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ファイナルファンタジーX
メーカー:スクウェア
機種:プレイステーション2
発売年月日:2001年7月19日
価格:8800円
ジャンル:RPG


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PS4版 スイッチさん版
(いずれもHD版)


サントラ

執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
10 8 7 8 7 9 7 82
プレイ時間…150〜200時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
よひですぞ!
《快適性など》
・プレイステーションの1の時代のファイナルファンタジー(7〜9)よりは戦闘や場面切り替えのロード時間がかなり短くなり、テンポ良く進むようになった点は嬉しい。

・PS1の頃だと戦闘中の演出がやや過多で魔法や技のエフェクトが長くてイライラしたモンだが、本作はそこまでダラダラともしておらず、戦闘はだいぶ軽量になったかな、と。それでいて見た目も豪華さを保っている。召喚獣のムービーの長い/短いを設定で手動で切り替えられるようになった点も◎。

《バランス面》
・戦闘中にキャラ入れ替えが出来るようになり、よりダイナミックな展開のバトルを楽しめるようになった点が良い。固定の3〜4人だけでなく、全員で戦っているって実感が湧く(↓で挙げた通り、経験値の入りのシステム部分で改善の余地はあるとは思うが)。

・従来のファイナルファンタジーのATB(アクティブタイムバトル)にあったリアルタイム要素は無くなり、時間に追われずにじっくり考える事が出来るようになった点は、まぁこれはこれで良い。

《演出面・シナリオ周り》
・プレイステーション2ではかなり初期に出たゲームなのだが、PS2のサイクル全体を通じてみても最高クラスのグラフィックのクオリティの高さを誇る。この辺は流石のスクウェア品質。

・ファイナルファンタジーシリーズとしては初のボイス入りとなったが、特に違和感のある演技も無く、ヘンにセリフ送りで待たされるとかでもなくしっかり馴染んでるとは思う。

・BGMは過去のFF作品と比べるとしっとり系で前面に出てくる感じじゃないけども、質そのものは高いと思う。

・これまでは西洋・中世ファンタジー風だとか、それに近未来のSF要素を組み合わせた作品が多かったFFとしては珍しい東南アジア的な雰囲気がなかなか独特。これまでのFFに無かった味わいで新鮮に思えたり。作品全体を通じての水の表現の綺麗さも良い。

・シナリオ中に専門用語は多い方だが、理解に難儀するような場面は無く、配慮して組み立てられていると感じる。
イッカーン!!
《快適性など》
・ムービー偏重時代の最盛期のスクエニの超大作って事で、必然的にムービーの比重が大きめ。ちょっと進める→結構な尺のムービーが流れる→やっと進める→またムービーが……となりがち。これらムービーは一切飛ばせないので、二週目以降にサクサク進めたい時なんか、少々イラつく事も。

・寺院の謎解きパートはギミックを動かす判定が分かりづらく、少々ストレスを覚えた。

《バランス面》
・戦闘は「飛んでる敵にはワッカ」・「硬いのにはアーロン」・「魔法しか通じないプリンにはルールー」みたいな感じで、パターンに当てはめるだけの作業になりがち(パターン以外のキャラだと攻撃が当たらない・ダメージが殆ど通らない等、バランスが極端)。相性の設定が極端過ぎる印象ではある。

・道中に関しても従来のフィールドマップにあたる部分が無くなり、自由に動ける場面が極端に少ない。従来作と比べてもかなり一本道なバランスで終始ある種の窮屈さは感じる。

・戦闘が割りかし簡単寄りのバランスに思えるのに対し、ミニゲームは(説明不足・もしくはやたらと複雑な事もあり)妙に難易度が高いように感じられたり。

・経験値は戦闘で何かしら行動したキャラにしか入らず、1回の戦闘でコロコロとメンバー入れ替えを強要されるのが面倒。全員使わなきゃダメなバランスなんで、普通に全員に経験値が入る仕様で良かったと思う。もしくは戦闘に参加したキャラにはちょっと多め、くらいで。

・本作の武器は攻撃力が設定されておらず、特殊効果のみの設定。良く言えば「攻撃力に左右されずに最初から終わりまで色々試せる」ってなるのだが、一方では「強い武器を手に入れた喜び・実感が無い」ともなる。この辺は一方を取ればもう一方が…ってなるんで難しい部分ではあろうが。

《演出・シナリオ周り》
・世間様だと「最高」とか「泣ける」とか言われてる事の多いシナリオだが、個人的にはそこまでかって言うと微妙な気も。グラフィックのクオリティや声優の演技の勢いで押してる感じだが、話そのものは根性論のゴリ押しで薄っぺらい感じも。主人公とヒロインのイチャイチャもちょっと度が過ぎる気も。ティーダのチャラさは終始鼻に付くし、それ以外のキャラに関しても台詞がクサイのももうちょい何とかなんなかったのかなぁ、って思ったりもした(まぁこの台詞回しのクサさはFFっぽさに直結する部分でもあるだけに、無きゃ無いで文句も出そうだが)。

・グラフィックのレベルは高いと思うが、ムービーと通常のポリゴンモデルとで差が大きい(どっちも表現の程度は高いのだが顔が別人に見える事がある)。
感想でごじゃる。
 プレイステーション2で初のファイナルファンタジー。PS2の割と初期の方に出た作品ながらグラフィック等の演出部分の出来は凄い。それでいて演出重視だとかロードの長さでテンポが悪かったPS1時代のFFに比べると、演出の品質の高さを保ちつつもテンポが改善している点が嬉しい。
 一方でバランス部分では自由度が少なく作業感が出てしまったり一本道の度合いが強まっていたりする点は残念。シナリオ部分も少々薄っぺらさやクサさを感じてしまう描写が多かったように思う(この辺は好みにもよるか)。

 全体としては、遊びやすさと演出の豪華さを両立させた良作って言ってよろしいかと思う。この10以降のFFは、どうもゲームデザインやらグラフィックのセンスやらで激しく人を選ぶ作風に傾いていってしまったって意味では、「最後の万人向けの大作」とも言えるかも。その点ではちょいと寂しさも覚えてしまったり。んー……そろそろ万人向けのFF、帰って来ませんかね?

掲載日:2019年12月31日


執筆: こうちゃ関西営業所長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
10 9 8 9 7 8 8 78
プレイ時間…100時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
ヌゾミ!ミミルピ?!(※良いところ)
《演出・シナリオについて》
・ファイナルファンタジーシリーズは中世ヨーロッパ風ファンタジーや近未来SFの世界観を基調に取り入れているものが多かったが、本作FF10はオリエンタル風、特に東南アジアの雰囲気が多く取り入れられているのが特徴。ゲーム序盤から昔の東南アジア全域の文化を彷彿とする描写が多く、全く新しい方向性のファンタジー世界観がゲーム全体に行き届けられている。

・キャラクターの頭身や表情はリアル調に寄せてあり、イベントの状況に応じて表情が細かく変化するのも新要素。流石に今見ると3Dグラフィックとしては粗があるが、常に同じ表情のままよりはこちらの方が演出的にも自然。ティーダやワッカなど、ストーリー中でも感情表現が豊かなキャラは表情も大きく変化しているので分かり易い。

・本作の舞台となるスピラの世界で広く信仰されているエボン教の存在や、スピラを脅かす存在『シン』の恐怖、『召喚士と召喚獣』の深い関係性など、世界設定そのものが独創的でよく練り込まれている。ストーリー展開はともかく世界観の奥深さは流石のFFクオリティ。

・重要なイベントシーンで使われているプリレンダリングムービーの美しさには特に度肝を抜かれた。当時の3Dグラフィックとしてもトップクラスと言える出来で、特に水や光の表現が滑らかでとても綺麗。

《ゲームシステムについて》
・本作のキャラ強化手段は主にスフィア盤を活用するが、スフィア盤はどういった能力やアビリティが取得出来るのかといった過程がゲーム開始時点でほぼ全て分かるのが特徴。特にゲーム後半の段階になってくると、プレイヤーの進め方次第で自由度の高い育成が出来るようになっている。キャラクターの弱い点を補強したり、強いアビリティを複数人が使えるようにする等。やり込み要素のダンジョンや隠しボス敵も用意されているので、ストーリークリア後の育成が真髄とも言える面白さがある。

・従来作ではFF4から続いていたATB(アクティブタイムバトル)ではなく、CTB(カウントタイムバトル)というバトルシステムに。プレイヤーの入力時間に左右されないので、リアルタイムに追われずじっくり考えながらバトルを進められるのが特徴。ATBでは常に想定する必要がある、攻撃の順番が予想外に割り込みされる事なども減ったので、計画的にバトルを進める面白味がある。

《快適性について》
・バトル突入時やエリア移動時などゲームシーンが変わる際のロード時間が短めで、ロード時間がはっきり伝わるプレイステーション時代のファイナルファンタジーシリーズよりもロード時間を気にせずプレイ出来る。

・序盤、中盤、終盤を通してプレイヤーが進めるべき道筋は一本道に近く、ゲームクリアまでほぼ迷う事なく進められる。従来作ではワールドマップの複雑さもあって進行ルートに迷う事も多かったので、本作のシンプルかつクリアまで一本道に近い作りはRPG初心者向けとして特に有効な作りになっている。

《音楽について》
・プロローグから使用されている名曲『ザナルカンドにて』を始めとして、静かで神秘的な旋律の名曲が揃っている。FFシリーズお約束の植松伸夫氏だけでなくスクウェア社の他の作曲者も加わっているが、どのBGMも作中の雰囲気とよく馴染んでいる曲が多い。

・FFナンバリングタイトルとしては初めてキャラクターにボイスが用意されており、バトル時やイベントシーンではほぼ常にボイスが入っていてゲームを盛り上げている。ストーリーとの親和性や演技力などもほぼ問題なく、シリーズ初の試みでありながら上手く成功した部類ではないかと。
ヨヨマガレルピ…(※悪いところ)
《演出・シナリオについて》
・世界観や舞台設定はよく出来ていると感じるものの、一部のストーリーの展開は安直で納得が行かない部分もある。行動理念がいい加減であったり、ご都合主義的な展開になるシーンなど、後から総括して見ると問題的に捉えられてしまう点が幾つかある。

・イベントシーンやムービーシーンをスキップする事が出来ない。本作はムービーシーンだけでも約10時間はあるので、初プレイ時はともかく再プレイ時にこの量のムービーを最初から全て見返す…というのは少し辛いものがある。

《ゲームシステムなどについて》
・雑魚敵とのバトルは敵の特性に会わせて相性の良いキャラで攻撃を仕掛けていくだけの物が多く、やや作業的。ボス戦や終盤の一部の敵との戦いではパターン化されていない自由なバトルが出来るが、ストーリー攻略の段階では従来作よりもバトルの自由度が一回り低い。

・世界各地の寺院の中に用意されている謎解きの面白味が薄い。総当たりで色々試して仕掛けを理解していくタイプの謎解きで、初見ではやたら時間ばかり嵩張る印象。

・バトル開始時のパーティメンバーを固定する事が出来ないのがやや不便。後半になるにつれ戦闘が終わるたびに『メニュー画面を開く』→『"すばやさ"が高いメンバーと交代』の手間が必要になってくるので、完全に固定出来れば尚の事良かった。

・敵の種類やシリーズお馴染みの召喚獣の数が少なめで、従来作で豊富に用意されていたのと比べると物足りなさも感じた。雑魚敵は能力値とカラーリングを変えただけのものもあり、グラフィック上での新鮮さに欠ける。
ヨレンソルピ!(※感想など)
 坂口博信氏や植松伸夫氏などの方々が開発に携わった最後のFFナンバリングタイトルでもあるFF10。スクウェア社と云えば『ファイナルファンタジー』という風潮が作り上げられたきた時代で、機種の進化と共にスクウェア社が技術の粋を極めて作られた内容で、新技術も様々な形で取り入れられてある。

 従来作ではお馴染みだったATBやワールドマップに該当するものが無く、ゲームクリアまでなるべく一本道になるゲームデザインなのは明らかに意図された物で、新機種であるプレイステーション2を購入した初心者ユーザーとの兼ね合いとしても上手く考えてられている。
 新要素も色々と取り入れつつ、やり込みプレイを楽しむプレイヤー向けにも配慮されている部類で、万人向けを狙ったのがかなり伝わってくる。

 今の世から振り返っても本作独自のファンタジー世界観は独創的でよく練り込まれていると感じる。ただ、ストーリー展開が全体的にご都合主義的・無理のある展開が多めなのは常に気になるところ。その分、ストーリーの大筋が他のシリーズと比べても複雑さが少なく理解し易い内容であるので、シナリオ周りは人によって賛否が分かれる。

 後のファイナルファンタジーシリーズのみならず、他社JRPGにおいても本作のシステムを参考にマッシュ・アップされたシステムが含まれているなど、近代JRPGのオーパーツ的な存在とも言える。プレイヤー人口も多く、今もなお色々な形で語られてるのもそういった功績によるものが大きそう。

掲載日:2023年2月14日


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