Xenoblade X
ゼノブレイドクロス

メーカー:任天堂
開発:モノリスソフト、任天堂企画開発本部
機種:WiiU
発売年月日:2015年4月29日
価格:7700円
ジャンル:RPG


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WiiUディスク版

サントラ

執筆: アルツ社長

映像 音楽 快適性
&操作感
独自性 難易度・
バランス
ボリューム シナリオ 総合評価
6 7 4 6 7 9 4 66
プレイ時間…150〜160時間程度
※各項目は10点満点、総合評価は100点満点
良いも!最高だも!(タツ風に
・最初の最初に一点。やたらと長文となってしまい見づらい点はご容赦を。「簡潔に読みやすくまとめる」よりは「思った事は端折らずに、ダラダラとでも全部書く」のが当サイトのポリシーですので、読みづらい点は目を瞑って下さいませ。

名前が前作そのままの『ゼノブレイド』が入ってる事、直前に3DS版移植が出てプレイしてた事から、嫌でも無意識に前作を意識せざるを得ない。その関係上、やたらと前作との比較部分が多いので、その辺もご了承下さい。任天堂もこうされる事を覚悟した上で大名跡を名乗らせてると思うんで(※ちょっと皮肉)、えらそーですが遠慮なく比較させていただきます。前作(Wii版)のレビューはこちら(3DS版はこちら)。


《戦闘関係》
・戦闘はスピード感が増し、仲間とコンボを繋げる重要性が上がった事で、(各々の要素の理解さえできれば)深みのあるバトルを堪能できるのではなかろうか。比重としては前作よりもオートアタック(コマンド入力ナシで勝手に繰り出す攻撃)を基本に、アーツ(コマンドで選ぶ必殺技)はコンボ用に確保してHP回復を狙っていくバランスか。方向性が多少変わった感じはするが、万事においてスピード感があって楽しめる。前作はウリだった地形と戦闘がそれぞれ独立してた感があるが、今回はフィールドの要素(位置取りとか高低差とか)も戦闘に絡み合い、必然性が増した部分が面白い。

・また、敵のモーションの隙を突いて狙われつつも後ろに回りこんで背中から斬りつけて大ダメージを狙えたり、前作よりもこの点では深みがあって良いと思う。惜しいのはとにかく説明不足で「面白い」と感じられるまでの誘導が少ない事。だが、各々の要素が判ってくると俄然面白みが増す。我慢してひたすら遊び続け、各要素を地道に理解すればじわじわ楽しさが判ってくるタイプとは言える。そういう面ではひたすらにスルメ的。発売前のプロデューサー高橋氏のインタビュー「ハック&スラッシュに特化したRPGです」ってのもある程度プレイして慣れてくると「あぁなるほど、そういう事か…」と納得できてくる。ただ、繰り返しになるが、説明不足感は酷い(苦笑)。


《グラフィック・サウンド・演出関係》
・グラフィックは他のHD機を経験してる自分からすれば別に驚く要素は無いが、前作がWiiであった事を考慮すれば5年のブランク以上の進化はあり、順当に綺麗にはなっている。まぁPS3/360の中〜後期の平均以上級の映像は出てると思う。流石に現行のPS4/ONEのソフトと同列で比べるレベルでも無いが、WiiUという括りならばなかなかのクオリティと言えるかと。モノリスソフト自体がキャラの表情やモーション作りが苦手って傾向もあって正直キャラグラは微妙だが、多種多様でネタも豊富な景色作りって部分では他の現行機でもここまでの物は少ないと思う。

・キャラクターのボイスに関しては大安定。特に違和感のあるキャスティングもなく、聞き苦しい箇所もなく、上々の出来と言って良いかと。キャラの表情が全体的に乏しい分、声優の好演でかなりカバーできてる面もあろうかと思う。


《システム・操作関係》
・ゼノブレイドの時点で広大で多彩だったフィールドは更に広くダイナミックにパワーアップ。発売前のPVでやたら『広いも!』とか強調してただけの事はある。前作同様、広大なフィールドを目的なしにウロウロしてるだけでも楽しさがある。前作よりもジャンプで登れる高さも上がり、行ける場所の自由度が増した感がある。

・オンライン要素に関しては公式のアナウンス通り『緩く広く繋がる』って印象で必要以上に絡む事を強要されないのは良し。個人的には1人用のゲームで人様と絡むの好かんので(ただ、これのせいでシナリオ面が大きく犠牲になった感があるのがナントモ…)。

・物量に関しては凄い、の一言。その気になれば1周遊びつくすだけで200時間とか300時間遊べるんじゃかなろうか?

・ドール(人型のロボットね)を入手すると機動力が大幅に向上し、フィールド探索のストレスはかなり軽減される。また、機動力に物を言わせてひたすら逃げる事も可能で、格上の敵に邪魔される煩わしさからもだいぶ開放される。勿論、戦闘力も格段に上がるので「俺ツエー」を(強い奴は更に桁違い強いからやりたい放題はできないけど)ある程度満喫できる。そこまで我慢できればより本作を楽しめる事と思う。


《総合して》
・下の欄をご覧になれば一目瞭然だとは思いますけども、やたらめったら不満点は多い。恐らく、前作が気に入った人程「あれ!?こんなはずでは…」と思われる部分も多かろうと思う。ここまで粗だらけのゲームだとイライラしてヤル気も失せるものだが、このゲームの場合、なんだかんだで遊び続けてしまうだけの魅力はあるって事なんだと思う。戦闘なりフィールド探索なりドール(ロボ)なり、どっか好みに合う部分があれば数々の不満を抱えつつも一応は楽しめる内容って言えるのでは?長時間楽しめるボリュームと相応の引きの強さはあるって事なんだと思う。中盤以降は正直モチベーション下がりまくりで少々キツかったが、とりあえずストーリーだけクリアする段階で今までに出たWiiUの中で最長の100時間超遊べてはいるからね。
あー、それで良いのー?食べてやろっかなー(リン風に
全体的に、前作で出来てた事が何故か出来てない、そして退化してる箇所がやたらと多い。以下で特に気になった物を挙げる。ズラズラと非常に多くなってしまったので、こっちも分野ごとに分けますぞ。相変わらず見づらさ度外視で思った事全部書いてますので、その辺りはご了承を。


《システム・操作周り》
・前作の時点で結構な不満点であり、クラブニンテンドーのアンケートにもみっちりダメな所として挙げた文字の小ささ「これでもか!」とばかりに更に悪化(※皮肉を込めて大きい文字で書いときますネ)。大相撲の番付風に言わせていただけば、大半の文字が序ノ口レベルの虫眼鏡っぷり!!ここまで文字が小さくて苦痛に感じたソフトってあんまり無いんだけど。視力0.7で普段はメガネかけてない当方もこのゲームはメガネなしじゃ遊べないという。開発陣はパソコンの高解像度モニターにかじりついてプレイするから問題なかったのだろうが、直接UIを作った人間からテストした人間に至るまで全員、テレビから数m離れて遊ぶプレイヤー側の視点・配慮を全く欠いている。モノリス側でなく任天堂側にしても、ここテストプレイで誰も突っ込まなかったのか?PS3や360初期のソフトみたいな過ちを愚直にモノリスソフトも繰り返すのか…。ってか、オプションで文字の大きさを4倍とかにさせろよ、まったく(苦笑)。一番いじりたい部分が変えられないとは!やたらと細かい上に必要以上に情報量が多く整理されてないテキスト類とシステム自体の難解さも相まって、あまりの煩雑さにかなりウンザリする。筆者環境だと前作の時点からTVは変わってない(≒画面は大きくなってない)から、純粋に文字が小さく見づらくなっただけである。また、ウチの32型のテレビに写した時点で“虫眼鏡”レベルなんでそれより遥かに小さいゲームパッド側の液晶に表示させると文字自体が潰れててそもそも読めない。老眼かかえるご年配のプレイヤーさんは全く判別できない恐れすらあり。ここ、前作よりも明らかにダメになったね…。20インチクラスもしくはそれ未満の小型TV・PCモニタに映してる方はご愁傷様、新調しないとマトモに遊べないと思われます。

・操作周りも劣化した印象。前作のリモコン+ヌンチャクの操作は移動と技選択が別々に同時に行えて良かったんだけど、ゲームパッドではそれができない(本作はリモヌン不可)。その他、特にカメラ(特に戦闘において)の出来が2015年発売の物と思えんくらいアホ。戦闘してると敵に近付き過ぎてカメラが地形にめりこむので手動で頻繁に調整しないといけないのがめんどくさい。あと、コントローラ周りで文句を言わせていただくと、重いゲームパッドの500gの重さが結構効く…。必然的に長時間遊ぶタイトルなので、めっちゃ肩がこる…。

システム周り、各要素に関しての説明不足感が酷い何がどこでできるか、どこで手に入るか、それらの可否の分かりづらさも酷い。UIの必要以上のゴチャゴチャ感・まとまりの無さも何とかならなかっったものか…?前作の親切さを期待すると根底から裏切られる可能性高し。前述の文字の小ささも相まって前作を800時間遊んだ自分でも辟易するレベルなんで、前作未経験でこの手のRPGに慣れてないプレイヤーさんだと、システムに慣れる前に嫌になる恐れすらある。

・正直、ロードは長い。そんな頻繁に入らない点は評価したいが、10GB以上の『ロード短縮パック』なる別途データを適用させて尚10秒級のロードが入るのは、少なくとも「快適そのもの!文句なし」のレベルから程遠い。わし、昔の任天堂ソフトが基準なんで、余計うるさいですね、ロードには。まぁそこまでロードにこだわらん人でも「短い!ロードはゼロ」なんてて言える程では無いかと。WiiU用外付けHDD持ってない方は実質これの為に追加1万円が必要な事になる。あんまり財布に優しい作りとは言えんですなぁ。

・あと、前作では完全に任意だったクエストが今回は部分的に必須になってて物凄く窮屈。ストーリーを進めるためには「開拓度XX%以上クリア」とか「特定キャラとのキズナが★何個以上」とか結構オニな仕様になっててプレイ時間の水増しされてる印象も否めず。

・ゲームパッドの使い方がやっぱりムリヤリくさい。普通にメニューから開いても大して変わらんと思うのだが、強制的にタッチパネル&別画面を使わせる事でより複雑化して操作がややこしい感すらあり。ゲームパッドオンリーでのプレイではサブ画面側が消えるため、機能を使うためにわざわざ一旦メイン画面側を退避させないといけない。やっぱりこのゲームでも「ちょっと物珍しいサブ操作」くらいの利点しか見い出せず、「クソ重くて長時間プレイで肩が凝る」・「ボタン配置の関係で操作性が悪い」なる痛過ぎるデメリットを覆すだけのメリットになってない…。

・個人的には他者に気遣いが必要なオンライン要素は嫌いだから本作みたいな薄く繋がるって部分は共感もできるが、その為に犠牲になった数々の要素を思えばオンライン要素って入れる必要ってあったのかなあ?主人公が喋らない&存在感ゼロ、実質主人公はエルマさん、シナリオ薄味化とそれに伴うお使い感増大など多々のデメリットを抱えるだけの事ができてる印象がまるでない。あと、オンライン要素はメーカ側がサービスを終了してしまえばバッサリ使えなくなる要素である(ましてや早くも息切れで次世代機の存在さえほのめかされたWiiUでどれだけサービスを継続してくれることか…)。前作が5年経ってなお遊べる内容なのに対し、こちらは何度も時が経っても遊びたい内容と言えるだろうか?その点はちょっと疑問である。

・セーブデータがまさかの1個だけ(本体Miiを変えれば個人ごとにはセーブできるけど)。任天堂系のゲームはここをケチるのが多いが、まさか、据置機の大作RPGでそれをやってくるとは…。これもオンライン導入の弊害だよなあ…。

・アイテムにセットするデバイス(前作のジェムに相当)はセット済みの物が一覧に表示されないので、新たな装備に付け替える場合は元の装備から取り外す作業が必要で面倒くさくなってるのがちょっと納得いかん。

・デバイスは敵からのドロップアイテムでしか作れない。装備品の強化も敵からの素材を集めて回らないと作ることすら不可能。なんでこんな半端なモンハン仕様取り入れた?ただでさえ作業感が強いのに、この部分で尚更欠点が強調されてしまってる感じがする。ここも前作から比較し悪くなった点。

・ドールの装備が長ったらしくわかりにくいアルファベットの羅列なので何がなんだかさっぱり…。前述の通りやたら文字が小さいせいで画面内の装備名・効果表示のアルファベット小文字とかカナの半角フォントなんてテレビにみっちり近づかないと判別不能。ってか21世紀にもなってゲームで片仮名の半角フォントなんて使わんだろ、普通。

・自発的に稼ぐ要素が極端に少ない。クエストを汗水たらしてクリアするとか、敵をせっせと倒してドロップ品を売るよりも、電源ONのまま放置で時間経過で入る収入の方が効率が良いって、どっか納得行かない。


《フィールド・マップ関係》
・フィールドの探索がメインとも言える仕様だと思うが、マップには高低差が一切表示されない(等高線みたいなのはあるが細かい繋がりが表示されないのでどのみち無意味)ので実際行ってみると崖だらけで進めない…とか多くて萎える。

・仲間を選ぶのに、わざわざ広大な街のあちこちに散らばったメンバーにわざわざ声を掛けて回らないといけない。マップをある程度自由にワープできるけど、それ使うと10秒近いロードが挟まるからいちいち何度もロード待つ羽目になってストレス。これこそ、「ゲームパッドでタッチで招集かけてGO」でいいんじゃないの?

・自分よりLVが30以上高い敵の追跡を振りきってプローブ(開拓率を上げられる地点)までたどり着いたと思ったら「メカニックレベルが足りません」の一言で苦労を無にされる。いやー、なんの嫌がらせよ、コレ。これでダメ言われると気持ちが折れるので、ブレイドレベルを上げる際はとにかくシナリオ進行に直結するメカニック優先を推奨。

・遥かに広くなった事だけは事実だが、広くなったのに密度が追いついてない。結局増えたのはお使いと収集のダルさだけなせいか、余計タチが悪く感じられてしまう部分も。

・前作以上に同エリア内の敵のレベルにバラつきがあり、初期で行けるエリアでLV50とかの敵が普通に闊歩している。それ自体は別に良いんだが、「ここから先へは進ませません!」なる門番の役目で強い敵を多数配置しているせいで、どうもバランス的に窮屈に感じてしまう。新規エリアの開拓なんかはメタルギアも真っ青のステルスアクションっぷり(まぁこれはこれで味はあるが)。

・街がスタート地点の1箇所しかない。原住民の街が1個も無いって不自然な気がするんだけど。人間の街NLAも大半の建物に入れずミテクレだけってのも前時代的な気がする。


《戦闘・バランス関係》
・ヘイト管理(どの敵が誰を狙ってるか)が重要なのに、それが分かりづらくなってしまった点。後はザコの固さがキツイ。格下の敵でも変に固くて倒すのにちょっと時間がかかる。これは単にヘタだから…ってだけの可能性もあるが。

・それとターゲットの変更がRトリガー+AorYとか意味不明の操作性(おまけに反応が悪いので誤操作頻発)、しかも遥か遠方の敵まで勝手に含めてしまうため、狙う敵を瞬時に切り替えられないのがストレスに感じる(部位破壊が収集系クエストのドロップアイテムに直結するので余計に)。

・敵1体1体の縄張がやたら広い。そのせいで逃げる際も敵がとにかくしつこく追ってくるため必要以上に遠くに逃げないといけないのが面倒くさい。逃げる判定に関してはドール(ロボね)に乗ってる状態でようやく適度なバランスって感じなんだが、ちょっとここも理解しかねる調整。

・せっかく良い装備を手に入れたと思ったら、装備するにも必要レベルが設定されており、あれもこれもダメとか言われる…。前作ではこんな事無かったんだが…。ってか、だいたい自身のレベルに合った装備しかドロップされない訳で、更にこの部分に制限を掛ける意味ってあったのかな?ストレスにしかなってない気が。

・基本的には戦闘部分の出来は良いと思うんだが、変にQTEの色合いが濃い部分はちょっと嫌かもしんない。まぁ個人的に非常にQTEを嫌ってるので余計そう思えるのかもしれんけど。

・部位破壊システムだが、自分でターゲットに狙いを定めるのでなく、近い所をロックするなるシステムのせいで狙った部位の破壊はかなり困難。システムとしてあんまり生かし切れてるとは思えない。

・ビームとかヒートとか電気とか色々属性があるけど、何が何に強い・弱いとか別途確認しないと普通に進める分には一切説明が出て来ないのは酷い。

・ドールでの戦闘は一見華やかに見えるが、降りてる際の戦闘に比べると力押し的な色合いが濃くどうにも単調で、ちょっと慣れると面白さがガタ落ちする。燃料度外視で強い技を連発すれば大半それで片が付くし、燃料不足になったら若干格下の大型の敵を捕まえて補給すれば良いので。まぁ徒歩との差別化って意味では十分過ぎるほど色合いは違うんだが、降りてる際のバランスを考慮するともう一工夫欲しかった気もする(※もちろん、ただでさえ複雑な戦闘をこれ以上複雑にしろとか申し上げてるわけではない。大味にならんような調整もしくは複雑でない程度の変化が欲しかったな、と)。

・何かにつけてドロップアイテムだのフィールドに落ちてるのだの、更には絆ポイントやレベルそのものとか、上げる・集めるのに作業を強要される。楽しい作業なら大歓迎だが、どう考えてもバランス面が水増しや課金への誘導の為の改悪にしかなっていないから余計に腹が立つ

・途中辺りからふと思ったんだが、ザコ敵の多くが色違いというか名前違い(見た目や攻撃方法がほぼ一緒で強さだけ違う)で占められていて敵の多様性という面でも前作より劣るような気がした。

・戦闘中に他の敵が乱入してくんのヤメロ!(苦笑) 視界の外からいきなり乱入された挙句15000とかダメージ入ってロボ一発で壊されると「何事や!?」ってなる。しかもえてして巨大な敵は移動も速く縄張りも広くてほぼ逃げられない。なんなの、この超絶ストレス要素!?


《ドール関係》
・ドールを手に入れてから顕著なんだが、フィールドでの敵の読み込みが追いついておらず、いきなり敵が目の前に湧いたりする。格上の敵が湧くとヘタすれば一撃で破壊であり、どうにも理不尽な気がしてならない…。

・ドールが飛べるようになるとジャンプできなくなり、同じ操作で強制的に宙に浮く(=燃料消費する)。ドールの歩行速度が遅く車化すると妙に慣性がかかって操作しづらく、ジャンプ移動の速度と操作性が割と好みだったので、強制的に飛ぶ羽目になるのはちょっと残念だったり。

・ネット見てると「ドール手に入れれば一気に楽しくなるからそれまで耐えろ」って声も多いように思うが、個人的にはドール手に入れてからの方が探索も戦闘も大味になってモチベーションは下がったように思う。確かに広大なフィールドの上空をカーっと飛び回るのは爽快そのものなんだが、ドールに付随する欠点・ストレスもやたら多く、手放しで褒める気にはなれなかったり。

・まぁ細かい点ではあるが、エルマチームがドールを持ってない事については一応触れられていたと思うんだが、ドール操縦の名手とされるダグとか他チームエースのラオやイリーナがドールを持っておらず、全部プレイヤーが工面しなきゃダメってのも何か納得行かなかったよーな。いやー、だってあれ法外に高いしな。


《シナリオ・クエスト関係》
・前作のストーリーが極力専門の用語を排して分り易さを重視して組み立てられていたのと比べると、今作はよくある日本製のRPGで陥りがちな造語類の氾濫によって、話自体が複雑でないのに変に敷居が高まってしまった感があるのは残念。前作で配慮出来てた箇所がなぜ今作で出来ないの?かつ天才頭脳のロリキャラとか、その手の筋に狙い過ぎのキャラがメインどころにいるのも、なんか外してる気がする。マニア・オタク狙いのゼノサーガの時代に退化した感すらあり(今作見てるとゼノサーガの暴走は別にナムコ側のせいじゃ無かったじゃん、とツッコミたくなる)。任天堂側、モノリスの暴走を静観してないでダメなとこは指摘せぇよ…。

・シナリオに関してもう一点言えば、主人公が喋り物語に深く関与する前作と対照的に、今作の主人公は喋らんタイプで物語を「傍観してる」感が妙に強くなってしまった。凄い凄いと持ち上げられるのはエルマ姉さんであり話の中心は完全に彼女(苦笑)。あと、人物として冷静沈着で臨機応変に動ける完璧超人過ぎて話を通じて心情の起伏が平坦であり、これも退屈。シナリオの展開に盛り上がりが皆無で印象に残らん事、脇道のお使いクエスト(しかも必須)の比重が高まった事が絡んだせいか、前作の数少ない短所であった作業感みたいな物がより浮き彫りになってしまった。前身のギアス・サーガ両作品込みで主人公=物語に絡むのが伝統とも言えただけにこの路線変更はファンほど受け入れがたいのでは。勿論それが巧く作用してるならトライした価値もあったろうが、正直なところその部分がプラスの方向に働いてるとは言い難い。

・キズナクエスト(特定の仲間とのイベントクエスト)は一度開始したらクリアするまでメイン側が進められなくなるんだが、ここでウンザリするのが敵からのドロップアイテムやフィールドに落ちてるアイテム収集系の条件が提示される場合。敵を倒すだけとか場所を見つけるとかならまだいいんだが、モノ探し系のクエストはどこにあるか提示すらなく、落ちてる物も確率で稀に出る物に巡り合うのを待つしかなく、ひたすら延々と探しまわる羽目になり絶望的なダルさを味わう事に。前作がクエスト受注数制限なしで自由に動いてる内にアイテムが貯まるのを待つとかできたんだけど、他の自由を制限されてるのも面倒。抜けられないクエスト時でこのモノ探し系が出てくると状況を打開できず『詰み』に近い状況に陥ってどうしようもなくなる。これ、仕様としてはヒドイと思う。

・ついでにもう一点クエスト・イベント関連で言わせていただくと、今回はメンバーがある程度自由に決められるが、必須メンバー以外は道中一言も喋らないのが残念な気分になる。必須メンバーはエルマとリンの2名が圧倒的に多いので、結果、彼女ら2人とノポン族のタツの計3人だけで物語が回ってる印象。自由度の高さの弊害で前作の良さだったパーティメンバーの連帯感だとか思い入れの深さだとか見出しにくくなってしまった。

・で、そのノポン族のタツ。前作のノポン:リキがイベントでも戦闘でもいい味を出していたのに反し、今回は一切戦闘に参加せず、ワンパターンでウザったいイベント、更にはパーティの足を引っ張るとかばっかりで残念な気分に。リキのどこがウケたか、さっぱり判ってねえな>製作陣。

・前作がファンタジー7:SF3くらいの割合だったのに、今回はSF8:ファンタジー2と色合いが違い過ぎる印象も…。こっちの方が本来のモノリスソフトくさいテイストだが、前作をイメージしてるとかなり違和感もある。

・中盤辺りで「こいつ黒幕だな…」って確信、で、実際それに則った通りの流れで推移。切れ者のエルマさんがあちこち被害を出すまで放置するするだけの理由の描写が無いのは違和感があった。あと、前作インタビューで「パーティメンバーが裏切ってラスボスになる予定だったが悲し過ぎるのでやめた」とか仰ってたのに、なぜそれをやるか。作る時点で嫌な事やるなよなー…まったく。SF・ファンタジー物として想像できないトンデモ展開がある事自体はまぁ許容範囲内だと思うが、あれこれ伏線を投げて風呂敷を広げてるのはいいんだが、広げる一方で回収されない謎が余りに多い。シナリオ自体が薄いくせにあちこちに発散していく物だから余計印象が薄まり、まるで印象に残る場面が無い。終わり方にしても想像の余地を残すどころじゃなく、未消化の打ち切りエンド過ぎて不満が残る。8000円クラスのパッケージタイトルなら、せめて作中でしっかり一区切りは付けるべき。これでは1本クリアしたという達成感すら味わえない。薄い上に謎ばっかりとか、冗談も大概にしていただきたい。続編前提とかそもそもWiiUで出す気あんの?既に製作に着手してWiiUが持ってる間に完結編が出せるならまだ良いが、続編が近い内に出せるという明確なビジョンも無く何年も放置とかだとしたら、そんなの勘弁して欲しい。ゼノサーガでやらかした手痛い失敗をもう1回また懲りずに繰り返すおつもりか?

・脇道のボリューム込みなら他で例を見ない程の物量があるが、本筋のボリュームは正直思ったほどでも。横の広がり重視にしても、もうちょい丁寧に描写すべきシーンは多かったように思うが。システム面同様、このシナリオ方面も水増し的な色合いが濃い…。

・ストーリーをひと通りクリアしてみて思ったが、ホントに主人公がいる意味が無い。まだ勝手に喋る型の主人公としてエルマさんを操作させた方が余程感情移入できた事と思う。全てを知っているエルマさんと何も知らないプレイヤーとの間で当然意識的なギャップは出来てしまうが、それは見せ方や設定次第でどうにでもなった筈。


《グラフィック・サウンド・その他演出関係》
・キャラクターデザインのアクが強い。前作はモデリングに粗さはありつつも割と癖の無いデザインだったと思うが、本作の田中久仁彦氏のアニメ顔に半端に寄ったデザイン(特にタレ目の女性の顔はクセが強いデザイン)は賛否割れそうな。ゼノブレイドというよりはモノリスが過去に手掛けたゼノサーガに近い(モデリングで浮いてくる違和感って面では特に2に)。あと、キャラのモーションとか表情の乏しさとか思ったよりWiiから進化してない為によけい淡泊に見える部分が多い。グラフィック自体はWiiUのゲームとしては並以上なのに、モーション部分がSD機種時代のままなのですごく古臭く前時代的に感じる…。エルマみたいな常時しかめっ面で口数の少ない人間なら気にならんが、リンみたいな活発な人間で無表情だとかなり違和感がある。

・BGMは悪かぁないと思うけど、前作の神っぷりから比べるとかなり地味で印象に残らん印象。ボーカル曲が多いから地味とか言うのもアレだけど。まぁこの部分は好みの問題かもしれん。個人的な感想は「悪いとまでは言わんけど、なんで前作で良かった作曲陣からバッサリ変えちゃったの?」だが。

・喋れない街の人が増えた。また、歩いてる一般人に接触するといちいち文句を言われる。これ、必要か?高橋氏の師匠格である坂口氏が作ったWii『ラストストーリー』仕様とも言えるが、別にそんなどうでもいい(というか良い部分ですらない)部分見習わんでも。


《全体まとめての不満点》
・物量はあるのは確かだが、収集系クエストやお使いイベントの多さに代表される水増し的な増やし方・レベル上がらない&ボス戦は難しい等の課金誘導なバランス調整の部分が前作よりも明らかに増えてるのは残念。

・ソフト自体が8000円級で決して安い価格帯ではないのに、発売日から早くも明らかになるDLCの数々。100の物に20…30…と足してく追加要素ならともかく、発売時点で分割されていて足りない部分を足す課金なんて愚の骨頂。ガチャ課金、コスチューム課金の次くらいに酷い内容。おいおいおい任天堂さん、あんまり失望させないで頂戴な!ユーザとの信頼感はどうしたよ!?FE覚醒で調子づいてから加速度的に酷くなってくなあ。筆者的には本作のクオリティ自体が前作よりかなり見劣りする点、これ以上任天堂を課金方向へ調子づかせたくない点から、抗議の意味も込めてアンロックとしか思えんDLCは購入しない事にした。

・正直、ストレス要素が多過ぎて中盤辺りからモチベーションが下がって途中で投げそうになり、「頑張って遊ばないと持たない」みたいな感じになってしまったのがナントモ…(苦笑)。


《現状ではスコアに反映してない不満点》
・シナリオが薄味とか母船がアメリカの物とか、恐らく海外(特に北米)ウケを狙って作られたものなんだろうけど、変に現実の単語が入ってると没入感が阻害されるから個人的にはそういうのあまり好きじゃない。ってかニュー『ロサンゼルス』とかモロに北米に媚びてるのは明白ではあるけど。日本で作られた作品なのに、どっか日本人のユーザを置いてけぼりにするって酷くないスか?変に現実を意識させてしまう分、どっか興醒めしてしまう。あと、舞台が西暦2050年ってなってるけど、あまりにも近い未来でちょっと違和感がある。本作のシナリオライターの方、設定をやたら近い未来にしたがる印象があるな(F-ZEROファルコン伝説もわざわざ公式の26世紀って設定を上書きして23世紀あたりまで遡らせたり)。身近さを感じてもらおうとか意図があるかもしれんが、SFの設定として現実味が無さ過ぎて淡泊に感じられ、逆効果だと思う。シナリオの薄さに関しては恐らく海外ではあんまり叩かれないって意味では、正しく海外向けなんだと思う。
愚痴っぽくなったけど感想よ(エルマ姉さん風に
 個人的には21世紀入ってからのベストRPGと言って差し支えないWii『ゼノブレイド』の新作って事で、発表されてからずーーっと期待してたシリーズ最新作…なのだが、それにしてもちょっと傑作級だった前作から特に快適性の部分で大きく劣化してる部分が多いのはガックリ来た。前作がオール4チックで(勿論、最高の5の要素も多かったが)優等生的な傑作であり、本作も部分的にはその路線を踏襲しているのだが、本作の場合は快適性や導入部分の粗末さ等、3未満を付けたくなる要素が多く、それが印象面で大きくマイナス側に足を引っ張っている。中でも字の小ささ読みづらさ、UIのヘボさ、そして情報過多による分かりづらさと説明の足りなさに関しては最低の1とか付けてもおかしくないレベルの酷さ。
 前作の大成功でモノリスソフト側の裁量権が増した部分がマイナスに働かないか事前に懸念してた部分が、見事に「うーむ」要素としてが引っかかりまくりなのも個人的には減点材料。任天堂が変にマニア向けになりそうなのをブレーキ掛けていた前作に比べると、シナリオ・キャラデザ・BGMのいずれもが開発側の趣味全開といった趣きで、いずれもがマニアックで万人受けしない方向、特にSF・ロボアニメ方面に方向に暴走してしまった感あり。「製作側の自己満足で良い所を潰した」って点では過去の例で言えばグランディア3辺りに近い気はする(アレよりは普通に遊べる分、全然マシだが)。

 前作が個人的には21世紀入って最も気に入ったRPGである事、ゼルダWiiU版が無期限延期で恐らく次世代機NXにまで逃げるであろう事から、下手すりゃ最後のWiiU大作って恐れもあった分、ムダに期待値のハードルが高まってしまった部分はあったかな、とは思う。…が、さわりの部分、導入部の印象としては正直『期待外れの域に近いかも…』とは言えるかも。まぁ前作の時点も自分の中では、遊び始めの印象は『中の上』でそこからやり込む毎に評価が高まったタイトルだから、今作もそうなってくれる事を期待したいのだが、それにしても粗が多いうーむ。
 発表から発売まで2年以上、ひたすら楽しみにしてたタイトルだけど、ちょっと遊ぶだけでポロポロと、遊び込むことで更に次から次へと粗が出てきて「あー、だいぶ味が落ちたね」って言わざるを得ない。率直に申し上げて『期待し過ぎたのかな』って感じではあるけど。

 劣化した要素だらけとか言うとアレだけども、とりあえず一点。フォローとしては『戦闘は面白い』と思いますぞ。この部分についてもシステム周りの説明不足感は酷いが、前作よりもスピード感も深みもあって上々の仕上がりと感じる。慣れるまでしんどいけども、我慢して遊べば面白さは見えてくると思いますんで、「あー、全面に渡って前作未満だー…」とか投げる前にグッと我慢して遊び続けてみてくださいな。


 この作品にとって不幸だったのはあれこれと色々な要素でバッサリと路線を変えたのに傑作『ゼノブレイド』の名前をそのまま引き継いでしまった事、そして3DS移植版が直前(たった一月前)に出たため、嫌でも比較されてしまう事か。勿論、比較される事は承知の上でブランド力に期待を込めてゼノブレイドを名乗らせたのは任天堂側の打算であろうし、実際に比較に耐えうる内容・完成度で前作を凌駕できていれば、ここまで露骨な不満点も増えなかったと思うのだが…。
 モノリスソフトって基本、そこまで安定して傑作を出してきたメーカーではないからその点も懸念材料だったが、ちょっとこれは…。システム的には確かに前作ゼノブレイドを踏襲しているが、世界観はむしろゼノサーガ以前に近く、必要以上に比較されてしまう分、『ゼノブレイド』の名前にこだわった事自体もあんまりプラスに働いてない感じすら受ける。ゼノシリーズにこだわるにしても別の名前が良かった。ここまで開拓・探索押しならもう『ゼノフロンティア』、もしくはロボ押しな点から『ゼノドール』(苦笑)とかにすれば良かったんでね?

 「海外のオープンワールド系RPGを露骨に意識しすぎたが余りに、前作の良さまで見失ってしまったのではないか?」って感じで、なぜ前作が海外でウケたかすら分かってないのでは…って感じがするのが残念。海外でも「良く出来たJ-RPG」って評価だったのに変に海外産オープンワールドゲーを真似たところで資金面・マンパワーで劣る日本のメーカには本家を超えるセンス・物量の物なんて作れっこない…ってかそもそもそんなことは恐らく海外ファンすら期待してない。本作のJ-RPGらしさってのは「日本的な丁寧な作り込み」よりも「表面的な部分、OTAKUな雰囲気・設定」に留まっており、確かにそれを見ればJ-RPGらしさは残っているのは確か。だが別にそんな日本的な部分など別に海外からも求められてないであろうし、結局は「コレジャナイ」感が漂ってしまうという。
 出来自体は別にクソじゃなくて佳作級の範囲内には収まってるとは思う。ただ、ここまで色合いや方向性を一新させるのなら、名前は絶対に変えるべきだった。新しい物を作ろうとする強い意志だけは買うが、前作の名前を名乗ってる以上は少なくとも前作のプレイヤーに嫌われるような要素満載にしてはいけなかった。傑作の続編として、ブランドとして何を一新させて何を継続させれば良かったのか、取捨選択を致命的に間違ってる残念な作品とは言えるかもしれない。しかし、前作の熱心なファンの自分すら「う〜む…」な内容であり、ホントにどの辺りの層を狙って作ったのか、イマイチ作る側の真意を図りかねる謎。こういうシリーズ続編物って、作る側も遊ぶ側も幸せにならんと思うのだが…。

 まぁストーリークリアまで遊んでみて、とりあえず思ったのは『やっぱ前作はマグレ当たりのホームランだったのか』って事。前作の隙の無さは追い詰められ背水の陣であったが故の会心作であって、前作ヒットで余裕が出て裁量権が増した結果、好き放題走ってユーザへの配慮が無くなり、いつもの大雑把なモノリスクオリティに戻ってしまったのはすこぶる残念。超傑作である事を期待しなきゃ普通に100時間以上遊べる内容だが、期待した高みからの落差って意味ならば、結構なガッカリゲーではあったように思う。

 あと、ブツ切りエンドで終わってしまった本作だが、シナリオ自体が弱いのでゼノサーガみたいに延々と2作3作と続けても売上が落ちるだけだと思う。この未回収のシナリオ部分こそ、DLコンテンツで早いとこ完結させてくれると嬉しい。DLC嫌って言っても、まぁそれくらいは付き合いますんで。で、次のゼノブレイドは完全な新作にしていただけると当方としては嬉しい。

掲載日:2015年5月4日
更新日:2015年8月17日


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