘導や殲滅しておかないと、友軍が敵軍に思いっ切り突っ込んで勝手に負けてゲームオーバーにしてくるというこれまでのシリーズには無かった方向性でのゲームオーバーが用意されている。要するにルナティック限定で、敵を全滅する以外にも『無茶苦茶な動きをするNPCが死なないように介護する』という条件も追加されてるようなもので、せめてNPCの操作が出来るとかNPCが倒れても敗北条件にはならないとか(どちらも他のマップではそういうNPCが登場する事もありますが、上記2者が出てくるマップではそういう仕様が無い)、そういう配慮を用意してくれれば完璧だったかと。違う意味で攻略が面白くなってるので自分はツッコミを入れながら逆に楽しめたものの、ゲームデザインとしては明らかに想定してない部分だと思うので、賛否両論に近い部分として一応…(苦笑)
我に感想ありってな!!
 据え置き機では10年以上ぶりに発売された、ファイアーエムブレムシリーズ本流の作品。久々に重厚なものを遊べるかと個人的にも期待が大きかったが、総合的には期待に応えてくれた大作らしい内容だったかと。

 舞台設定である学校生活と聞くと日本のマンガ・アニメに多い学園モノのようなイメージが浮かび上がるが、こちらガルグ=マク大修道院は騎士の養成学校や貴族達の学校であることもあり、ある意味ファイアーエムブレムの世界らしい独自の学校になっている。物語の主軸となる場所こそ大修道院の学園内とはなっているものの、実際の戦闘マップや物語の動向だとかは完全に学園の外で行われているものばかりなので、プレイしている最中には学生達が戦っているという感覚はそこまで無かったり。
むしろストーリーが進むと急激に戦記物語としての色合いが強くなり、複数の組織や思想が入り交じる複雑な関係性を持った物語が展開されるので、最初の学園内での物語としてのイメージは良い意味で大きく裏切られていく事になるかと。

 ボリュームは過去作と比べても段違いに多く、初プレイの時なら普通に進めるだけであっても一周クリアするだけで50時間近くはかかるのではないかと思われる。これに加えて複数のルートの存在や難易度変更、エキスパンションパスによる追加コンテンツ諸々に鑑みると、本作のボリュームの凄さがよく分かる。

 新しく追加されたDLCに関しては、3DSの三作やスマホアプリのファイアーエムブレムヒーローズ、ファイアーエムブレム無双、ファイアーエムブレムサイファなど、数作ほど細かく搾取するタイプのFE作品が続いてきたので、本作の良心的な一括購入型のDLCはかなり歓迎したいところ。ただ、細く搾取してくるようなタイプではないのは良かったものの、DLCの全体的なボリュームは正直言ってやや微妙。このボリュームで2500円はちょっと高いと感じた。

 新要素も多く、これまでの作品と比べると色々と新しい試みに挑戦しているなと感じる点も多かった。タクティカルなシミュレーション要素だけでなく、キャラ育成やキャラクター交流としてのシミュレーション要素も強めになってきている。従来作では基本だったマップ戦闘を通した育成以外でもユニットを能力的に育成していく必要がある、というだけでも過去作とは一線を画す内容と分かるかと。

 このゲームを2年以上プレイしてきて分かってきたンですが、本作はユニットの強さが他のシリーズとは違って、一概に強いか弱いかを言い切れないという独特のゲームバランスになっているのがかなり興味深く面白いところ。上記の良いところでも書いた通り、ルートによって変動するマップの形状やユニットごとの支援関係や得意不得意の分野がある関係上、『難易度や選択したルートによってユニットの強さor便利さが変動する』という、これまでのシリーズではあまり見なかった現象が起きている。

 本作はマップの使い回しが過去作と比べても全体的に多いンですが、この点に関しては本作はかなり開き直った形で、『マップの流用はするが、ルート選択により仲間ユニットを大きく異なるようにする事により、同じマップでも攻略方法が多少変化していく』事に面白さを見出すような形でゲームデザインをしている模様。
 そういう意味では、《ファイアーエムブレムのアタリマエ》を打破してる、ような気もしなくもなかったり…(苦笑)。ただしここは賛否が分かれる、というか賛否の両方ともを兼ね備えてる箇所なので好みは分かれそう。

 戦闘の自由度が高いFEというと本作以外にも幾つかは挙げられる一方で、育成の自由度がここまで高いFEというと、本作と同等の自由度を誇るFEは中々挙げにくいかと。どのユニットも突き詰めればどういう育て方をすればいいのか定石のようなものはある程度存在するものの、個人的な好みやルートごとの役割分担、多少の縛りプレイも含めたりし始めると育成の幅が大きく変化する。引き継ぎ無しプレイでのユニット育成理論は語り出すとキリがないほどで、ハマる人はとことんユニット育成にハマる事になりそう。上記の理由もあって本作は(←二週目以降、引き継ぎ無しプレイでの話ですが)、色んなユニットを使いこなす面白さがシリーズ中トップクラスと言ってもいいほど楽しかった。

 上記にも書いた通り風花雪月はフルボイスかつセリフの量がとても多いので、英語のリスニング練習のゲームとしてもかなり重宝する。日本語音声の時と比べると英語音声の方がキャラの性格と合っていたり、欧米圏特有のオーバーな演技をしていたりと新しい発見が色々見えてくるので、音声の聴き比べが中々に楽しい。会話履歴から音声を何度も再生し直す事も可能なのでリスニング教材としてもわりと親切な部類。ゲームとしての評価ではないものの、違う意味で評価出来る箇所ではあるかと。

 かなりの持論ではあるんだけども、攻略情報などはあまり見ずに本作をこれから始めたいという方に対して、一つだけ。特定の学級を選びたいという考えがある人であればその学級ルートを選んでプレイするのが良いと思うんですが、もしもどの学級から始めたらいいのか決めあぐねている人であれば最初は、
『金鹿学級(ヒルシュクラッセ)』から始めるのが最も良いのではないかと思います。細くは伏せますが、他の学級だと前情報がないとややこしい点があるので、前情報を把握せず快適にプレイするならそういった事柄が少ない金鹿学級から始めるのが良い…んじゃないかと個人的には思います。

掲載日:2019日9月3日
更新日:2020年3月17日


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